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大きくなったと言われるものの、取り回しは良かった
カングーといえば小型商用車のイメージで、先代モデルでボディサイズが拡大され「デカングー」と呼ばれたりしていた。この現行のカングーはその先代よりさらに大きくなっているという。
確かに先代モデルの全長4280mm×全幅1830mm×全高1810mmというサイズからは全長+210mm、全幅+30mm、全高+50mmとワンサイズ大きくなっている。歴代モデルからの乗り換えならこのサイズアップは強く感じるかもしれないが、4.5mm以下に収まる全長は昨今のクルマの大型化を考えるとさほど大きくは感じなかった。
1860mmという全幅はトヨタ・ハリアーや三菱アウトランダーといったミドルクラスSUVのサイズ。数字的には大きく感じるが、スクエアなボディの見切りの良さもあって狭い道に入り込んでしまってもそれほど苦にならなかった。
スクエアなボディは、バックカメラや助手席側のサイドミラーに設置されるサブミラーと合わせて駐車スペースに真っ直ぐ入れやすかった点も好印象だった。
1860mmの全高はミドルクラスの国産ミニバンと同じくらい(トヨタ・ノア:1895mm、日産セレナ:1865mm、ホンダ・ステップWGN:1840mm)。それだけに、取り回しに特別気を遣わなければならないというようなサイズではなかった。むしろボンネットがはっきりとわかるスタイルは、ボディ前端の見切りの良さを感じた。
明るく開放的な室内空間
乗り込んでみて印象的だったのが室内の明るさだ。昨今のクルマは衝突時に乗員を守るためにウェストラインが高くなっており、相対的に窓が小さくなっている。カングーは全高に余裕があるので、ウェストラインが高くなっても窓は大きく、その分明るく感じられたのだろう。おかげで窓からの視界も良好だ。
窓の大きさは室内の明るさだけでなく、車外も確認しやすく安全にも寄与しているのは間違いない。フロントサイドのクォーターウインドウや荷室の窓の大きさも良い塩梅だ。
低床かつ背が高い室内は非常にルーミー。後席はセンタートンネルの張り出しもないので3名乗車でも中央席が窮屈になることもない。シートも3座席ともに等しく、座り心地は良好だった。
商用車とはいえ、後席用のエアコン吹き出し口、シガーソケット電源、USB電源(タイプA)×2、小物入れ、シートバックにはポケットとドリンクホルダー付きのテーブルが備わっており、必要十分な装備と言えるだろう。
オーソドックスなインターフェースと実用的なユーティリティ
運転席に座ると、シフトレバーやパーキングスイッチ、スタートボタン、エアコン操作パネルの配置がとてもわかりやすく、初めて乗るクルマであっても戸惑うことはなかった。
特に昨今はエアコンの操作系をマルチファンクションディスプレイで操作するクルマもあるが、やはりわかりやすさ・使いやすさでいえばこのカングーのような物理スイッチが最強だと思う。
流石にナビゲーションとオーディオはスマートフォン連携のディスプレイ(8インチ)になっており、こちらの操作はタッチパネル式。とはいえ、パネルはマットになっており、指紋がつきにくいので高級感を演出するピアノブラック加飾よりも実用的でむしろこちらの方が良い。
低めのセンターコンソールはシガーソケット電源と、この限定車の装備としてスマートフォンワイレスチャージャーが装備されており、ETC車載器もこの位置に装着される。初めて乗るクルマだと、ETC車載器の位置がわからなかったりするのだが、これは非常にわかりやすくカードの出し入れもしやすいのでありがたい。目の届くところにあれば、カードの入れ忘れや抜き忘れも起きにくいのではないだろうか。
電源の充実ぶりはさすが最近のクルマ。シガーソケット電源(DC12V)やUSBが昨今主流になりつつあるタイプCではなく従来のタイプAなのも汎用性が高そうだ。
全席ヘッドスペースに設けられた大きな収納など、収納スペースもさすが商用車と感じさせる。
カングーならやっぱりアウトドア?ちょっと山に行ってみる
カングーといえばアウトドア志向のユーザーに人気がある。やはり荷物がしっかり積めて人も乗せられるという点がアウトドアなライフスタイルに最適なのだろう。さらに実用性だけじゃないフランス流のオシャレ感も人気の理由のようだ。
せっかくなのでそんなライフスタイル的な使い方も試してみた。
かといってそんなに構えることなく気軽に出かけられる雰囲気もこのカングーの良いところかもしれない。アウトドア雑誌に掲載されるような重装備ももちろん飲み込んでくれるのだろうが、簡単な道具を荷室に放り込んでフラリと出かける……そんなスタイルも悪くない。
3列シートミニバンと違い2列シートなので、荷室はタップリ。トノボードが付いているのも良い感じだ。荷室のみで755L、リヤシートを畳めば最大2800Lという容量に開口面積の広さはさすが商用車。カングーの特徴である左右異形の観音開き式リヤドアも、後方のスペースが少ない場合などでは特に重宝する。
ラゲッジルームにもシガーソケット電源が用意されており、荷室から電気が取れるのはアウトドアユース的にもありがたい。この電源や荷掛けフックが壁面から張り出さないように設置されているのは地味にありがたい工夫だ。こういった点が積載性の良さに効いてくる。
ワインディングや山での走りも満足度高し
アウトドアに乗っていくとなると、ワインディングを走ることになる。今回乗ったカングーは131ps/5000rpmの最高出力と24.5kgm/1600rpmの最大トルクを発揮する1333cc直列4気筒DOHCターボのガソリンエンジン車。絶対的なパワーという意味では……そもそもそういった目的のクルマではないが……物足りないかもしれないが、ターボによる豊なトルクが低回転から発生されるので、ワインディングでも過不足なく走ってくれた。
電子制御7速ATのシフト制御もワインディングでの走りを助けてくれる。マニュアルモードを駆使すれば細かくシフトを刻んで思うように走ることもできた。足回りもしなやかで欧州車的というかフランス車的というか、乗り心地と粘りが両立されていて実に気持ちよく走ってくれた。
気になる点があるとすれば今回試すことができなかったフル積載、フル乗車での走りくらいだろうか。
キャンプ場など、アウトドアフィールドへの最終アプローチは道が細かったり未舗装だったりすることも多い。今回も河原に降りていくことになったが、そんなシチュエーションでも扱いやすく、凹凸もしなやかに乗り越えてくれたように感じた。
フロントがマクファーソンストラット、リヤがトーションビームという至極オーソドックスなサスペンション構成ながら、しっかりとセッティングされているのだろう。石畳が多いヨーロッパの市街で荷物を倒さず崩さず運搬する……欧州系商用車の底力を見た思いがした。
街でも映える?ルージュカルマンM+カラーバンパー
今回乗ったカングーは150台限定の「ヴァリエテ」で、パーキングセンサーやパーキングアシスト、スマートフォンワイヤレスチャージャー、マルチルーフといった装備が追加されている。外観ではルーフレールの他に、専用ボディカラーのルージュカルマンMと17インチアロイホイールが大きな違いだ。
カングーはアウトドア志向のユーザーに人気があり、そういったイメージ紹介されることが多く、確かにカントリーな雰囲気がよく似合っている。しかし、このヴァリエテはルージュカルマンMという深いレッド系の専用色にアロイ(アルミ)ホイールを装着。しかもカラーバンパー仕様だ。
無塗装バンパーのワークホース感は確かにカングーのキャラクターに合っていて、しかもそれがよく似合っている。一方でカラーバンパーだと実用車感こそ薄れるものの、専用ボディカラーと合わせてとてもシックな雰囲気を漂わせる。
このスタイルならアウトドアやカントリーな雰囲気だけでなく街でも映えるのは間違いないだろう。
ルーフレールも積載性のアップはもちろんのこと、よりパーソナルユース感を演出してくれる装備だ。
これまでとは違ったイメージのカングーを発見
今回乗ることができたカングー・ヴァリエテは、よく知られているアウトドア志向な実用車であることを再認識した一方で、カラードバンパーの専用ボディカラーを纏ったことで、都会的で洒脱な雰囲気も備えたクルマだと認識させられた。カングーの実用性は魅力だが、実用車すぎるルックスは……というユーザーには最適なモデルと言えるだろう。
カングー・ヴァリエテ(限定150台) 型式:3BA-KFKH5H サイズ:全長4490mm×全幅1860mm×全高1860mm ホイールベース:2715mm 車両重量:1580kg エンジン型式:H5H型直列4気筒DOHC直噴ガソリンターボ 排気量:1333cc 最高出力:131ps(96kW)/5000 最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600rpm トランスミッション:電子制御7速AT 駆動方式:FF サスペンション(前/後):ストラット/トーションビーム タイヤ・ホイールサイズ:205/55R17 最小回転半径:5.6m 燃料タンク(油種):64L(ハイオク) 税込価格:427万円(オプション装着車:スマートフォンホルダー、フロアマットプレミアム) 限定車装備:専用ボディカラー(ルージュカルマンM)、パーキングセンサー(フロント・サイド・リヤ)、イージーパーキングアシスト、スマートフォンワイヤレスチャージャー、マルチルーフレール、17インチアロイホイール