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幼少期からの夢を叶えたファスベンダー

『Road to Le Mans. The Film』は、マイケル・ファスベンダーがポルシェと共に100周年を迎えたル・マンを目指す様子を描いたドキュメンタリー作品。彼自身がレースを戦う中で味わった、まるでジェットコースターのような感情の波をすべて追体験できる。
ファスベンダーは子供の頃からレースを夢見ていた。ドイツ・ハイデルベルク生まれの46歳は、2018年にこの願いを叶えるための第一歩を踏み出す。ポルシェのステアリングを握ってル・マンに3度も挑んだ俳優のパトリック・デンプシーが、彼にポルシェとのコンタクトを取り付けてくれたのだ。
ポルシェのサポートを受けたファスベンダーは「ポルシェ・レーシング・エクスペリエンス」「ポルシェ・スポーツ・カップ」、そして最終的には「ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)」にステップアップし、レースにおける経験を積み上げていく。この成長の過程のすべてをカメラが追っており、Youtubeに彼の奮闘を追った動画が公開されている。
ポルシェのマーケティング・コミュニケーション・ディレクターを務めるオリバー・ホフマンは、ファスベンダーの挑戦を追った動画作品の制作について次のように説明する。
「私たちは、マイケルの挑戦の過程を、世界のファンと分かち合いたいと思っていました。そこで私たちは、彼の夢をテーマにしたコンテンツシリーズの制作を決定しました。彼の夢がいかに大きく、想いが強いかは明らかでした。私たちはすべてのステップでマイケルをサポートし、共に駆け抜けたという自負があります。『Road to Le Mans』のすべてのエピソードから、その情熱と決意を感じることができるでしょう」
2度目のル・マンで自身のタイムを4秒も更新

マイケル・ファスベンダーは、3年にわたる準備期間を経て、2022年にプロトン・コンペティションがプリペアしたポルシェ 911 RSRで、ル・マン24時間レースへと挑む。しかし、ちょっとしたミスからアクシデントに巻き込まれ、リタイアに終わる。野心的なジェントルマンレーサーにとっては、残酷な挫折となった。
「このレースアクシデントは、チームにとっても、そして特にマイケルには本当に悲痛なものでした。ただ、彼は立ち上がります。すぐ、もう一度チャレンジしたいと思うようになったのです」と、制作を担当したセバスチャン・ボロウスキーは振り返る。
2023年6月12日、ル・マン24時間レースが100周年を迎えた記念すべき日、ファスベンダーは再びサルト・サーキットのグリッドに並ぶ。マシンは前年に続き、プロトン・コンペティションのポルシェ 911 RSR。リヒャルト・リエッツとマルティン・ランプが、チームメイトとして彼をサポートした。
2年目のル・マン24時間、ファスベンダーの成長は明らかだった。彼はレース中、前年に自身が記録したタイムを4秒も更新したのだ。ただ、2度目の参戦でも完走を果たすことはできなかった。残り5時間を切った段階で、ポルシェカーブでタイヤバリアと接触。ポルシェ 911 RSR 911号車は、レース続行を断念したのである。