ちょっと地味? ホンダ「オルティア」、存在感なく終わったコンパクトなステーションワゴンは247.9万円【今日は何の日?2月21日】

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日2月21日は、ホンダのステーションワゴン「オルティア」が誕生した日だ。オルティアは、前年に登場した6代目シビックベースのコンパクトなステーションワゴンだが、当時のステーションワゴン人気の中で存在感を上手くアピールできなかった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・ホンダ オルティアのすべて、‘97ステーションワゴンのすべて、ホンダ エアウェイブのすべて、ホンダ フィットシャトルのすべて

■シビックシャトルの後継として登場したオルティア

1996(平成8)年2月21日、ホンダのコンパクトステーションワゴンの「オルティア」がデビュー(発売は3月1日)した。オルティアは、1983年に登場した「シビックシャトル」の実質的な後継車で、コンパクトながら広い室内と荷室スペースを持つステーションワゴンである。

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」

オルティアの前身にあたるシビックシャトル

シビックシャトルは、1983年に3代目「シビック」通称ワンダーシビックのシャシーとパワートレインを使って、ちょうど人気絶頂だったトールボーイ「シティ」をひと回り大きくしたようなワゴンだった。

ホンダ「シビックシャトル」
1984年にデビューしたホンダ「シビックシャトル」

全長と全幅はシビックと同等だが、全高は150mm高くなっている。ワゴン化して伸びた分、室内は2.0Lクラスセダンと同等の広さを持ち、特に後部座席スペースは圧倒的に広く、後席を畳み込めば広いラゲッジスペースも確保できた。

パワートレインは、1.3L&1.5L直4 SOHCのキャブ仕様と電子噴射仕様の3種エンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式はFF、翌年パートタイム4WDが追加された。

シビックシャトルは、当時流行り始めていたRV感覚あふれるファミリーワゴンとして、一定の人気を得ることに成功した。

ステーションワゴンが流行り始めた頃に登場したオルティア

トヨタのステーションワゴン「カルディナ」
1992年にデビューしたトヨタのステーションワゴン「カルディナ」
スバル2代目「レガシィ・ツーリングワゴン」
1993年にデビューして大ヒットしたスバル2代目「レガシィ・ツーリングワゴン」

オルティアが発表されたのは、1994年3月のこの日だが、発売は3月1日から始まった。1992年には、トヨタ「カルディナ」、1993年には大ヒットしたスバルの2代目「レガシィツーリングワゴン」、1996年には三菱「レグナム」と日産「ステージア」が登場し、ステーションワゴンの人気が高まっていた。そのような状況下でオルティアは、6代目シビックのシャシーをベースに開発されたコンパクトサイズのステーションワゴンだった。

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」

開発コンセプトは、スポーツ・ユーティリティ・ワゴンで、ワゴンらしく優れた使い勝手を生かして、レジャーにも日常ユースにも使える便利な一台という位置付けだった。デザインは、大型ヘッドライトによるクリーンなフロントフェイスを持ち、全体的にプレーンにまとめられ、短いフロントオーバーハングからは取り回しの良さがうかがえた。

ホンダ「オルティア」のリアビュー
ホンダ「オルティア」のリアビュー

パワートレインは、新開発の1.8L(140ps)&2.0L(145ps)直4 DOHCの2種エンジンと5速MT(1.8Lのみ)および4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFとホンダ独自開発のデュアルポンプ式リアルタイム4WDが用意された。

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」の広い室内&荷室スペース
ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」の広い室内&荷室スペース
ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」の広い室内&荷室スペース
ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」の広い室内&荷室スペース

車両価格は、2.0L搭載車で179万円(FF)/197万円(4WD)。当時の大卒初任給は19.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約212万円/234万円に相当する。

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」のコクピット

オルティアの持つファミリー志向のマルチパーパスなワゴンのイメージが、当時人気のハイパワーのステーションワゴンとは異なり、またデザインが全体的に地味だったこともあり、存在感を示せず2002年に販売を終えた。

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」の荷室エリア

ホンダからステーションワゴンが消えた

ホンダ「エアウェイブ」
ホンダ・オルティアの後を継いだ2005年登場の「エアウェイブ」

ホンダのコンパクトステーションワゴンとしてオルティアの後を継いだのは、2005年の「エアウェイブ」である。その名の通り、大型のガラスルーフの“スカイルーフ”が特徴だった。また、車室スペースの広さと巧みなシートアレンジも魅力だったが、2010年に生産を終えた。

ホンダ「フィットシャトル」
2011年、ホンダ2代目フィットの派生車として登場した「フィットシャトル」

続いたのが、2011年に2代目フィットの派生車として登場した「フィットシャトル」で、フィット同様センタータンクレイアウトを採用。ハイブリッド車を用意して、燃費の良さがアピールポイントのひとつだった。

そのフィットシャトルは2015年に生産を終え、2ヶ月後に登場した「シャトル」にバトンを渡した。広い車室と荷室を持ち、それでいて扱いやすいマルチユースのコンパクトステーションワゴンとして、また300万円を切るリーズナブルな価格も支持され、堅調な販売を記録した。

しかし、この頃になると日本市場はミニバンやSUVの台頭によってステーションワゴンの人気は低迷し、シャトルも2022年8月に生産を終了した。この結果、ホンダの商品ラインナップからステーションワゴンが消えてしまったのだ

ホンダ「オルティア」
ホンダ「オルティア」

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ステーションワゴンの国内市場が縮小した中で、国産のステーションワゴンは数えるほどしかない。かつてのステーションワゴンを求めていたユーザーの多くが、ミニバンとSUVに流れてしまったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…