ロータス初のフル電動SUV「エレトレ」初試乗

ロータス初のフル電動SUV「エレトレ」は最高出力905PSを誇る恐るべき完成度のハイパーSUV

新生ロータスとして本格始動するモデル「エレトレ」。初のフル電動SUVである。
新生ロータスとして本格始動するモデル「エレトレ」。初のフル電動SUVである。
ロータス初となるフル電動SUV「エレトレ」がついに姿を現した。最新の空力性能とデュアルモーターを搭載することで、最高出力905PS、0-100km/h加速2.95秒の実力を誇るモンスターSUVだ。ロータスの野心作となるスーパーSUVをノルウェーでテストした。(GENROQ 2023年9月号より転載・再構成)

Lotus Eletre

中国ジーリー傘下となって

BEVのハイパーSUVを自称するエレトレ。ボディサイズは全長5103×全幅2135×全高1636mmでポルシェ・カイエンよりも大きい。

プリミティブなライトウエイトスポーツを得意とし、かつてはF1の名門だったロータス。その一方、経営が安定することはほとんどなかったが、2017年から中国ジーリー傘下となったことで大きな投資がなされ、かつてないほど開発に力が入れられ、ブランドとして飛躍しようとしている。ボルボもジーリー傘下となって成功を収めているが、ロータスの変貌ぶりはそれ以上だ。

プリミティブなスポーツカーは利益が薄い上に市場も小さいゆえ、それだけでは経営を上向かせることは難しい。新しいロータスはBEVを中心としたスポーティでプレミアムなブランドに生まれ変わり、さらに市場を世界中に拡げようとしている。スポーツカーがブランドの根幹にはあるが、SUVやセダンが大きな収益を上げているポルシェのような存在を目指しているのだろう。

エヴァイヤは約3億円で130台限定、エミーラは旧世代ロータスの最後のモデルという存在なので、本格的に新生ロータスとして始動するモデルはエレトレだろう。

905PSにも達する最高出力

BEVのハイパーSUVと自称するエレトレは全長5103×全幅2135×全高1636mmとポルシェ・カイエンよりも大きなサイズ。エレトレ、エレトレS、エレトレRと3グレードが用意され、いずれもハイパフォーマンスを誇っている。

エレトレ/エレトレSは前後に225kWのモーターを搭載し、総合の最高出力は603PS、0-100km/h加速は4.5秒。エレトレRはフロントモーターは225kW、リヤモーターが450kWとなり、総合の最高出力は905PSにもおよび0-100km/h加速はなんと2.95秒だ。ロータスにとってエヴァイヤを除けば初めてのBEV、初めてのSUVだが、いきなり世界トップクラスのハイパフォーマンスカーとしてきた。

エレトレRのリヤモーターには2段ギヤが組み込まれている。他のBEVではポルシェ・タイカンおよびアウディe-tronGTのみが2段ギヤを採用しているが、エレトレの資料には「他の2段ギヤモデルに比べてユニット重量は14kg軽い156kg」と記されており、名指しこそしていないもののポルシェを強く意識していることが伺える。

新たに開発されたEPA(エレクトリック・プレミアム・アーキテクチャー)は、エレトレのほか4ドアクーペやミッドサイズSUVなどに展開する予定。ロータスのDNAである軽量・高剛性を達成するべく、アルミニウムを始めとする素材をインテリジェントに組み合わせているという。アルミニウムの使用率はプラットフォーム全体の43%、ボディ構造全体の50.7%となっている。

フィーリングはまさにロータス

いくら大きな投資を受けたからといってプリミティブなスポーツカーばかりを造ってきたロータスが、いきなりハイパフォーマンスでプレミアムなBEVのSUVを仕立てられるのかと、やや疑いながらBEV先進国のノルウェーをエレトレSで走り始めたのだが、ものの数分でその完成度の高さに驚かされた。動的にも静的にも質感は抜群に高く、ジャーマン・プレミアムと同等かそれ以上と思わせるほどなのだ。

アクセルを踏み込んでいけばBEVらしくトルクが太くて力強いのだが、それが強調され過ぎることなくあくまで自然な感覚。街中など低速でストップ&ゴーを繰り返す状況では扱いやすさが光る。空いた道路で強い加速をさせていくと、高速域でも伸びやかでこの上なく気持ち良かった。一般的にBEVは、低・中速域で力強い反面、高速域では相対的に伸びが鈍る感覚が強いが、エレトレは速度が高まっても尻上がり的にパワーが盛り上がるようなスポーティな加速感だ。後にエンジニアに聞いたところ、まさにそういったフィーリングを狙ったとのこと。これがロータスらしさでもあるという。

ワインディングロードを走らせれば、スポーティなハンドリングが堪能できるが、ロールやピッチングを無理に抑えるのではなく、サスペンションのストロークを活かしてしなやかにタイヤが路面を捉えていく感覚が特徴的だった。そのおかげで乗り心地もいい。これはライトウエイトスポーツのロータスのライド&ハンドリングの考え方と一致する。

あらゆる面で世界トップを狙う

2段ギヤが組み込まれたエレトレRのリヤモーター。モーター特有のトルクの太さを高速域でも味わえる。

飛行場ではエレトレRの全開加速を試したが、とんでもなく速いのはもちろんのこと、ここでも伸びやかさが際立っていた。130km/h前後で2速へシフトアップし、モーター特有のトルクの太さを高速域でも味わえるのだ。高速スラロームでは重量級のBEVとは思えないほどの俊敏性や正確性を見せた。エレトレ/エレトレSはデュアルチャンバー式エアスプリングに電子制御ダンピングシステムが組み合わされ、エレトレRではさらにアクティブアンチロールコントロール、アクティブリヤホイールステアリングが追加される。シャシーテクノロジーも、現在考えられる最高のスペックなのだ。

従来のロータスとは何から何まで違うエレトレだが、走らせてみれば加速感やライド&ハンドリングにロータスのDNAがたしかに感じられたのは嬉しいところだった。

その他、世界中の自動車メーカーが新たな競争領域として開発に取り組んでいる車載OSを早くも採用しインフォテインメントが驚くほど先進的なこと、ドルビー・アトモスなどオーディオにも半端なく力を入れていること、将来的なレベル4対応を睨んでLiDARセンサーを4つも搭載していることなど、あらゆる面で世界トップを狙っていることをうかがわせる。想像以上にロータスの本気度は高いのだ。

REPORT/石井昌道(Masamichi ISHI)
PHOTO/Lotus Cars
MAGAZINE/GENROQ 2023年9月号

SPECIFICATIONS

ロータス・エレトレS〈エレトレR〉

ボディサイズ:全長5103 全幅2135 全高1636mm
ホイールベース:3019mm
最高出力:450kW(603PS)〈675kW(905PS)〉
最大トルク:710Nm(72.4kgm)〈985Nm(1000.4kgm)〉
駆動方式:AWD
EV航続距離(WLTP):600〈490〉km
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/40R22 後315/35R22
最高速度:258〈265〉km/h
0-100km/h加速:4.5〈2.95〉秒

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

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