レジェンドドライバーの競演「エイム・レジェンズ・クラブ・カップ2023」

往年の名ドライバーが本気を見せる年末の恒例イベント「エイム・レジェンズ・クラブ・カップ2023」

今回のレースには18名も豪華な顔ぶれが並んだ。
今回のレースには18名も豪華な顔ぶれが並んだ。
11月25〜26日、富士スピードウェイでレジェンド・レーシング・ドライバーズ・クラブが主催する「AIM Legend's Club Cup 2023(エイム・レジェンズ・クラブ・カップ2023)」が開催された。錚々たるメンバーが本気で走る年末のお祭り的レースを取材した。

AIM Legend’s Club Cup 2023

まさにレーシングドライバーの名球会

インタープロト・シリーズ、KYOJO-CUP、TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cupなどを含む、11月25〜26日の富士チャンピオンレースシリーズ第6戦で、2023年の国内レースシーズンの締めくくりに相応しいレースが開催された。それがレジェンド・レーシング・ドライバーズ・クラブが主催する「エイム・レジェンズ・クラブ・カップ2023」(以下、LRDC)だ。

LRDCは10年前の2013年に発足(当時はゴールドスター・ドライバーズ・クラブ)した、国内外のレースで活躍した日本人ドライバー、および関係者を対象とするレーシングドライバーの「名球会」的な組織である。

そんなLRDCに所属する“名選手”たちが、年に一度、実際にステアリングを握ってレースを行うのが、2018年から始まったAIM Legend’s Club Cupだ。

今回の参加者(敬称略)は、60年前の第1回日本グランプリC-Ⅶレースで優勝した多賀弘明(なんと御年89歳!)を筆頭に、片桐昌夫(84)、武智勇三(83)、岡本安弘(81)、長谷見昌弘(77)、見崎清志(77)、佐々木秀六(76)、寺田陽次郎(76)、戸谷千代三(74)、桑島正美(73)、関谷正德(73)、柳田春人(72)、藤井修二(72)、長坂尚樹(70)、福山英朗(68)、鈴木利男(68)、中谷明彦(65)、片山右京(60)の各選手、計18名という豪華な顔ぶれである。

KYOJO-CUP参戦のVITA-01をシェア

マシンはVITA CLUB株式会社(ウエストレーシングカーズ)製のVITA-01。基本はこの日のKYOJO-CUPに参戦していたVITA-01をシェアするのだが、いくら歴戦の勇士といってもいきなり他人のマシン(しかもセッティングは変えられない)に乗ってタイムを出すのは至難の業だという。

「予選はシートが合わなくて途中で切り上げた。コントロールしづらいし、セッティングをいじれないから余計にね。ステアリング切ってからグッと動くけど、そのあとが遅れる。基本的にフレーム剛性が足りないんでしょうね。でも条件一緒だからしょうがないよ」(長谷見)

「馬力もない、空力も効かない。やっぱり腕でしょう。普段FCR-VITAのレースでKYOJO-CUPの彼女たちと走るけど我々とはブレーキが全然違う。奥まで突っ込んでるのにスロットル開けるのも早い。もう新感覚なのよ。一方、今回のレースでは練習がものをいう。相手の癖もわかってるしね。歳を取っても性格は変わらないもん(笑)」(見崎)

「全然タイムが出ない。不思議なんですよ。僕らのタイムではKYOJOの最後尾ですもんね。ダウンフォースがないので高速コーナーでグリップ感がなく限界が掴みにくい。自分でセッティング変えられないし、毎回乗るクルマも違うので余計に難しいですね。レースは皆さんミラーもしっかり見ているし、わきまえているので安心ですが、なにせ8周ですから。タイヤがやっと暖まったら終わっちゃいます」(中谷)

「ちょっとピーキーなところがあるけど、慣れの問題だからね。これからレースやる人には良い素材だと思います。富士は直線のスピードが有利だから、そこを活かすセッティング。その上でコーナーの一つひとつの平均速度を上げるのが大事。レースは福山君がドーンと行っちゃうだろうし、後ろとどう楽しめるか?ですかね。(鈴木)」

然るべきスキルがあれば何歳でも楽しめるサーキット

その中でポールポジションを獲得したのは、自ら購入したマシンで参戦している福山英朗だった。

「最近のタイヤはフロントがしっかり仕事をするようになったから、私たちの時代とは乗り方も変わってきますよね。またVITAについて言えばアンダーパワーなので、いかに早くアクセルを開けられるかが、大事になるんだと思います。基本は乗りやすいクルマですが、速く走らせるのは別ですからね。レースは後ろが先輩方ばかりなんで、なるべく関わらずに前に行きたいです(笑)」

続く2番手には「アンダーステアが強いので怖くて攻められない」と話す昨年、一昨年の覇者の片山右京。しかしながら強すぎる王者に対し「前年優勝者は最後尾スタート」という新ルールが発動され、18番グリッドからのスタートとなった。

もうひとつ、この予選で注目なのは80歳オーバーながら、11位に入った岡本安弘と14位の多賀弘明だ。

その走り、現役当時と変わらずステディかつスムーズ。聞けば日頃のトレーニングを欠かさず、健康管理にも気をつけているということで、久々のサーキット走行でも問題ないという。昨今、高齢者というと免許の返納ばかりが話題となるが、然るべきスキルがあれば何歳でもサーキットを楽しめる姿を披露することも、高齢者の運転環境の改善に積極的に取り組んでいるLRDCの大事な活動のひとつである。

往年の全日本F3000のような好バトルの末に

11月26日午後に行われた決勝は、AIM EV SPORT 01の先導によるローリング式でスタート。予告どおり見事なホールショットを決めた福山を先頭に、鈴木、中谷と後続もクリーンに1コーナーを通過していく。

いくらエキシビジョンとはいえ、そこは歴戦の強者揃い。ストレートでのスリップ合戦など、各所でバトルが展開されたのだが、そこで気を吐いたのが最後尾スタートの片山だった。

レース前は「雨なら話は別ですけど、ドライですからね。福山さん、利男さんとコンマ何秒も変わらないし、スタートから逃げちゃうだろうから。中盤くらいが良いところじゃないですか?」と語っていたが、オープニングラップで10位に上がると、1周ごとに確実に順位を上げていき、ファイナルラップで3位を走る中谷の背後に肉薄。100Rで一旦オーバーテイクするも、中谷も応戦して再度逆転。最終的にゴールライン手前でスリップから抜けた片山が0.029秒差で3位を勝ち取るという、往年の全日本F3000のような好バトルを披露してくれた。

結局レースは「あーよかった、追いつかれなくて(笑)。こんな夕日の眩しいレース、ル・マン以来だよ。おかげさまで頑張りました」と語る福山が、追いすがる鈴木とのギャップをうまくコントロールしながら、一度も首位を譲らずファステストラップも獲得する完璧な走りで圧勝。見事初回の中谷、2回目の見崎、3、4回目の片山に続く4人目のチャンピオンに輝いた。

なおLRDCの副会長で元トヨタ・ワークスの高橋晴邦が解説を務めるレースの模様は、Inter Proto Series x KYOJO CUP CHANNELで視聴可能だ。

REPORT/藤原よしお
PHOTO/Legend Racing Drivers Club、藤原よしお

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藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…