大開口&低床フラットフロアは唯一無二の価値「ホンダN-VAN」【最新軽自動車車種別解説 HONDA N-VAN】

軽商用車は後輪駆動式というセオリーに対して「Nシリーズ」と同様の前輪駆動とした「ホンダ N-VAN」。さらに低床フラットフロアとハイルーフ仕様のデザインはパーソナルユースを意識していると言える。車中泊やテレワーク向きに用意された装備の使い勝手も乗用車ベースと遜色ない。乗車ドア、荷室とも開口口が広く、助手席側のドアはピラーレスになり、商用貨物車としてはもちろんアクティブなシチュエーションでも使いやすい一台だ。
REPORT:河村康彦(本文)/小林秀雄写真解説) PHOTO:中野孝次 MODEL:大須賀あみ

他商用車とは一線画す利便性 多彩なシートアレンジも楽々

ホンダ発の軽商用モデルとしては、実に19年ぶりのニューモデルとなったのがN-VAN。ただし、そのエクステリアのデザインやボディカラーにパステル色が設定されていることなどからも察しが付くように、必ずしも働くクルマだけにフォーカスをしたのではなく、個人ユーザーによるパーソナルユースも意識して開発されていることが明白だ。

エクステリア

全高はN-BOX よりもFF車で155㎜、4WD車で145㎜高くなっており、より多くの荷物を積載可能。乗用を意識した「+ STYLE FUN 」系にはツートーンホイールキャップも備わる。最小回転半径は4.6m。

何よりも、荷室長を最大限に採りながら荷物満載時のトラクション性能を確保するために後輪駆動方式をベースにするのが当然という軽商用カテゴリーの常識に反して、ホンダの軽乗用車である他のNシリーズ同様の前輪駆動レイアウトをベースに採用しているというのがその証左。

一方、それによるハンディキャップを少しでも取り戻すべくホンダ独自のセンタータンクレイアウトを採用しながらドライバーズシート以外はすべてダイブダウン式の設計とするなど、低床デザインを徹底しているのも見どころとなる。

乗降性

2018年のデビュー当初には設定されていたロールーフ仕様がカタログ落ちしたことで、現在用意されるのは全高が1945㎜(4WD仕様は15㎜アップ)のハイルーフ仕様1ボディ。そんな背の高さに加え、前述した低床空間を出現させるシートアレンジの簡単さや左側Bピラーレスの構造などを駆使すると、他の軽商用車とは一線を画したこのモデルならではの使い勝手が活きることになる。

インストルメントパネル

シンプルな水平基調のインパネには多くの収納類を備え、実用性をアップ。フルオートエアコンが全車に標準装備され、8インチナビゲーションも販売店オプションとして設定。

一方で、そのために犠牲になったと受け取らざるを得ないのがフロントのパッセンジャー側シートで、率直なところドライバー側に対して大きく見劣りするその座り心地は「長時間の連続使用は辛い」と実感するレベルだった。

確かに、この部分がダイブダウンをして低床フロアの一部と同化をするのはこのモデルの大きなアピールポイントだし、シートバックを水平位置まで前倒しすると裏側をテーブルとして使えるという機能も捨てがたいが、ふたりで移動をする機会が多いというユーザーのためには、オプション設定でも構わないのでもう少し着座感に優れたシートが欲しいという声も上がりそう。現状のN-VANの居住性は、正直なところ1+3シーターという印象でもあるからだ。

居住性

そんなN-VANに搭載されるエンジンはターボ付きと自然吸気の3気筒ユニット。ターボ付きに組み合わされるトランスミッションはCVTに限られるが、自然吸気ではそれに加えてS600用をベースにリファインを加えたという6速MTも用意される。パーソナルユースで遠出する機会もそこそこ考えられるという場合はやはりターボ付きを選びたくなるが、街乗り限定というならば自然吸気でもその加速力にさほどの不満はなさそうという印象。シフトフィールに優れペダル配置も適性なMTは意外にもスポーティな印象だ。

うれしい装備

後席と助手席を格納すると、奥行きが約2635㎜に達するフラットフロアを実現。大型家具も積載可能で、工夫すれば車中泊にも使える。
月間販売台数   2580台(22年7月〜12月平均値)
現行型発表     18年7月(一部改良21年2月)
WLTCモード燃費  19.8km/l ※自然吸気のFF車(6速MT)  

ラゲッジルーム

商用車向けタイヤを履いてその内圧設定も高めなので特に低速域では路面凹凸を拾った硬さを直接的に伝えてくる一方、操安性はなかなかに優秀。このあたりも、乗用ユースが強く意識されたことを感じさせる。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.148「2023 軽自動車のすべて」の再構成です。

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