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段差のない全長2mの完全フルフラットデッキ


開発担当者はエステートの開発で最もこだわった点を「荷室のユーティリティをいかに高めるか」だったと話す。「アクティブライフを豊かにするよきパートナーとなるように、ワーキンググループを立ち上げ、仲間とともに議論を重ねました」と。


ワーキンググループが掲げたテーマは次の3つだ。
①“時”と“場所”を選ばない「機能性」
②“スマート”に楽しむ「余裕」
③クラウンに“相応しい”「洗練、上質」
試行錯誤を重ねながらアイデアを出し、ブラッシュアップさせながら具現化した一例が、段差のない全長2mの完全フルフラットデッキである。これを実現するため、リヤ席のシートバックにトヨタ初となる拡張ボードを設けた(全車に標準設定)。車中泊するもよし、出先でくつろぐもよし、シチュエーションに合わせた使い方が可能だ。
さらに、ラゲッジスペースの使い勝手を高めるため、デッキテーブルとデッキチェアを設定している。見栄えや収納性、使いやすさにこだわった装備で、「フルフラットデッキと合わせ、アクティブライフを思う存分楽しんでいただきたい」という思いが込められている。
パワートレーンはHEVとPHEVの二本立て



走りにこだわっているのは、クラウン群のほかのボディタイプと同様。とくに「ストレスフリー」の走りにこだわっており、直進安定性を重視した。「どっしり、真っ直ぐ走れないと修正操舵が必要になり、長距離・長時間走行ではドライバーの疲労蓄積になる。そのため、後輪操舵を行なうDRSや、ステアリングフィールにこだわりながら味つけを行ないました」とのこと。
快適性にもこだわっており、「路面入力に対してドライバーの目線が動かされると、これもドライバーの疲労蓄積につながる。そこで、いかにフラットにクルマの挙動を抑えられるか。そのためにショックアブソーバーやコイルスプリングのチューニングにもこだわりながら開発を進めた」という。
得意なのは真っ直ぐ走るだけではない。曲がるのも得意な仕立てとした。「クラウンならではのドライバーズカーとしての走りの楽しさを大切にしながら、気持ち良く曲がるクルマに仕上げた」という。

モーター:
フロント 3NM型交流同期モーター
最高出力119.6ps(88kW)
最大トルク202Nm
リヤモーター 4NM型交流同期モーター
最高出力54.4ps(40kW)
最大トルク121Nm

パワートレーンはハイブリッド(HEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)の2種類だ。間近ではあるが発売前なので、技術の詳細は発表されていない。エステートはクロスオーバーやスポーツと同じGA-Kプラットフォームを共用している点を考えると、HEVはクロスオーバーやスポーツのHEVと同様のハードウェア構成とスペック、PHEVはスポーツのPHEVと同様のハードウェア構成とスペックと考えていいだろう。
すなわち、エンジンはA25A-FXS型の2.5L直列4気筒自然吸気。HEV、PHEVともフロントとリヤにモーターを搭載するE-Fourだ。HEV、PHEVとも「多人数・多積載でも余裕の走りを実現する」としながら、HEVについては「スマートで実用的」、PHEVについては「アクティブで上質」と表現する。PHEVはカタログ値で89kmのEV走行が可能。普通充電に加え急速充電が可能で、外部給電も可能。より多様な使い方に対応する。
最新最良のクラウンがエステート
そんなクラウンクロスオーバーのプロトタイプに、富士スピードウェイのショートコースで対面した。第一印象は「カッコイイ」である。クラウン群のなかでも群を抜いてスタイリッシュに感じた。クロスオーバーもスポーツもセダンもスタイリングが好評だというが、エステートも間違いなく市場で高い評価を受けるだろう。純粋に、カッコイイクルマである。



スリーサイズは発表されており、全長×全幅×全高は4930×1880×1620mmだ。ホイールベースは2850mmである。全長とホイールベースはクロスオーバーと同じ。エステートのほうが40mm幅広で、80mm背が高い。クロスオーバーのようにルーフがリヤで傾斜せず一直線に後端まで伸びているため、当然のことながらボリュームは大きい。だが、デザインの妙なのだろう、疾走感はエステートのほうが上だと感じた。
インテリアの構成はクラウン群の他のボディタイプと基本的には共通。質が高く、機能的で使いやすそうだ。全長2mのフルフラットデッキを確かめてみたが、フルフラットにする手順が簡単なうえに、出現したスペースは圧巻である。何をしようか、どう過ごそうかと夢がふくらむ空間だ。


HEVとPHEVそれぞれ、ショートコースを2周だけ日常域相当の車速で走行した。HEVはクロスオーバー発売直後の試乗時に比べてEV走行からハイブリッド走行に移行した際のエンジンのノイズが控え目になっているように感じられた。真相を開発者に確かめてみると、「手を加えている」とのだった。
「我々はスパイラルアップ活動と呼んでいますが、モデルライフを通じて熟成させていく開発をしています。先行するクロスオーバー、スポーツ、セダンからの学びがあるので、順次アップデートを入れています。乗り心地やNV(振動・騒音)について、クロスオーバーからスポーツ発売(2023年)までの1年ちょっとの間に入れたのもあり、クロスオーバーの年次改良(2024年)に入れたのもある。それらが全部エステートに入っています」
つまり、最新最良のクラウンがエステートというわけだ(エステートに入った最新のノウハウや技術は、他のボディタイプにも順次投入されていく。スパイラルアップに終わりはない)。

ショートコースとはいえサーキットなので曲がりくねっており、エステートが得意とする直進安定性をじっくり確認する機会はなかった(この点については別の機会で確認したい)。いっぽうで、「気持ちよく曲がる」についてはしっかり確認でき、そのとおりである。ラグジュアリーカーらしい、安心感をともなったしなやかな動きが印象に残った。PHEVのほうがしっかり感が強いのは、路面の状況や運転操作に応じてショックアブソーバー(ダンパー)の減衰力を制御するAVS(PHEVに標準装備)の効果が大きいようである。
クラウン群の最後にエステートを登場させたのは、「狙ったわけではない」というが、最後に魅力的なバリエーションが出てきた。クロスオーバーが街を走り始めた当初は道行く人の視線を多く集めたが、エステートもそんな存在になりそうだ。