“測る”技術で各分野のさまざまな開発を支える[小野測器]騒音・振動を筆頭にリアルタイム計測に注力

1950年代からすでにデジタル技術にこだわり、計測技術を磨き上げてきた小野測器。創業70年を迎えた同社は開発現場の困り事を解消するために、より高性能な計測機器を生み出すだけではなく新たな分野にも挑戦を続けている。

TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA) PHOTO:MFi/ONO SOKKI

小野測器は計測機器のリーディングカンパニーであり続けつつ、さらにセンシング、制御、データ処理といった各技術と、それらを融合したサービスを提供するユニークな存在へと進化している。「モビリティ社会を支える計測ソリューション」をテーマとして、この実現に貢献する製品群を「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」のブースで展示していた。

4月に発表されたばかりのローノイズマイクロホン「MI-1282M10」は、今回の展示会で一般へ初公開。従来では計測できなかった10db台の微小音(木の葉が触れ合う音より小さい)の計測が可能で、BEVなどを筆頭に車両の静音化がより進む中、新たに顕在化してきた微小レベルのノイズの出所を探る計測に使われる。

小野測器の技術を結集した業界最高水準のローノイズマイクロホン
ローノイズマイクロホン「MI-1282M10」は自己雑音レベルを徹底的に抑え、通常の計測用マイクロホンでは測定が難しい微小音にも対応。
マイクロホンアンプを必要としないため配線がシンプル化でき、測定準備の時間短縮も実現。
音の発生源を複数のマイクで取り囲むように配置して評価する「音響パワーレベル計測システム」を模したもの。

またワイヤレスで温度(と電圧)を計測できるコンパクトな計測モジュールも展示。これはドローンや冷蔵コンテナによる輸送物の状態を把握することが可能。物流システムへ正確な情報を集積することで万が一の輸送トラブルを未然に防ぐ効果が期待されている。

コンパクトで、ワイヤレスにセンシングする商品の新提案
「無線計測システム」は元々BEV用バッテリーの状態を測定するために開発され、温度と電圧の計測ができる。一番下が温度計測用モジュールで、熱電対を対象に取り付けて温度を計測する。取得したデータは無線でデータを飛ばすことができ、省配線で簡単に設置、計測ができるので、これを長距離輸送トラックやドローンの輸送物管理に活用しよう、という新提案だ。

さらに同社は昨年から、自社で購入した中国製BEVの音響・振動特性、バッテリーマネジメント、モーター挙動、熱マネなどを詳細に計測し、そのデータをOEMやサプライヤーに販売するベンチマーキングレポート事業をスタートさせているが、これをさらにアップグレード。新たに「GT-SUITEベンチマーキングモデル」も発表した。計測データをシステムシミュレーションツールのデファクトスタンダードであるGT-SUITE用のモデルとして構築し提供するというもので、多忙を究める開発現場での工数削減が期待できる。BEVで近年、特に注目が集まる熱マネジメントを対象としてまずはBYD・元PLUS(日本名ATTO3)の計測結果を元にモデル化。ベンチマーキングレポートと合わせて今後はさらに対象車種を拡大していく予定だ。

多大な労力が必要なベンチマーキングを自社で実施
小野測器は注目のBEVを自社で購入し様々なデータを計測、その結果を販売する業務をスタートしている。今回の「GT-SUITEベンチマーキングモデル」の発売にあたっては株式会社IDAJの協力でシミュレーションツールのモデル化を実施。冷媒の相変化まで考慮したデータを用意し、今夏の販売開始を予定している。

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