クルマのサブスクKINTOのプリウスU(ベースグレード)「評判のいい寿司屋の握りは『並』でも美味い」

新型トヨタ・プリウスU KINTO Unlimited向けモデル
評判のいい寿司屋の握りは「上」や「特上」を選ばないとその店の価値は味わえないかというと、そんなことはない。「並」でも美味い。通底する味やサービスに変わりはなく、むしろ、その店の本質を味わうのに最適な選択かもしれない。新型トヨタ・プリウスの1.8Lハイブリッド車(HEV)に乗って、そんなことを思った。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:Motor-Fan.jp

1.8L版の「U」も手抜きなし

プリウスU  全長×全幅×全高:4645mm×1760mm×1420mm ホイールベース:2750mm トレッド:F1560mm/R1570mm
最低地上高:145mm 車両重量:1360kg 前軸軸重830kg 後軸軸重530kg

トヨタ・プリウスの開発陣は、ベースグレードだからといって1.8L HEVの開発に手を抜かなかった。開発責任者の大矢賢樹氏は「(プリウスの)入口となるクルマですが、手は抜いていません」と断言する。

「(入口となるクルマに対し)以前は一部の部品を抜いたりするようなこともやっていました。デザイン部門としては、それをやられるのを嫌がります。自分たちが一所懸命デザインしたものが剥ぎ取られるからです。(新型プリウスでは)1.8Lだろうが2.0Lだろうが、共通した世界観を担保しようとこだわりました。1.8Lもしっかり出力を上げているので、現号(前型プリウス)より走ってくれると思います」

Uの搭載エンジンは、1.8L直4。 1.8L直4DOHC(2ZR-FXE) 排気量:1797cc ボア×ストローク:80.5mm×88.3mm 最高出力:98ps(72klW)/5200rpm 最大トルク:142Nm/3600rpm フロントモーター:1VM型交流同期モーター 最高出力:95ps(70kW) 最大トルク:185Nm 搭載電池:リチウムイオンバッテリー
リチウムイオン電池の容量は4.08Ahで2.0Lハイブリッドと同じ

現号より走る──確かにそのとおりだ。1.8Lのガソリンエンジンを搭載することに変わりはないが、新型はエンジンと組み合わせるハイブリッドシステム(走行用&発電用モーター、インバーター、バッテリー)が第5世代に進化しており、システム最高出力は第4世代ハイブリッドシステムを搭載する前型に対して14.4%高出力の103kW(140ps)を発生する。

センターディスプレイが8インチ(上級グレードは12.3インチ)になるが、実用上まったく問題ない。走りのフィーリングはUでも上々だ。  

一般道をほんの少し走った程度だが、発進から巡航速度に到達するまでの加速力に不足はないし、急勾配に差し掛かっても同様。力を補うためにエンジンが始動すると、とくに低速域では耳障り(ボリューム面でも音質面でも)に感じなくもないが、前型に比べれば明らかに良くなっている。

なにより、運転が気持ちいい。ステアリングを切り込んだ際の感触がいい。手に伝わる反力が軽すぎず、重すぎず、適度で気持ちいいし、操舵に対して狙いどおりに向きを変えるクルマの反応が素直でいい。しっかりしたクルマに乗っている、ドライバーが主役になって思いどおりに操っている感覚が濃密に味わえるおかげで、気分がいい。

室内長×幅×高:1840mm×1500mm×1130mm 室内は華美ではないが、気持ちいい設えだ。

新型プリウスはブレーキが(も)いい

新型プリウスのブレーキシステムは、bZ4Xから採用が始まったオンデマンドポンプ加圧タイプだ。
その効果は確かにあった。アクセル、ブレーキ、ステアリングの操作性に一貫性があるのがいい。
奥に見えるのがそのブレーキユニットだ。

新型プリウスは新しいブレーキシステムを採用している。モーター駆動車に必須の技術として、プリウスは油圧(摩擦)ブレーキとモーターによる回生ブレーキを自動的に協調させる(役割分担を行なう)協調回生ブレーキを適用している。新型では新しいハードウェアと制御を採用することで、ペダル操作に対してリニアに作動するようになった。そのため、とくに停止寸前のシーンでのコントロール性が向上。新型プリウスはより自然な(裏を返せば違和感を感じない)フィーリングを手に入れた。

と同時に、アクセルペダルとブレーキペダルの操作感の統一を図った。従来は、加速する側のアクセルと、止まる側のブレーキで、それぞれ独自に開発していたという。新型プリウスの開発では、アクセルの踏み応えとブレーキの踏み応え(ペダルストロークに対する踏力)をとくに常用域で合わせ込んだ。極端なことを言えば、アクセルは軽いけどブレーキは重いとか、その逆にはなっていない。実際に運転した感覚でいえば、ステアリングも含めて操作系の特性に一貫性があり、だから運転していて気持ちがいい。

違うのは「ネタ」の部分。味は共通だ

といったような、クルマの味を決める基本的な要素は1.8L HEVと2.0L HEVで差別化はしておらず共通している。だから、ラインアップ構成の点で「並」に位置づけられる1.8L HEVでも、「もう一度味わいたい」と思わせるプリウス特有の醍醐味は充分に味わえ、ゆえにお買い得だ。2.0L HEVは「上」、2.0L PHEVは「特上」といったところか。繰り返すが、味は共通している。

タイヤ:F&R 195/60R17(ダンロップ ENASAVE)
すぐれたホイールデザインで安っぽさはない。

違うのはネタと言っていい。2.0Lは19インチのタイヤ&アルミホール(195/50R19)が標準なのに対し、1.8Lは17インチ(195/60R17)のみの設定だったり、1.8Lは前席シートヒーターを搭載していなかったり、リヤのセンターアームレストにカップホルダーが装備されなかったりする。

そうしたネタ(装備)の違いよりも、「ともかくプリウスが欲しい」となったときの選択肢として1.8Lは最適だ。で、その1.8Lは「U」というグレードなのだが、このU、KINTOでのみ提供される。KINTOは車両代金に加えて自動車保険や税金、メンテナンス代などを月額利用料に含んだサブスクリプション(サブスク)サービスのことだ。

新型プリウスの発売にあたっては、新たに「KINTO Unlimited」を設定。自動車保険や税金などの諸経費を月額利用用に含めるKINTOのこれまでのサブスクサービスに、「ソフトウェアとハードウェアのアップデート」と、ユーザーの運転データから消耗品の劣化状態を推測して知らせるなどする「コネクテッドで見守り」のふたつの付加価値を加えた内容となっている。

KINTOのプリウスのページ(https://kinto-jp.com/lp/prius/)を開くと、「初期費用フリープラン7年契約が月額16,610円(税込)〜」と案内されている。実はボーナス月加算165,000円(税込)を含んだ料金で、ボーナス払いなしを選択すると月額は44,110円(税込)になる。なるほどそういうことかと独りごちつつ、では2.0LのZやGをKINTOで契約するとどうなるかとシミュレーションするうち、2.0Lを選択する場合でもKINTOの手があるか、という気分になってくる(まんまと術中にはまっている)。

1.8LのUはプリウスの間口を拡げると同時に、KINTOへの関心を高めるモデルだ。2.0Lから機能や装備を剥ぎ取った素っ気なさとは無縁、と断言できる。

プリウスU 
全長×全幅×全高:4645mm×1760mm×1420mm
ホイールベース:2750mm
室内長×幅×高:1840mm×1500mm×1130mm
車両重量:1360kg
エンジン
1.8L直4DOHC(2ZR-FXE)
排気量:1797cc
ボア×ストローク:80.5mm×88.3mm 
最高出力:98ps(72klW)/5200rpm
最大トルク:142Nm/3600rpm
フロントモーター:1VM型交流同期モーター
最高出力:95ps(70kW)
最大トルク:185Nm
搭載電池:リチウムイオンバッテリー
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/ダブルウィッシュボーン式
タイヤ:F&R195/50R19
最小回転半径:5.3m
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:32.6km/L
 市街地モード29.9km/L
 郊外路モード37.3km/L
 高速道路モード31.2km/L

車両価格:299万円(参考価格)

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…