納車日を“見える化” トヨタが販売物流管理システム「J-SLIM」を2023年中に全車種・全販売店に展開へ

新車を買っても手元にいつ届くか分からず、それが原因でトラブルになったという話も聞かれる昨今。トヨタでも大量のバックオーダーを抱え、納車日をユーザーに伝えられないという状況に陥ったが、新システムの導入により混乱を脱しつつあるのだという。

半導体不足などの影響により、新車を購入しても納車までのスケジュールが読めないということも多い昨今だが、そんな状況を打破すべく、トヨタは現在、独自の販売物流統合管理システム「J-SLIM」を導入している。

J-SLIMは「Japan-Sales Logistics Integrated Management system」の頭文字を取ったもの。これは受注、生産計画、生産、配送、納車まで、メーカーや販売店といった領域を分けることなく、統括して管理するシステムだ。

TOYOTA J-SLIM
J-SLIM開発の陣頭指揮を執ったトヨタの友山茂樹氏。現在はExecutive Fellowと国内販売事業本部(本部長)を務める。

近年のコロナ禍や半導体不足の影響により膨大な数の受注残が発生したことを受け、トヨタは2022年7月にJ-SLIMの開発に着手。そして同年末から一部車種において作動させた。現在は全車種での適用を完了させており、2023年末までに全販売店への展開完了を目指している。

TOYOTA J-SLIM

従来では、受注残のうちメーカーの生産計画に含まれなかったものは、販売店側のシステム上に滞留するかたちとなっていた。そのため、販売店では顧客との契約が成立しても、実際の生産状況と連動した正確な納期を伝えることが難しかった。また、販売店側が早めの受注を取り付けたことで、顧客への納車が行なえないまま長期滞留車となるケースも出ていた。

TOYOTA J-SLIM
TOYOTA J-SLIM

J-SLIMでは、受注したクルマを2年先まで設けられた生産予定枠に並べるかたちとされた。これまで生産計画は販売予測によって決められていたが、J-SLIMではそれが実需に基づくようになったため、生産の効率、生産数の精度が向上した。
また、生産から納車に至るまで、全工程をシステム上で管理。工程ごとに基準リードタイムを設けて滞留車を減らすよう務められているほか、販売店には各車両の生産進度を反映した生産予定日が伝えられるようになった。

TOYOTA J-SLIM
実際のJ-SLIMの作動画面
TOYOTA J-SLIM
実際のJ-SLIMの作動画面


さらに、全車両、全工程が管理されるため、納期が遅れるケースが発生した場合、どの仕様や機能が生産制約になっているかが把握でき、そのネックをいち早く解消することで納期短縮へとつなげることが可能となった。さらに受注情報から部品、用品の必要数を算出できるため、仕入先への内示精度も向上された。

J-SLIMの導入によって、トヨタの生産数や生産速度が劇的に向上し、納期が早まるわけではない。しかし、生産から納車までが統一されたシステムで管理されるようになったことで、正確な納車日を知ることができるようになったのは顧客としてもいいことであることは間違いない。

キーワードで検索する

著者プロフィール

MotorFan編集部 近影

MotorFan編集部