生産台数1万4000台以上の「ランボルギーニ ガヤルド」がデビュー20周年

ランボルギーニ初のV10搭載市販車「ガヤルド」を再考「生産台数1万4000台以上を誇る魅力の由来は?」

2003年のデビュー後、様々なバリエーションが登場したランボルギーニ ガヤルド。その生産台数は1万4000台を超えることになった。
初のV10搭載ミッドシップ・スーパースポーツとして、ランボルギーニに大きな成功をもたらした「ガヤルド」。2003年から2013年まで、10年という長きにわたって製造されることになった。
2003年のジュネーブ・モーターショーにおいて発表された「ランボルギーニ ガヤルド」。ランボルギーニ初となるV型10気筒エンジン搭載した市販モデルは、発売直後から驚異的な人気を誇り、ランボルギーニの販売記録を次々と塗り替えていった。その発表から20周年を迎えた2023年、アイコニックな“ベビーランボ”の歴史を振り返る。

Lamborghini Gallardo

1987年にスタートした「L140プロジェクト」

2003年のデビュー後、様々なバリエーションが登場したランボルギーニ ガヤルド。その生産台数は1万4000台を超えることになった。
1987年にスタートした新たなベビーランボ「L140プロジェクト」では、搭載エンジンを含めて様々な試行錯誤が行われた。ランボルギーニがアウディの傘下に入った後、10気筒エンジン搭載モデルをゼロから開発し直すことが決まる。

フェルッチオ・ランボルギーニは、購入価格と維持費を抑えた“小さな”ランボルギーニがマーケットから求められていることを当初から指摘していた。1970年代初頭、フェルッチオは後に「ウラッコ」となるモデルの開発を後押しし、ウラッコは1980年代に「ジャルパ」へと進化を果たしている。

1987年、ランボルギーニはよりコンパクトなモデルの実用化を目指す「L140プロジェクト」を立ち上げた。幾度となくプロトタイプが開発され、最初はV8エンジン、次はV10と様々な技術が試されている。1998年、慎重に検討を重ねた結果、コンセプトとおおまかな寸法、それまでランボルギーニの市販モデルには採用されたことのなかった10気筒エンジンという要素をたたき台にして、すべてをゼロから開発し直すことが決定された。

新型V10エンジンの開発を手掛けたのは、ランボルギーニに10年以上在籍し、当時テクニカルディレクターの職にあったエンジニアのマッシモ・チェッカラーニ(Massimo Ceccarani)と、技術部門でエンジンの開発設計を担当していたマウリツィオ・レッジャーニ(Maurizio Reggiani)だった。

2006年から2022年までランボルギーニのテクニカルディレクターを務めたマウリツィオ・レッジャーニは、ガヤルドの開発について次のように振り返った。

「L140はオイルパンエリアにギヤボックスを組み込んだ72度V型10気筒エンジンを搭載していました。ランボルギーニで設計したエンジンでしたが、市販モデル用に生産するには現実的ではなかったのです。エンジンの下にギヤボックスを配置したことで重心が高くなり、ランボルギーニのスーパースポーツカーに期待されるドライバビリティやハンドリング特性を保証できなくなっていましdた

「それもあっ、“ベビー・ディアブロ”というコードネームのプロジェクトが開始された時点では、V8の採用が決まり、アウディ製も含め、既に市場に出ているエンジンの中から候補を選ぶことになりました。その後、アウディ傘下に入ったことで、新型V型10気筒エンジンと新型トランスミッションを採用した、完全に新しいモデルの開発が決まりました」

500PSを発揮する5.0リッターV型10気筒エンジン

ガヤルドのために開発された5.0リッター90度V型10気筒4バルブDOHCエンジンは、様々な新機軸が採用され、最高出力は500PSを発揮する。
ガヤルドのために開発された5.0リッター90度V型10気筒4バルブDOHCエンジンは、様々な新機軸が採用され、最高出力は500PSを発揮した。

初代ガヤルドに搭載されたパワーユニットは、最高出力は500Pを発揮する、5.0リッター90度V型10気筒4バルブDOHCエンジン。典型的な72度ではなく90度を採用したのは、エンジンの高さを抑えることが目的だった。この結果、エンジンフードを低くすることでリヤの視認性が向上し、重心を低くしてドライビングダイナミクスが向上することにつながっている。

また、クランクピンを18度オフセットさせたことで、等間隔燃焼を実現。これにより、スムーズなエンジンの吹け上がりが確保されている。潤滑方式はドライサンプを採用し、過酷な走行環境下でも完璧なオイルの潤滑が可能になっただけでなく、重心もさらに低くなった。

「計画通りの台数を生産するためには、V10に90度のV角を持たせる必要があったため、90度でも等間隔燃焼を実現できるよう、クランクシャフトに『スプリットピン』を採用することになりました。クランクケースはランボルギーニの設計者が改良・再設計し、ライナーを従来のニカシルコーティングではなく過共晶アルミニウム合金とし、直接アルミニウムで鋳造できるようにしています。これによりエンジンの長さ、重量、コストも削減できました。こうして、初代ガヤルドに搭載された5.0リッター90度V型10気筒MPIエンジンが誕生したのです」と、レッジャーニ。

ランボルギーニ初のV10エンジンは、5.0リッター、ドライサンプ潤滑方式、各シリンダーバンクにオーバーヘッドカムシャフトを備えたDOHC、可変バルブタイミング(1シリンダーあたり4バルブ)、チェーン駆動など、最先端の技術を駆使したエンジンだった。

6速ギヤボックスは最新世代のダブル/トリプルコーンシンクロを備え、最適化された制御・噛み合い方式を採用して、エンジン後方にレイアウトされた。駆動方式はAWDで、実績のあるVTシステムが採用された。基本的な機構はそのままに、ロボタイズド・シーケンシャル式ギヤボックス「eギヤ」も開発された。

アルミニウム製フレームは、鋳造接続部品に押出成形部品を溶接したものがベース。このフレームにボディパーツがそれぞれの機能によって異なる方式(リベット、ネジ、溶接)で組付けられる。その他の装着部品(バンパーなど)には熱可逆性樹脂を使用、ボルトで締結している。

航空機を思わせるガヤルドのデザイン

2003年のデビュー後、様々なバリエーションが登場したランボルギーニ ガヤルド。その生産台数は1万4000台を超えることになった。
ガヤルドのデザインはボディ一体型のキャブフォワード・コクピット、明確なラインが入った平面処理など、航空機からの影響を強く受けている。

デザインプロジェクトは2000年にスタート。デザインはイタルデザイン・ジウジアーロの提案をベースに、ルク・ドンカーヴォルケ(Luc Donckerwolke)率いるランボルギーニ・チェントロスティーレが完成させた。

当時、デザイナーには、ランボルギーニ的なフォルムの属性を洗い出し、それらを組み合わせて完全に新しい1台を生み出すことが求められた。ガヤルドの寸法と性能は、デザインに引き締まったアスリート感をもたらし、短いホイールベースとコンパクト化されたオーバーハングは、よりダイナミックな印象を醸し出している。

ガヤルドのデザイン上の特徴は、ボディと一体となったキャブフォワード・コクピット、鋭角に横たわるフロントガラスと張り詰めたピラー、明確なラインが入った平面の複雑な処理、エアフローに沿った冷却システムの配置など、航空機の影響を強く感じさせるもの。このデザインテーマは、2001年に発表されたムルシエラゴでも採用されている。

イタリア警察でも使用されたガヤルド

発売直後から高い人気を集めることになったガヤルド。その理由はデザインや性能だけでなく、日常使いができる汎用性にあった。それを照明するように、このガヤルドからイタリア警察への車両寄付もスタートしている。
発売直後から高い人気を集めることになったガヤルド。その理由はデザインや性能だけでなく、日常使いができる汎用性にあった。それを照明するように、このガヤルドからイタリア警察への車両寄付もスタートしている。

発売時ガヤルドを突出した存在にしたのは、その高い性能に加え、高いドライバビリティ、信頼性、日常的な実用性を併せ持っている点にあった。それを証明するように、2004年5月、イタリア警察にランボルギーニが車両を寄付する試みがガヤルドからスタートしている。寄付された車両は、命を救うための医薬品や臓器の輸送など、特別な目的で使用されている。

クーペバージョンの発表から2年後の2005年、アウトモビリ・ランボルギーニはフランクフルト・モーターショーにおいて「ガヤルド スパイダー」を発表。クーペの単なるオープントップ版にとどまらない、完全に一新されたモデルであり、新形状のエンジンフードを持つソフトトップを備えていまた。

ガヤルド スパイダーは、エンジン、トランスミッション、性能に関しても新機能を導入。排気量4961ccのV型10気筒エンジンは最高出力520PSにパワーアップ。ローギアード化された6速ギアボックスと、よりダイナミックなハンドリングを実現した。この新しいエンジンは2006年式モデルからクーペにも導入されている。

RWD仕様「LP 550-2 ヴァレンティーノ・バルボーニ」

2009年には生産台数が9000台を突破し、ガヤルド初のFRモデル「LP 550-2 ヴァレンティーノ・バルボーニ」が限定モデルとして登場。好評を受けて、FR仕様は2010年にカタログモデル化されている。
2009年には生産台数が9000台を突破し、ガヤルド初のRWDモデル「LP 550-2 ヴァレンティーノ・バルボーニ」が限定モデルとして登場。好評を受けて、RWD仕様は2010年にカタログモデル化されている。

2007年、ガヤルドの累計生産台数が5000台を突破。ジュネーブ・モーターショーにおいて限定モデル「ガヤルド スーパーレッジェーラ」が発表された。10PSの出力アップと100kgの軽量化により、2.5kg/PSというパワーウェイトレシオを実現。ガヤルド スーパーレッジェーラはロボタイズド・ギヤボックスを標準装備し、それが以後のモデルにも引き継がれていくことになる。

2008年のジュネーブ・モーターショーでは、ガヤルドの改良版「LP 560-4」を発表。ガヤルド LP 560-4は、20kgの軽量化を果たし、直接燃料噴射システムを採用した、最高出力560PSの5.2 リッターV10エンジンが導入された。同年、ガヤルドの生産台数は7000台に到達。11月に開催されたロサンゼルス・モーターショーでは、オープントップの「LP 560-4 スパイダー」が発表されている。

「5.2リッターエンジン搭載バージョン以後は、クランクシャフトの剛性を高めるため、クランクシャフトのジオメトリを変更し、スプリットピンを廃止して不等間隔燃焼にしました。直接燃料噴射技術の採用により、燃焼室 内の効率が向上、出力アップと汚染物質の減少につながりました」と、新型エンジンについてレッジャーニは説明を加えた。

生産台数が9000台に達した2009年、ランボルギーニは「ガヤルド LP 550-2 ヴァレンティーノ・バルボーニ」を発表。250台が限定生産されたこのモデルは、最高出力550PSを発揮するエンジンに後輪駆動という、ガヤルド初のパッケージが採用された。その後、多くの要望を受け、ガヤルド LP 550-2は、通常モデルとしてクーペ(2010)とスパイダー(2011)にも導入されている。

2013年11月25日に最後のガヤルドがラインオフ

様々なアップデートやバリエーションの追加を繰り返しながら、ガヤルドは2013年まで製造。2013年11月25日、最後の1台「ガヤルド LP 570-4 スパイダー ペルフォマンテ」がラインオフされた。
様々なアップデートやバリエーションの追加を繰り返しながら、ガヤルドは2013年まで製造。2013年11月25日、最後の1台「ガヤルド LP 570-4 スパイダー ペルフォマンテ」がラインオフされた。

ランボルギーニは、2010年3月に「ガヤルド LP 570-4 スーパーレッジェーラ」をジュネーブ・モーターショーで発表。2007年の「スーパーレッジェーラ」の成功を引き継ぐことを狙い、前モデルより70kgの軽量化を果たし、最高出力570PSを発揮するV10エンジンを搭載。パワーウェイトレシオは2.35kg/PSにまで引き下げられた。

エクステリアにも変更が加えられ、ラジエーターへのエアフロー増加に加えて、フロントアクスルのダウンフォースレベルが向上。さらに、フロアパネルの変更とサイドスカートの導入、新形状カーボンファイバー製リヤディフューザーも空力性能をアップさせた。空力バランスを図るため、固定式リヤスポイラーも装着されている。

2010年は、さらなる軽量化を実現した「ガヤルド LP 570-4 スパイダー ペルフォマンテ」、ワンメイクシリーズ「スーパートロフェオ」の公道仕様とも言える「ガヤルド LP 570-4 ブランパン エディション」も投入された。2012年、パリ・モーターショーにおいて、さらにスタイリングを進化させた「ガヤルド LP 560-4」と「ガヤルド LP 570-4 エディツィオーネ テクニカ」を発表。2013年のフランクフルト・モーターショーでは「ガヤルド LP 570-4 スクアドラ・コルセ」がお披露目されている。

2013年11月25日、最後のガヤルドが、サンタアガタ・ボロネーゼの本社ファクトリーをラインオフ。最後に生産された1台は、鮮やかなロッソマーズにペイントされた「ガヤルド LP 570-4 スパイダー ペルフォマンテ」だった。10年以上にわたる生産の中で、ガヤルドには数多くのスペシャルエディションが登場。45ヵ国で販売され、その生産台数は合計1万4022台にも達したという。

今、最も安い1000万円以下から狙える唯一のランボルギーニこそ「ガヤルド」である。

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