マツダは2021年シーズンのスーパー耐久シリーズ最終戦より、SKYACTIV-D 1.5を搭載したデミオ(2022年シーズン以降はマツダ2)をベースとする「マツダスピリットレーシング・バイオコンセプトデミオ(マツダ2バイオコンセプト)」に、ユーグレナ社が製造する、使用済み食用油や微細藻類油脂を原料とした100%バイオ由来の次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を使用し参戦している。
2023年シーズンより投入されるマツダ3バイオコンセプトは、同じく先進技術の実験の場としてST-Qクラスに参戦する「他メーカーの車両と同等以上の速さを得るべく」(車体開発担当の楠弘隆(くすひろたか)さん)、CX-5やCX-8、マツダ6に設定されているSKYACTIV-D 2.2を搭載。
カムシャフトやピストン、ターボチャージャーを変更したほか、「詳細は明かせないが効率を改善する新技術を投入した」(エンジン開発担当の上杉康範さん)ことで、市販のSKYACTIV-D 2.2に対し約30%のパワーアップを実現した。
また、「化石燃料由来の軽油よりもむしろ燃えやすいバイオディーゼル燃料に合わせ、燃焼の位相を変更」(エンジン開発担当の森永真一さん)している。
大幅にポテンシャルアップされたエンジンに合わせてシャシーも強化されており、前後にオーバーフェンダーを装着して全幅を約150mm拡大。スリックタイヤもワイド化された。
空力面も見直され、スポイラーの装着などにより増大したフロントダウンフォースに合わせ、前後バランスを整えつつ空気抵抗の増大を抑えるべく、スワンヒンジ式のリヤウィングが装着されている。
バイオディーゼル燃料を使用してスーパー耐久ST-Qクラスに参戦するのは、レースの実戦を先行開発の実験の場とし、将来の市販車での対応を目指してのこと。
だが、CX-60に設定されたSKYACTIV-D 3.3には、バイオディーゼル燃料に対応する燃焼プログラムがすでに実装されているという。しかし、「まだ品質検証が完了していないため、それが終わり次第、使用可能とアナウンスする計画」(森永さん)というから、供給体制と価格の問題さえ解決すれば、バイオディーゼル燃料を一般ユーザーが試せる日が来るのはそう遠くないのかもしれない。
ただし、その他のSKYACTIV-Dについては、バイオディーゼル燃料対応を想定して開発されていない。「燃焼しやすい分ノイズが出やすくなるため、商品性の面で対策が必要になる」(上杉さん)と、現状の課題を話してくれた。
このマツダ3バイオコンセプトに施されたモディファイは、チューニングとドレスアップの両面において魅力的で、エボリューションモデルまたはカスタマイズパーツとしての市販化を期待せずにはいられない。
そのことを率直に問うと、楠さんは「人と技術を育てるため、レース専門エンジニアではなくマツダ3の量産開発に携わったエンジニアが、マツダ3バイオコンセプトの開発にも関わっているので、そうした企画が立ち上がった際には、これまで培った知見が活かせる状態にはなっている」と、実現可能性に含みを持たせていた。