数ある軽自動車の中でも異彩を放つ孤高の存在「ホンダN-ONE」【最新軽自動車 車種別解説 HONDA N-ONE】

時のトレンドやインパクトには流されず独自の方向性を示してきた「ホンダ N-ONE」。20年にモデルチェンジが図られたものの、機構的には大きな進化を遂げつつ、エクステリアのデザインはそのまま、という確固たる信念が披露された。とはいえ6速MTやシックかつスポーティなモデルなどバリエーションを広げ、こだわりのポイントを明確にしている。
REPORT:岡本幸一郎(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:星野芽生

N-360風の個性派デザイン 軽快な「RS」の走りも魅力

多くの車種がひしめく軽自動車界の中でも、N-ONEほど異色の存在はない。販売台数はこの2年で年間2万台弱にとどまるが、印象的なデザインゆえ頻繁に見掛ける気がする。世に出て10年あまりが経過したホンダのNシリーズになくてはならない、独特の存在感をもつ一台だ。

エクステリア

ボディパネルはそのままにプラットフォームやパワートレインをアップデートしたため、遠目には先代と見間違えてしまいそうになるが、
LEDの灯火類が識別ポイントとなる。最小回転半径は4.5m〜4.8m。

丸/四角/台形」を基本のカタチとした、時代を超えて愛されるタイムレスなエクステリアデザインの由来となったのは「N360」。ホンダが1960年代終盤に四輪車に本格進出する皮切りとなった往年の名車である。また、人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとするホンダのクルマづくりの基本的な考え方である独自の「M・M思想(=マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想)」に基づく、ミニマルで心地良い室内空間も受け継いでいる。

乗降性

現行の2代目は登場の際、プラットフォームやパワートレインなど中身を新しくしながらも、外身はボディパネルをキャリーオーバーするという、前代未聞の手法がとられたのも話題となった。2024年2月時点でのバリエーションはシンプルな「オリジナル」、上質な装いの「プレミアム」系、スポーティで精悍な「RS」、「オリジナル」をベースに、都会的で洗練されたシックなデザインを纏う特別仕様車「STYLE+ URBAN」となっている。

インストルメントパネル

指針式のブラックメーターはクラシカルにも思えるが、スタイリングにマッチした雰囲気だ。デザイナーズハウスのようなウッド調の加飾パネルは特別仕様車の専用装備。

エンジンは、「オリジナル」と「プレミアム」には扱いやすくて低燃費なi-VTEC自然吸気エンジンが、「プレミアムツアラー」と「RS」にはパワフルなターボエンジンが搭載される。「RS」では6速MTが選べるのも特徴だ。節度感のある小気味良いシフトフィールのMTを駆使して、力強い加速フィールを意のままに楽しむことができるのがうれしい。CVTのシフト制御やサスペンションも専用にチューニングされており、ほどよく引き締まった足まわりで気負うことなくスポーティなドライビングテイストを味わうことができるのも「RS」ならではである。

居住性

それぞれのキャラクターに合わせてパワートレインやカラーコーディネートが差別化されているが、加飾に関するもの以外の装備の差はあまりない。初代ではふた通り選べた車高は、現行の2代目では初代でいうローダウン仕様のみとなった。これにより重心が低くなくなったことで、足まわりにも余裕ができて、快適な乗り心地を実現している。全高が高くなくても室内はそれほど狭くなく、後席の居住性も悪くない。もちろんNシリーズの特徴であるセンタータンクレイアウトを採用しており、後席の座面はチップアップさせることもできる。

うれしい装備

幅665㎜/奥行き415㎜/深さ160㎜(実測値)と余裕のある床下収納は、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトのメリットのひとつ。
月間販売台数     1702台(23年7月〜12月平均値)
現行型発表      20年11月(一部改良 22年8月))
WLTCモード燃費    23.0 ㎞/ℓ ※自然吸気のFF車 

ラゲッジルーム

メーターの端まで一体感をもたせた伸びやかなインパネや、くつろぎを感じられるようセパレートタイプを採用した前席のシートも特徴だ。初代の後期には存亡の危機も囁かれたが、販売台数は控えめでも、このままもち味を損なうことなく存在し続けてくれるよう願いたい。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。

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