【火曜カーデザイン特集】 スバルWRX S4の”あの”デザインに迫ってみる

WRX S4のあの黒い部分は ”空力” の証か!?

まだ新型WRXの黒い部分のデザインに違和感のある方は、相当数いるのだと思う。それでも、その狙いに迫っていけば、なるほどと納得できることもあるはずだ。ここではそんな、形から見えるデザインの理由について考えてみた。

WRX S4にはリヤバンパーがない!?

新型レヴォーグの登場によって、大いに期待されたセダンモデルWRX S4の登場。ところが、登場した新型WRX S4はあまりにも大胆で、個性的。賛否両論となっているようだ。やはり大きなポイントは、ブラックアウトされたホイールアーチだ。

このブラックアウトされたホイールアーチに関しては、コンセプトカーとして2014年から予告されていたことだ、との報告は以前にもレポートさせてもらったのだが、それではなぜこのように表現されているのか、について考えてみたい。

新型WRX S4(右)とコンセプトカーVIZUV PERFORMANCE CONCEPT(左)の比較。新型WRX S4の予告であったことがわかる。

そこで、必要となるのが全体を見て回ることだ。フロント部分にもかなり大胆なブラックアウト処理は施されているが、何より象徴的なのがリヤまわりだ。そこで何か気がつかないだろうか…

そう、このWRXにはリヤバンパーがないのだ! 実際にはあるのだが、ないように見えるのが、このWRXのデザインの最大のポイントだ。

バンパーがない! とも思える新型WRX S4のリヤまわり。

後ろから見ると、下に大きくブラックアウト部分が張り出している。ここが最大全長部分なので、ブラックアウトされたあたりはバンパーになる。しかしボディカラーではないことから、バンパーに見えないのも事実。

先代のWRX S4も大きなブラックアウトのテールエンドを持っていたが、ここまで大胆ではなかった。新型のそれは言ってみるならばフェラーリやランボルギーニなどにも多く使われる、スポーツカーやスーパーカーの造形。ボディ下の空気の整流を行うための、効率的な排出を促すディフューザーをテールエンドに採用しているのだ。

新型BRZのリヤエンド。やはり床下の空気を排出するディフューザー的な造形が
採用されている。現代的スポーツカーの一つの証でもある。

そうして見ると、WRXのこの形には、なるほど、と思える部分も出てくる。フロントバンパーのインレット部分、サイドのオーバーフェンダー状の部分にアウトレットを配していたり、整流に対する配慮が多く見受けられる。実はそれらが全部、黒い部分に集約されているのだ。

つまりWRX S4にとって、アンダーボディを取り囲むブラック部分は、空力性能を高めるために付加された部分でもある。

WRXならでは独自性を理由ある形で実現

独立したセダンモデルとはいうものの、レヴォーグと共用部分の多い中でWRXとしてのより個性的な造形を生み出すには、理由がなければならない。ただの形だけの遊びでは物足りないし、単なるエアロパーツというのも当たり前。メーカーでしかできない性能向上を考えた時に、技術とデザインの融合した形が、このスタイルとなったのだと思う。

スバルによる空力性能の解説。ブラック部分に改善策が盛り込まれる。また性能向上のためにアンダーカバーも拡大されている。
フロントフェンダーアーチのエアアウトレットが後方(右側)に見える。車体から渦を遠ざけることで安定性を向上させる。またブラックパネルの表面には空力テクスチャーを用いて、車体まわりの空気の剥離を抑制している。ただのブラックパネルではないところがスバルらしい。
こちらがWRX s4に与えられた空力の概念図。
床下部の空気の流れのイメージ。

そんなことを考えながら、もう一度WRX S4のスタイルを見てみよう。平凡なセダンスタイルに、ありえないほどの大胆なリヤエンド。そしてホイールアーチにあるサイド・エアアウトレット。スーパースポーツの体幹を持ちながら、その上に4ドアのボディスキンを乗せてしまったような造形は、SUVテイストとは違う存在にも見えてくる。

WRX S4には空力的配慮がふんだんに採用された。それを象徴的にブラックアウトの新設部分として表現している。

新型WRX S4は、レヴォーグでは到底手に入れることのできないアグレッシブさを手にしたのだと思う。それが好きか嫌いかは、あなた次第ですけども。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…