「アストンマーティン DB12」の進化を試乗で確かめた

最新アストンマーティン「DB12」に試乗してラグジュアリークーペの進化を堪能

アストンマーティンらしくハイパフォーマンスでありながら、エレガントで美しいスタイリングとサヴィルロウと呼べるようなインテリアが魅力だ。
DB12はアストンマーティンらしくハイパフォーマンスでありながら、エレガントで美しいスタイリングとサヴィルロウと呼べるようなインテリアが魅力だ。
伝統のDBの称号を受け継ぐアストンマーティンの主力モデルが生まれ変わった。11から12へ、そのパワートレインやシャシーの進化は、アストンマーティンのこれからを担うに相応しい仕上がりなのだろうか。(GENROQ 2023年9月号より転載・再構成)

Aston Martin DB12

これこそ待ち望んでいたクルマ

エレクトロニクス、エアロダイナミクス、CFDなど、様々な技術を他メーカーを含めた市販車用に提供するアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(Ampt)。その第1弾として新開発したインテリジェント・アダプティブダンパーがDB12に採用された。

「私が買いたいと思うクルマがやっとできた!」

F1モナコGPのホスピタリティで、アストンマーティンの会長であるローレンス・ストロールはそう言って胸を張った。

「アストンマーティンは常に最もエレガントで美しい、サヴィルロウ・インテリアとでも呼びたいようなクルマを造ってきた。でもパフォーマンスやテクノロジーには少し欠けるところがあった。DB11も発売された当時は良いクルマだったが、今となっては、少し無気力で、遅く、ダルに感じられるのは事実だ。そこで私たちはDB11を進化させる道を選んだ。そして実際にドライブしてみて、これこそが待ち望んでいたクルマだと本当に感動したんだ」

2026年からのF1でのパートナーシップをホンダと結ぶことを東京で電撃的に発表した後、プライベートジェットに飛び乗り、17時間かけてモナコにやってきたというストロールは、DB12に懸ける意気込みをこう話す。

「私のオーナーシップのもとで初めて発売されたのはDBX707です。続くDB12は初の新規開発車となり、この2台からアストンマーティンの新しい未来が始まります。今年は創業110周年。私のビジョンと方向性は非常にシンプルで、ウルトラ・ラグジュアリーでハイパフォーマンスであること。そして、以前のアストンマーティンになかったF1チームからのマーケティング、技術をすべて取り入れることなのです」

彼はまたシルバーストーンに完成したF1チームの新しい工場にアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(Ampt)を設立。エレクトロニクス、エアロダイナミクス、CFDなど、様々な技術を他メーカーを含めた市販車用に提供する活動を始めること、その第1弾として新開発したインテリジェント・アダプティブダンパーをDB12に採用したことも話してくれた。

680PSをしっかり受け止める8速AT

ニューモデルとはいえ、DB7以降、奇数で進んできた車名がDB13ではなくDB12になったことが象徴しているように、DB12はDB11の正常進化版である。では単なるフェイスリフト・モデルかというと、そうではない。

もちろん、そのハイライトは最高出力680PS、最大トルク800Nmを発生する4.0リッターV8ツインターボだ。アクセルペダルに力を込めるとレッドゾーンの7000rpmまで一気に回るこのエンジンのパワー感、トルク感は圧巻で、爆発的な加速力をみせる。最初は同じV8なのにDBX707より低いピークパワーであることに少し失望していたのだが、“1685kgしかない”車重に、これ以上を望むのは野暮というものだ。またこの強大なパワーをシフトスピードの上がったトルコン式8速ATがしっかり受け止め、スムーズに伝達してくれるため、あらゆる速度域でもギクシャクするようなことがないのにも感心した。

それに増して個人的に魅せられたのが、シャシーの出来栄えだ。確かに初期のDB11のシャシーは少々煮詰めが足りない部分があったが、リヤ・サブフレームのブッシュを強化するなどの改良を加えてからは一体感が高まり、パワースライドを許容しながらも、すぐに収束させるトランスアクスル・レイアウトを活かしたバランスのいいコントローラブルなシャシーに生まれ変わった。

それがDB12ではさらに進化。DBシリーズに初採用されたE-Diff、そしてフロントで6mm、リヤで22mm拡大されたトレッド、6軸慣性システムを通じて最適なグリップを得るように調整されたエレクトリック・スタビリティコントロール、Amptによるアダプティブ・ダンパーといった新機軸により、清々しいニュートラルステアを維持しながら、どんな状況でもグリップを失わない素晴らしいコーナリングマナーをみせてくれるのだ。

今後の成否を占う重要なモデル

加えてフロントタイヤの接地感が頼もしく、ステアリングの入力に対する情報量と、レスポンスが増したように感じられたのは、より忠実にコントロールできるよう最適化された電動パワステと、ねじれ剛性、横剛性を強化したストラットタワーが効いているのだと、エンジニア氏が教えてくれた。

他にも、レザーを惜しげもなく使ったインテリアの仕立て、各種コネクテッド・サービスに対応する新しいインフォテインメント・システムなどラグジュアリーGTとしての資質も大きく向上し、先代にわずかにあったネガは消え去った。

ストロールの言葉通り、大きな進化を遂げたDB12は、これからのアストンマーティンの成否を占う重要なモデルとなるだろう。「もちろん、その素養は十分にある」というのが、ステアリングを握った偽らざる結論である。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/ASTON MARTIN LAGONDA
MAGAZINE/GENROQ 2023年9月号

SPECIFICATIONS

アストンマーティン DB12

ボディサイズ:全長4725 全幅2060 全高1295mm
ホイールベース:2805mm
車両重量:1685kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4.0リッター
最高出力:467kW(680PS)/6000rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2750-6000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35ZR21 後325/30ZR21
0-100km/h加速:3.6秒
最高速度:325km/h

【問い合わせ】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281
https://www.astonmartin.com/ja

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藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…