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ざっくりわけると前期/後期
86/BRZはスバルで製造していることもあり、スバルの年次改良システムが採られた。WRX STIのようにほぼ1年ごとに少しずつ改良されていき、それぞれA型からB型、C型と呼ばれていくことになる。86/BRZの場合、ざっくりわけるとA/B/C/D型が前期型。E/F/G/H型が後期型になる。
ヘッドライトやテールランプなど見た目に大幅に変更を加えられたのは、この前期と後期に変わったタイミングだけだが、じつは毎年さまざまな箇所が少しずつ変更されている。
A型はのちのちバルブスプリングを改良するリコールが出ている。ということは、A型のみ異なるバルブスプリングだったということだろう。
詳細は不明だが、A型は切れ味鋭いハンドリングが特徴。エンジンもちょっとピーキーで高回転型なイメージ。正直中低速トルクは厚くない。ハンドリングもエンジンも鋭さ溢れるのがA型だったのだ。
B型C型は徐々にエンジンのフィーリングもマイルドになり、トルキーになった(カタログ値は200ps/205Nmで変わらず)。電動パワステがB型から徐々に変わっている。A型はアシスト量が弱く高負荷になるとステアリングが重くなる症状が頻発した。たとえば、鈴鹿サーキットの1コーナーに飛び込むとその先でステアリングがグッと重くなって切りにくく冷や汗をかくが、2コーナーを立ち上がった先は何事もなかったようにステアリングが軽い。
その部分はB型から改良されているが、E型以降はプログラムやコンピュータまで変わったらしく、まったく問題なくサーキットを走れるようになっている。そんなわけで、そこらへんに詳しいお店では前期にステアリングラックや制御のコンピュータなどをごっそり移植するのだとか。スーパー耐久のレース車両でも同様のことを行なっているというのは、聞いた話。
そして、じつはボルトがちょこちょこ変わっている。脚周りの取り付けボルトが徐々に太くなったり、傘が大きなものになったり、細かく変更が行なわれているのだ。そして信じられないかもしれないが、そんな小さなことでもちょっとずつハンドリングの剛性感が高まっている。
これは後期になるに従ってより多くの部分が変更されているが、もっといいものがある。ほぼ同じ構造のWRX STIにはもっと強固なボルトが使われていて、それを流用することでフィーリングアップが可能になるのだ。WRX STIだけでなく、86GRや86GRMNのボルトを使う技もある。
そして、D型は最初の大きな変更でリヤまわりのボディの鉄板が厚いものになった。これは明確にわかる差で挙動はマイルドになり、乗り心地はしっとりとした。
ボディ剛性はここまで大きな差になるのかと体感できる貴重なチャンスでもあったのがD型への年次改良だったのだ。そして、後期型へ進化するのだが、この後期がまた驚くべき進化だったのだ。
ビックマイナーチェンジを受けた後期型
E型からは86KOUKIと呼ばれる。年次改良とともにちゃんとしたマイナーチェンジが行なわれた。
それによってデザインも一新。ヘッドライトやテールライトも変わり、メーター内のマルチファンクションディスプレイに油圧が表示できるなど、かなり大幅な変更が行なわれた(GTグレード)。
ボディはリヤ周りの板厚がD型からアップされ、マイルドな乗り味に変わったが、E型からはさらにスポット溶接の箇所が増えたりと全面的に改良が施された。それによって乗り心地は明らかに変わった。
「え、86ってこんなに高級車だったっけ?」と思うほど、静かになめらかに快適になったのだ。
F型など後期後半になるにつれ、ステアリングラックの支持剛性アップなども行なわれ、ステアリングフィールもよりダイレクトなものになっている。
エンジンは200psから207psになったが、そんなに大きな差かなぁというのが正直なところ。しかし中間トルクは確実にアップ(最大トルクは205Nmから212Nmにアップしている)。
ファイナルギヤも前期の4.1から4.3になり、加速力も向上。高速道路で不快になるほどショートギヤではないし、街乗りでも5速を多用するほどでもないので、全域で使いやすくなった。
快適装備としてはGTグレードにはAT/MTともにクルーズコントロールが標準装備になった。アダプティブではないのでただアクセルを踏まずに済むだけだが、高速道路で足が疲れたときには重宝する。
GR86ではAT車にはアダプティブクルーズコントロールが装着されるとのことだが、MT車にも早く付いてほしいなぁ~というのが正直なところ。
いまから中古で楽しむなら?
ではこの86。A~H型まで8種類あるわけだがどれが「買い」かと問われると難しいところ。クルマとしての仕上がりは抜群にE型以降の後期である。別のクルマか!? と思うほどよくできている。しかし、後期は中古車市場でも価格が高く、お得感はあまりない。
前期は、表現を選ばなければちょっとチープな乗り味。言葉を選べばシャープさがあるというか、切れ味はあるタイプ。こちらも決して安くはなっていないが、後期に比べればリーズナブル。
筆者がいまから楽しむかたにオススメしたいのは、安めの前期を買って、ボルト類やステアリングのコンピュータなどを好みの型のものにブラッシュアップして、自分だけの86を作っていくという方法。
ひとりひとりが自分のオリジナル86を作っていく。これがまさに86の醍醐味であり、トヨタ自動車が描いた86の未来なのではないかと思う。
そして、それにまんまと乗せられて、そして楽しいカーライフを送ることになっているのである。まさに86である。ハチロクが86になる。その道筋が名前のとおり作られていたのだ。
さて、足早に全4回でお届けした86/BRZ進化論、いかがでしたか。さぁ、僕はこれからGR86のお迎えです(GR86を注文したので)。これからも僕の86ライフは続いていきます。ではまた、お目にかかりましょう!