目次
クルマとは異なるVOLVOの本流
ボルボと聞くとやはり乗用車を思い浮かべがちだが、スウェーデンのボルボグループは、トラックやバス、マリン用や汎用のエンジンなども手掛けている。元々、乗用車のボルボもグループの一員だったが、現在は売却され直接的な関連は失われている。
さて、建築重機を手掛けるボルボ建機の電動化の話題に話を戻そう。
2023年05月24日(水)~2023年05月26日(金)に千葉県の幕張メッセで開催された建設・測量生産性向上展「CSPI-EXPO」。そこでお披露目されたのは、電動小型ホイールローダー「ボルボL25エレクトリック」と電動小型油圧ショベル「ボルボECR25エレクトリック」の2台だ。まずはこれらの2機種を日本で展開していくという。
クルマだけじゃない! 建設機械も電動化へ
ボルボ建機が建設機械の電動化に挑む背景には、パリ協定で定められた努力目標を達成すべく、2040年までにバリューチェーンで、つまり製造から販売までの温室効果ガス排出量を正味ゼロとすることを目標として掲げているからだ。このため、2030年までに全製品の35%をEV化することを目指しており、将来的には、代替燃料や燃料電池なども導入していく方針だ。
その目標達成のために、欧州では2019年より上記の2機種を投入。2021年には北米市場にも販売地域を拡大。2023年現在で、1000台弱を販売しているという。
現在のモデルラインアップは、欧州と北米には小型電動油圧ショベル3機種と小型電動ホイールローダー2機種を展開中。さらに地域を限定し、5トンの電動油圧ショベル、23トンの電動油圧ショベル、電動中型ホイールローダーというより大型の電動建築機械の展開も始めている。
アジア地域では、シンガポールと韓国でも2023年より「L25」と「ECR25」の販売を開始する計画だ。
ボルボ建機のアジア責任者であるトーマス・クタ氏は「日本市場には30年前より参入しているが物凄く競争が激しいため、ボルボのシェアは小さい。一早く電動化に対応することで、企業としてのカーボンニュートラルを目指すだけでなく、顧客の電動化のニーズにも応えられることを大きな強みとしたい」とし、電動モデルの導入で、日本市場でのシェア拡大を目指す意気込みが語られた。
EV建設機械はシェアを拡大することができるのか? そのスペックは?
性能面はディーゼルエンジンの同等機種と変らないものを備えており、様々な作業に必要なアタッチメント類も従来品と共有できるという。
ホイールローダー「L25」は、バッテリー容量40kWhで、最大駆動時間が8時間。
ショベル「ECR25」は、バッテリー容量20kWhで、最大駆動時間が最大4時間とする。
充電機能はオンボードの普通充電器を標準搭載するが、急速充電器もオプションとして用意される。
しかし、電動建設機械には弱点もある。まずは価格だ。ディーゼルエンジンのものと比べ3~4倍にもなる。因みに、EV推進国であるノルウェーでは、クルマだけでなく電動建設機械にも約50%の補助金が出ているという。このため、日本のユーザーは購入ではなく、レンタルやリースが中心となると予想される。
建設機械もクリーンで快適な時代へ……地球環境だけでなく労働環境も向上する
電動建設機械のメリットとデメリットについて、クタ氏は「いくつかメリットはあるが、まずはクリーンなこと。購入する電気が、グリーンエネルギーであれば、カーボンゼロとなる。さらにモーター駆動なので、稼働時は静かで振動もない。工事現場での騒音低減に加え、オペレーターの操縦時の快適性も高まり、集中力の向上や疲労低減にもつながる。またエンジンに必要な油脂類がないため、メンテナンス費も削減できる。デメリットは、まだ台数が少ないので車体が高価なこと。使用時は、現場での稼働時間と充電時間を考慮して運用しなければならないことなどが挙げられる。これはチャレンジングな課題ではあるが、使い方や技術によって近い将来、問題を解決できると考えている。まずは環境保護の為に、電動化を行っていくことが大切だ」と回答してくれた。
直近の大きな課題が価格であることは間違いない。しかし、建設業界でも企業の環境対応が必須の今、電動建設機械の活躍の場は確実に広がっていくだろう。そうなれば価格低下は進み、クルマ同様に少し割高程度に収まる日もそう遠くはない。
また充電だけでなく、直接電気を供給する仕組みや他のクリーンエネルギーの活用なども目指されてる。動き出した建設機械の電動化が、建設機械メーカーの競争にどのような影響を与えるのかも興味深いところだ。