目次
プジョーは1810年ごろ、日本では先ごろのWBCで有名になった(?)ペッパーミル(コショウひき)などの日用品などの製造から始まり、拳銃や散弾銃などの銃器、そして自転車やモーターサイクルの製造へと手を伸ばし、自動車製造にも乗り出した。一時は飛行機にも乗り出している。
90年ほど前に、そのプジョーが生み出した中型自動車の系列がプジョー401だ。ここではその登場から新型408の先代となる407までを、いささか駆け足だがここで振り返ってみよう。
401
プジョー401は1928年まで製造されたプジョー タイプ176の実質的な後継モデルとして1934年のパリモーターショーで予告され、翌年の同ショーで発表されたプジョーの中型モデルだ。この401で、プジョーは1929 年に 201 から始まった乗用車シリーズの近代化を完了させることになる。
ちなみに401もまた、1930 年代のすべてのプジョー車と同様にソショー工場で製造され、1934年から1935年にかけて15545 台が生産されている。401 には 11 もの異なるボディ・スタイルが用意されていたが、そのうちの7000台がベルリーヌ(セダン)・ボディだった。
諸元;直列4気筒1 720㏄(44ps) エンジン、3速MT、最高速度:100 km/h
402
プジョー402は401の後継車として1935年から 1942 年まで製造されたモデルで、フロントグリルの背後にヘッドライトをセットしたフロントエンドが特徴。この形式は1930年代にはプジョー車を代表するデザインとして知られた。また、1930年代のフランス車は流線型デザインが席巻していたが、402もその影響を受けており、“ソショー・スピンドル(紡錘)”という愛称で呼ばれている。
この402とより小型の202により、プジョーは明確に大量販売に乗り出すことになり、1935年から1942年の間に75172台の402 が生産された。
写真の402 B レジェールは202に範をとった、現代で言う“ロングノーズ・ショートデッキ”スタイルが与えられたベルリーヌ・スポール、これまた現代流にいえば“スポーツセダン”だ。エンジンも“アルパックス”と呼ぶ軽合金のシリンダーヘッドを用いてノーマルの402より出力をアップしたものが搭載されている。ちなみにベルリーヌ・スポールは3678台が生産された。
諸元:直列4気筒、2142cc(63ps)エンジン、3速MT 、最高速度130km/h
403
プジョー403は1955年から1966年まで製造されたモデルだ。402の生産終了から403の登場まで間が開いているのは、1945年まで第二次世界大戦中で占領下にあったことと、戦後の自動車生産はより小型の202および203に集中したためだ。
403はフェンダーがボンネットやトランクと一体となった。いわゆる“ポントン”ボディの3ボックス形式で、最もベーシックなモデルを除いては金属製サンルーフが組み込まれているのが特徴。デザインは有名なイタリアのカロッツェリア、ピニン・ファリーナだ。403 は1955年から1966年まで1214126 台が生産されており、プジョーで初めて100万台を超えるセールスを記録した。一応、いわゆるDセグメント車に分類されている。
写真の403カブリオレは、日本でも1970年代初頭に放映されて人気となったアメリカのテレビシリーズ『刑事コロンボ』への登場で有名となった。画面上のイメージとは裏腹に、403カブリオレは実際には非常にカラフルなモデルで、赤、黄、メタリック・グリーン、メタリック・ブルー、メタリック・グレーの外装色が用意され、柔軟素材や皮革が用いられた内装色はサンドベージュ、黒、青、赤となっていた。ちなみに生産台数は1814 台だ。
尚、403はステーションワゴン型のエステート(2枚目の写真の403リムジン・コマーシャルも準じる)で、プジョーとして初めてディーゼルエンジンを搭載した大量生産モデルでもある。こちらは1956年から 1960年にかけて119493台が生産されている。
カブリオレ諸元:直列4気筒、1468 cc(48ps)エンジン、4 速MT、最高速度135 km/h
リムジン・コマーシャル諸元:直列4気筒、1468cc(58ps)エンジン、4速MT、最高速度125 km/h
404
プジョー404は1960年から1975年まで製造されたモデルで、いわゆるDセグメント車に分類されている。前モデルの403が1966年まで製造されて404と併売されていたが、これは1960年に小型の203が生産中止となり、前輪駆動のまったくの新型車である204が登場するまでの間、403のボディに小さな排気量のエンジンを搭載した403sept(セット)という廉価版を作り、商品ラインアップの穴を埋めたためだった。
当初はベルリーヌ(セダン)、エステート(ステーションワゴン)、ピックアップの3車種で展開され、デザインは403同様にピニン・ファリーナ。デザインも機構も403を熟成させた感のあるもので、トラック・ボディのバリエーションは実に1988年まで販売されるなど、プジョー車の中でも格段に長期のモデルライフを誇り、欧州をはじめ南米やアジア・アフリカ諸国など海外でも多く製造された。また、タクシーとしても広く用いられており、その耐久性も高く評価されている。404は1960年から1968年の間に2885374台が製造された。
写真のカブリオレ(コンバーチブル)は1962年に発売されたもので、76hpあるいは96hpの2種類の出力のエンジンが用意されていた。イタリア、トリノのピニン・ファリーナ工房でボディを製造、フランスのソショー工場で最終組み立てを行なう形が取られたカブリオレは1968年までに10587台が生産されている。
もう1台のクーペは1963年にラインアップされ、カブリオレと同じ製造工程がとられた。クーペは1069年までに6837台が生産されている。この2つのモデルを「同世代の最も美しいコンバーチブルおよびクーペ」に推す専門家の声もあるという。この404を最後に400番台の車両は一時休止状態に入る。
カブリオレ諸元:直列4 気筒、1618 cc(76hp)エンジン、4速MT 、最高速度150 km/h
クーペ諸元:直列4気筒、1618 cc(96hp)エンジン、4 速MT 、最高速度167 km/h
405
プジョー405は1960年にデビューした404以来、17年ぶりの400番台の新型車として1987年に発売され、欧州では1997年まで製造されたが、それ以後もフランス国外の世界各国でライセンス生産され続けており、現在まで世界中で実に250万台以上が販売されている。2020年初頭には単一世代車種として史上20番目の長寿車(33年間)に数えられている。現在もアゼルバイジャンで製造されているようだ。どちらかと言えば405は305の上位後継車種的な立ち位置で、405の発売直後に305は生産終了となっている。分類は一応、いわゆるDセグメント車だが、Cセグメントの上位とされることもある。サイズ感としては今回の408と似た立ち位置かもしれない。
405はシトロエンBX とフロアパンを共有しているものの、リヤアクスルの4WD 車(SRix4、Mi16x4、および T16)を除けば、シトロエンBX が装備していた油気圧サスペンションは装備していない。405シリーズには基本的に3種類の4 気筒ガソリンエンジンと2種類のディーゼルエンジンが用意されているが、これらには仕向け地によって様々なチューニングが施されており、多種多様な仕様が存在する。
尚、市販車のボディタイプにはクーペ・タイプは存在していないが、主にパリ・ダカール・ラリーで用いられたレース車両の405T16 GRはミッドシップのエンジン配置にクーペ・タイプのボディを備えていた。
406
プジョー406は本国フランスでは1995年から2007年まで製造販売されたモデルで、サイズ的にはいわゆるDセグメントに属する。ベルリーヌ(セダン)、エステート(ステーションワゴン)、クーペのボディ・スタイルが用意されており、純然たる405の後継車だ。シトロエン・エグザンティアとプラットフォームを共有するが、油気圧サスペンション・システムは装備されていない。スタイリングは405のキープコンセプトであり、機構の面も同様。
ベルリーヌは1998年に公開されたフランス映画『TAXi(タクシー)』に登場して有名になった。ベルリーヌのデザインはプジョーの社内案と言われるが、1996年に発表されたクーペのデザインはイタリアのカロッツェリア、ピニン・ファリーナが担当。製造も同社で行なわれた。このクーペは欧州の自動車マスコミによって「最も美しい量産クーペ」と認められている。
エンジンは1.8 ℓ および 2.0 ℓのガソリンと1.9 ℓターボディーゼルが用意され、2.0リットルガソリン、2.9 (3.0)ℓ V6ガソリン、2.1 ℓターボディーゼルなどが加わった。特にディーゼルは好評を博し、欧州で最も売れたディーゼル車の1つになっている。また406クーペは2001年にプジョーで初めてディーゼルエンジンを搭載したクーペになっている。
ちなみに映画『TAXi』登場のサルーンは劇中では最上級仕様のV6ガソリンエンジン車と言っているが、実際には英国ツーリングカー選手権用のレース仕様車がベースだという。写真のクーペは2004年に2177台生産された“ウルティマ エディツィオーネ”と名付けられた豪華版。なお、クーペの総生産台数は当初予測 70000 台に対し、107654台に達した。
407
プジョー407は成功をおさめた406の後継車として2004年に登場、2011年(クーペは2012年)まで生産された、いわゆるDセグメントに属する中型車だ。デザインとしてはより小さな307のデザインとも通底する、大きなフロントグリルと低く寝かせられたAピラーが特徴だが、この革新的かつ特徴的なフロントマスクは、欧州の一部自動車マスコミからは「怒ったような目と大きな口」と評され、従来の保守的なデザインを好む層とは賛否両論となった。
先代の406と同様にフランス映画『TAXi』シリーズで2007年に公開された4作目および2018年に公開された5作目に登場したことで有名。ボディ・スタイルはベルリーヌ(セダン)、エステート(ステーションワゴン)、クーペが用意され、エンジンはガソリンが1.8~3.0ℓ、ディーゼルは1.6~3.0ℓが用意された。
サスペンションも凝ったもので、大小2つに分かれたハブキャリアのうち、ウィッシュボーンに支えられる部分にマウントされた小さなハブキャリアだけが舵角に応じて左右に首を振る特殊なメカニズムで、動きのスムーズさに注力している。また、各ホイールのダンピングを個別に制御し、ドライビング・スタイルに合わせて2.5ミリ秒ごとに乗り心地の硬さを調整するAMVAR電子サスペンションが搭載されていたモデルもあった。
2010年10月、PSAのフィリップ・バラン氏(当時)が「プジョー407の後継車は408ではなく、2010年10月のパリ・モーターショーで発表した508である」と発表、2011年に607との統合後継モデルである508にバトンタッチした。
ただし408の名前がなくなったわけではなく、自動車新興国で販売された、中国で製造されたプジョー308のノッチバック・バージョンに使用され、現在に至っている。