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2023年2月25日(土)、三菱自動車の岡崎製作所と技術センターを会場として開催された『PHEVオーナーズミーティング』。これは三菱アウトランダーにPHEVモデルが追加された2013年1月24日からちょうど10周年を記念したイベントで、抽選で選ばれた89組198名がPHEVの愛車で会場に駆けつけた。応募総数は500に迫る勢いだったそうで、参加できたオーナーはまさに幸運だったのではないだろうか。
会場には地元名古屋グルメのフードトラックやこたつコーナーが用意され、その電力をPHEVから供給するという”PHEV”ミーティングならではの試みに加え、三菱自動車の開発者が語る開発秘話、タレント・テリー伊藤さんのトークショーなどが催された。
さらに、生産工場や三菱オートギャラリー、デザイン開発設備の見学や、テストコースでの試乗など普段は見ることができない開発シーンの一端にも触れることができた。
そんな充実した「PHEVオーナーズミーティング」の様子をレポートしよう!
“三菱のPHEV”10年史……その開発から現在まで
■PHEV前史
実は三菱がPHEVをリリースするにはその前段階があった。2009年に量産モデルがリリースされた電気自動車(BEV)i-MiEVだ。i-MiEVは他社に先駆けて、世界初の量産型BEVとして話題をとなっただけでなく、環境時代のコミューターとして高く評価され2021年の生産終了まで改良を重ねながら10年以上販売された。
スムーズな走りやエンジンを持たないBEVの優れた静粛性、そしてゼロエミッションという環境性能は次世代モビリティとしての期待を抱かせるには十分な資質を備えていた。とはいえ、航続距離はガソリン車に及ばず、充電インフラも整っていなかったことからオーナーはちょっと遠出をすれば”電欠”の不安を抱えることになった。そこで、BEVの優れた点をそのままに実用性を高めたモデルとして開発されたのがアウトランダーPHEVだったというわけだ。
■アウトランダーPHEV(GG型)
2012年11月に前年に発売されていた二代目アウトランダーにPHEVモデル追加を発表、2013年1月に発売された。これは国産車としてトヨタ・プリウスPHVに続く2台目のPHEVであり、SUVタイプとして世界初のプラグインハイブリッドとなった。
ガソリンエンジンと前後2つのモーターで駆動するツインモーター4WDシステムは現行モデルにも踏襲されているもので、基本的にはバッテリーに蓄えた電気を使ってモーターで走行し、バッテリーの電気が無くなったらエンジンで発電してモーターで走る「シリーズ走行モード」、エンジンで駆動しモーターでアシストする「パラレル走行モード」にそれぞれ自動で切り替えるシステム。モーター走行の利点を最大限活かしつつ、電欠の不安といった実用上の不満を解決することとなった。
2015年のマイナーチェンジでフロントフェイスを現在に通じる「ダイナミックシールド」にチェンジ。これまでの曲線的で柔らかなイメージから、鋭く硬質なスポーティさを纏うことになった。
アウトランダーのデビュー時はPHEVを設定するということから、環境に優しいソフトなイメージでデザインされていたが、やはり”三菱のSUV”としての頼もしさ、力強さも必要であり、三菱自動車の新しいフロントデザインコンセプトとして「ダイナミックシールド」が採用された。
さらに2018年のマイナーチェンジで、これまでの2.0L直列4気筒DOHC16バルブMIVECの4B11エンジンから、2.4L直列4気筒DOHC16バルブMIVECの4B12に換装。
さらにバッテリー容量とモーターの出力を高め、静粛性と動力性能を向上させてさらなる走りの良さを手に入れた。
■アウトランダーPHEV(GN型)
2019年のジュネーブと東京のモーターショーで公開された新世代クロスオーバーSUVのコンセプトカー「ENGELBERG TOURER(エンゲルベルクツアラー)」を源流に、新世代のダイナミックシールドを纏ったデザインとして三代目アウトランダーPHEV(GN型)が日本で発売されたのが2021年10月。
プラットフォームはルノー・日産・三菱自動車アライアンスにより共同開発。フルモデルチェンジということもあり、エンジンは2.4L直列4気筒DOHC16バルブMIVECの4B12を踏襲するものの、モーターの出力向上、駆動用バッテリーの容量拡大、ガソリンタンク容量拡大と、走行性能に加え航続距離も全般に渡って大幅に延伸させた。
さらに商品コンセプトを「威風堂堂」とし、20インチの大径ホイールの採用や、先代からさらに新世代化させたダイナミックシールドの採用によって存在感あるフロントフェイスを実現。リヤモーター周辺を整理することで3列目シートが設定されたのも現行モデルの大きなトピックだった。
■エクリプス クロスPHEV
2018年1月に発売されたクロスオーバーSUV。スタイリッシュなクーペフォルムでダイナミックなSUVの機動力を融合したモデルだ。
三菱のPHEVは長らくアウトランダーのみだったが、待望の2車種目のPHEVとして設定されたのが2020年12月で、初代アウトランダーPHEV(GG型)で熟成を重ねたPHEVシステムをよりコンパクトな車体に搭載した形だ。エクリプス クロスが元来持っている走行性能の高さとシャープなデザインによって、アウトランダーPHEVと比べてもスポーティなキャラクター付けで差別化が行われている。
三菱のPHEVでテストコースを走った!
今イベントのプログラムとして、なんと技術センター内にあるテストコースを走るというものがあった。普段は(場合によっては三菱自動車社員ですら)見ることができないテストコースをクルマから見ることができるのだ。
実際にクルマを開発したテストドライバーの運転で複数のコースを同乗試乗するもので(なんと一部の参加者は実際運転も!)、普段から実際に開発現場で走りこんでいるテストドライバーの運転による走行性能の真価を体感できるプログラムだけにクルマのポテンシャルを十分に感じられ参加者も興奮しているようだった。
どのようなコースでアウトランダーPHEVやエクリプス クロスPHEVが鍛えられているのかを知ることができたのではないだろうか。
また、今回の取材ではメディアに向けて新旧アウトランダーPHEVの比較試乗が設定された。試乗した先代モデルはダイナミックシールドを採用した2.0Lモデルとなった。
試乗コースは直線路での全開加速(80km/hまで)、S字コースでのハンドリング(60km/hまで)、スラローム、そしてバンクを含む周回路(120km/hまで)だ。
先代モデルでも十分現代のクルマとして高いレベルにあった。静かながら鋭い加速、60km/hでのS字でもスラロームでも安定感は抜群。モーター駆動のEVらしさに加え、三菱自動車独自の4輪制御技術「S-AWC」の走行安定性の高さとリニアリティを感じられた。
しかし、現行モデルに乗り換えてみるとその進化をまざまざと感じることになった。同じコースを同じ速度で走っているだけに、その違いはわかりやすかった。全開加速は明らかに速く力強く、S字コーナーは気を抜くとあっという間に60km/hを超えてしまう。スラロームの安定感はさらに高まっている。
特に違いを感じたのが周回路のバンク走行。120km/hでバンクに突入するとバンクはまるで壁が迫ってくるようだが、現行モデルの安心感の高さは段違いだった。
トークイベントでは豪華ゲストもPHEVオーナーとして登壇!
ステージでは、開会の挨拶から最後の「オーナーズPHEVいいね!コンテスト」発表、閉会の挨拶まで、充実したスケジュールでトークショーが開催された。
開発者トークライブでは、さまざまな部署で三菱のPHEV開発を担ってきた社員が、その歴史や開発の苦労、こだわりのポイント、デザインなどとにかく濃いトークを展開。さらに参加者の質問も受け付け、実際に乗っている人の生声に応える一面も見られた。
そして何より、自身もアウトランダーPHEVを購入してオーナーとなったテリー伊藤さんのトークショーが注目を集めた。
クルマ好きとして知られ、自動車関連メディアでの露出も多く、クルマ選びにもこだわりがあるテリー伊藤さんがアウトランダーを購入した理由やお気に入りポイントを語っただけでなく、開発者とのトークで鋭い質問を投げかけるなど、会場は大いに盛り上がった。
三菱のPHEVのココがイイ!! 直撃!オーナーインタビュー
今イベントに参加したPHEVのオーナーは89組198名。約100台のPHEV車が集まったわけだが、その多くは現行モデルと先代モデルのアウトランダーPHEV。それにエクリプス クロスPHEVと、数台の他メーカー車も当選したようだ。
ここでは、そんなオーナーにPHEVの魅力やPHEV車を選んだ理由、そしてその機能をどのように使っているのかを訊いてみた。
■エミさん
長野県松本市から参加のエミさん。車好きのお父様はコルト1000からギャラン、パジェロなどを乗り継ぐ三菱党。現在共同所有しているアウトランダーも初代モデルから新型に乗り換えたのだとか。
「旧モデルに比べると電池の持ちも良くなってパワーがありますね。先日、雪が積もった時も駐車場からすんなり出ることができました。4WDならではの安定感がありますね。すごく静かですし、加速力が良いのも気に入っています。往復で30km弱の通勤で使っていますが、1回の充電で2〜3日は電池が持ちますね。たまに遠出するのですが、高速道でもパワーがあって疲れないのがいいですね。」
■日本アウトランダーPHEV倶楽部のスージーパパさん
発表直後にまだ実車も見る前にリリースの情報だけで初代アウトランダーPHEVを予約したという。最初期モデルだっただけに少々のトラブルに見舞われても情報が少なく苦労したのだとか。
「もう10年乗り続けています。割と酷使しているので(笑)バッテリーを1度交換していますが、そもそもあまり劣化しないんですよ。10年経過しても容量が80%くらいあるメンバーもいますよ。いまでもバッテリーだけで60km以上走行できますので、あまりガソリン入れないですね。加速も力強く、一般的にはもたつきそうな山道もぐいぐい登ってくれますよ。」
■JINさん
Facebookでは「エクリプス クロスPHEV乗り」のプライベートグループを主催する。JINさんは茨城県からの参加。
子供と出かけることが少なくなったのでミニバンから乗り換えたJINさん。コンパクトなSUVを検討中、特にPHEVを意識していたわけではなかったが、エクリプス クロスPHEVに試乗して気に入って購入した。
「スタイルも気になっていたのですが、乗ってみたら思っていたより走りに振っている印象で、楽しかったんですよね。昔はFRのスポーツカーに乗っていましたので、走る楽しさを思い出したというか(笑) ダッシュ力に惚れました。ラグのない独特の加速も好きですね。それでいて静かですし。維持費も全然かかりませんね。年間1万kmくらい乗っていますが、ほとんどバッテリー走行ですから。ガソリンは3ヶ月に1回10ℓくらいいれるだけですね。趣味のスノーボードで雪道を走ることも多いですが、走るのが楽しいです。」
選んだ理由や使い方はやはりオーナーそれぞれに異なっているものの、共通して挙げるのはやはり走行性能の高さと経済性。
自身でも乗っている開発者も語っていたことだが、エンジンを搭載するPHEVでありながらガソリンを入れるのは3ヶ月に1度くらいでしかも給油量が15L程度ということも少なくないそうだ。
通勤のようなコミューター的な使い方ではEV走行しかせず、エンジンがかかるのはガソリンの劣化を防ぐための「メンテナンスモード」時のみという話も。メンテナンスモードのタイミングがドライブに出かけるバロメーターになっているオーナーもいるそうだ。
外でこたつが!? フードトラックでもPHEVの電気を有効活用!
会場内には地元名古屋で活躍する軽食やパン、デザートのキッチンカーが集結。営業中は隣に停められたアウトランダーPHEVにコンセントを接続して、照明や調理器具などの電源を確保していた。愛知らしいフードメニューもあり、台湾まぜごはんや台湾まぜそば、ぜんざい、バスクチーズケーキ、カレー、豚汁、カレーパン、天むすなど、ご当地めしを中心に、体の芯から温まるメニューなど盛りだくさんだった。
ステージ前の一画には3台のこたつを設置した「こたつエリア」が出現。1台のアウトランダーPHEVから電気が供給され、ステージイベントをこたつに入ってゆっくり楽しむことができた。イベント当日は少し風が冷たかったので、こたつエリアは一度入ったら抜け出せない。
これが三菱のPHEVの生まれ故郷だ! 貴重な生産現場を見学
当日は岡崎製作所内を見学できるツアーにも参加できた。現在は一般向けの工場見学は休止中なので貴重な体験だ。見学ツアーは約1時間。外板パネルをプレスする工程から溶接を経て、エンジンやモーター、足回りの取り付け、内装の取り付けから最後に完成した車両のテストまで、ロールされた1枚の鉄板からクルマが完成するまでの一通りの作業を見ることができた。自分が乗っているクルマが多くの人の手やロボットによって作られていたのを実感したはず。
PHEVのラリーマシンはもちろん、三菱歴代の貴重なクルマも見られる!
技術センター内には三菱自動車の歴史に功績を残した車両を中心に、貴重なクルマや同社の歴史を学べる施設「三菱オートギャラリー」が開設されている。現在は休館中だが、イベント参加者にむけ、参加人数を限定して特別に公開された。一般公開は5月を予定している。館内には三菱A型や三菱500、コルト1000、デボネアなど歴史に残る名車のほか、ギャランR73XやHSR、パジェロ1などのコンセプトカー、ランサーやギャランVR4などレースやラリーで活躍した車両も展示されている。
しかも、今イベントでは特別にラリーやパリダカなどで活躍した車両を屋外に展示。ボンネット内までじっくり観察できたほか、エンジンをかけてくれるサプライズも。クルマ好きには至福の時間が堪能できたはずだ。
また、ギャラリー以外でも2014年に「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」の電気自動車改造クラスで優勝した「MiEV EvolutionⅢ」と、2013年にアジアクロスカントリーラリーにPHEV車として初めて参戦・完走を果たしたアウトランダーPHEVも展示されていた。
また、社員有志チームによるエクリプス クロスPHEVによる国内ラリー活動の報告も、車両の展示と合わせて行われていた。
初のPHEVオーナーズミーティングに参加者大満足!
今回が初となった三菱「PHEVオーナーズミーティング」は充実したコンテンツで参加者は大満足。大成功のイベントとなった。
一方で、今イベントは参加組数が限定だったということもあり、抽選に漏れてしまったオーナーは次の機会を待っているに違いない。三菱自動車といえば「Star Camp(スターキャンプ)」が恒例の人気イベントだが、これを機に「PHEVオーナーズミーティング」も恒例のイベントになっていくことを期待したい。