日産は2010年にバッテリー電気自動車(BEV)である「リーフ」を発売。自動車を取り巻く環境問題への回答として、世界に先駆けゼロエミッション車を世に問うた。しかし、当時のBEVは航続距離は今より短く、充電インフラもほとんど整っていなかった。当然、ユーザーには「電欠」のプレッシャーが今以上にかかってくることになる。
そこで日産は、EVの優れた走りを電欠のリスクなくユーザーに提供するために、発電用のエンジンを搭載した電動車「e-POWER」を開発していくことになる。

日産が2010年に排気ガスを一歳出さない「ゼロエミッションビークル」として世界に先駆けリリースした市販バッテリーEVの「リーフ」。出力は90kW(122ps)として十分ながら、バッテリー容量は24kWhで航続距離は約200km(JC08モード)と発表されたが、走行状況で大きく変化した。

リーフのパワートレインに発電用エンジンをドッキング!

リーフのボディとドライブトレーンに、既存のエンジンなどを組み合わせたe-POWER開発試験車両。

BEVの航続距離は当然リーフの開発段階から問題として考えられており、実はレンジエクステンダーEVの開発はリーフの開発をほぼ並行で進められていたという。そして、レンジエクステンダーEV=e-POWER開発試験車両はリーフのボディとコンポーネントを流用して開発されたという。

リーフとe-POWER試作車の違い。

エンジンはノートやマーチに搭載されたHR12型1.2L直列3気筒。モーターとインバーターは2012年式リーフのものを使用。容量12kWhのバッテリーは2010年式リーフの前側半分の12モジュールを搭載。発電用インバーターは専用開発し、40kWの発電機を追加した。燃料タンクは取り去ったリーフのバッテリー後ろ半分の位置に30L分設置して、航続距離を500kmを確保した。

リーフのボンネット内はモーターとインバーターを組み合わせたEVユニットが収まるほか、走行以外で使用する電気を賄う鉛バッテリーが搭載されている。
エンジンには当然ラジエーターや冷却水などの周辺機器も追加される。写真左側がHR12型エンジンで、右側がモーター、インバーター、発電機を組み合わせた試作e-POWERユニット。

車体前面にラジエーターが配置されるため、リーフの外観的な特徴であったフロントグリルの給電ポートは左リヤフェンダーに配置された他、ガソリン給油用に右リヤフェンダーには給油口も設けられている。
何よりエンジンの排気のために排気管が車体下面に左側を這い、リヤバンパー左にマフラーを設置しているのがリーフとの大きな違いだ。

給油口/充電ポートが左右に開く。
左の充電ポート。
右の給油口。
排気管は車体左に配置。
マフラーが覗くe-POWER開発試作車。
もちろん、リーフにマフラーはない。

ノートに搭載するのにまたひと苦労

この試作車でe-POWERの市販に向けての開発が進められていくわけだが、実際にノートe-POWERが市販されたのは2016年。リーフの発売、開発スタートから6年の歳月が必要だった。なぜe-POWER最初の量産車がノートだったのか、どのような苦労があったのかなどの開発ストーリーは当時の開発インタビューなどに詳しい。

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試作車両のベースであるだけに試作e-POWERユニットはリーフに搭載できるように作られており、リーフよりもコンパクトでエンジンルームも狭いノートに収めることも含め、ノートに搭載可能なサイズへの小型化には苦労もあったそうだ。
写真を見比べてもわかるように、ノートe-POWERとして小型化・最適化されたシステムであっても、ノートのエンジンルームにはいっぱいいっぱいだ。

e-POWER開発試作車のエンジンルーム。
ノートe-POWERのエンジンルーム。

電動車としての優れた走りを電欠とは無縁な形で提供するe-POWERはユーザーからも高く評価され、搭載車種を拡大しつつ日産の電動化の片翼を担う存在へと成長していく。
2016年のe-POWERデビュー時、エンジンと組み合わされえるユニットとして、モーター、インバーター、発電機のセットはトランスミッションより大きく重い。その後、e-POWERの小型化と軽量化がひとつの課題となっていく。

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