ダイハツ初の本格4輪車「コンパーノ・バン/ワゴン」は46.6万円の商用車からスタート【今日は何の日?4月5日】

ダイハツ「コンパーノ ワゴン」
ダイハツ「コンパーノ ワゴン」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日4月5日は、ダイハツの「コンパーノ・バン/ワゴン」が誕生した日だ。戦中・戦後に3輪トラックで成功したダイハツが満を持して4輪事業に参入。最初に投入されたのは、当時売れ筋だった商用車のバンと乗用車系ワゴンだった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・国産傑作車のすべて、60年代日本車のすべて、AUTOSPORT

■ダイハツ初の本格4輪車となったコンパーノ・バン/ワゴン

1963(昭和37)年4月5日、戦中・戦後に3輪トラックで成功したダイハツは、本格的な4輪車として「コンパーノ・バン/ワゴン」発売した。当時は、まだマイカーブームが盛り上がる前であり、さまざまな用途に使えるバン/ワゴンから販売をスタートしたのだ。

ダイハツ「コンパーノ バン」
ダイハツ「コンパーノ バン」

人気の3輪トラックから4輪事業に進出したダイハツ

1907年に設立された発動機製造株式会社から始まったダイハツだが、1920年にはディーゼルエンジンとガソリンエンジンの開発に取り組み、1930年に自社製エンジンを搭載した3輪自動車の「HA型」を発売して、自動車事業に参入。当時まだ4輪車は高価で、3輪車なら荷台に2つの車輪を付けてバイクでけん引でき、操舵や駆動システムは2輪車用が使えるため価格が抑えられたのだ。

ダイハツ「ミゼット」
ダイハツ「ミゼット」

戦中・戦後に、3輪トラックの需要が急速に高まり、これに応えてダイハツは急成長。戦後1957年には、街中の荷物の運送や農家の手足として重宝された小型3輪トラック「ミゼット」が大ヒットして、ダイハツの名は一般市民にも広く知れ渡った。

ダイハツ「ミゼット」
ダイハツ「ミゼット」

3輪トラックで成功して技術のノウハウを得たダイハツは、1960年代に入って高度経済成長とともに急成長し始めた4輪自動車、特に人気を獲得していた小型乗用車の開発に着手した。

ダイハツ「ミゼット」
ダイハツ「ミゼット」1人乗りのDA型
ダイハツ「ミゼット」
ダイハツ「ミゼット」

乗用車の前に広く人気のあった商用車バンから発売開始

コンパーノ1000 ワゴン
ダイハツ「コンパーノ ワゴン」。画像は1966年発売の「コンパーノ1000 ワゴン」

1960年代初頭はまだマイカーブームが到来しておらず、オーナードライバーの多くは商店などを経営する自営業者だった。日頃は仕事で使えて、休日にはファミリーカーとしても使える用途の広いクルマ、すなわちライトバンやワゴンが好まれたのだ。そのような状況を踏まえて、ダイハツはまず1963年4月のこの日に、ライトバンとワゴンから発売をスタートさせた。

ダイハツ「コンパーノ 2ドアクーペ」
ダイハツ「コンパーノ 2ドアクーペ」

コンパーノのデザインについては、イタリアの著名なデザイナーであるカロッツェリア アルフレード・ヴィニャーレ (Carrozzeria Alfredo Vignale)に依頼した。ヴィニャーレはフィアットやアルファロメオ、フェラーリなどのスペシャルモデルを手掛けて名声を得ていた。スポーティなフロントマスクとスタイリッシュで伸びやかなサイドビュー、シャープなテールカットなどが特徴で、イタリア車の雰囲気が漂っていた。

ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 4ドア」のフロントシート
ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 4ドア」のフロントシート

基本構造は耐久信頼性の高いラダーブレーム構造を採用し、パワートレインは最高出力41ps/最大トルク6.5kgmを発揮する800cc直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせで、駆動方式はFR。最高速度は、110km/hを記録した。

ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 4ドア」のリヤシート
ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 4ドア」のリヤシート

車両価格は、標準グレード46.6万円/デラックス49.0万円に設定。当時の大卒初任給は、1.9万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約564万円/593万円に相当する。

ダイハツ「コンパーノ ワゴン」
ダイハツ「コンパーノ ワゴン」

続いて待望のセダン、お洒落なオープンモデルを追加

ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 2ドア」
ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 2ドア」

コンパーノは翌年1964年2月、小型車「コンパーノ・ベルリーナ」を発売。当時アメ車風デザインのクルマが多い中、お洒落なイタ車風のベルリーナは大きな注目を集めた。

ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 4ドア」
ダイハツ「コンパーノ ベルリーナ 4ドア」

パワートレインは、バン/ワゴンと同じ800cc直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ。お洒落なスタイリングとFRの軽快な走りをアピールしたベルリーナは、好調な販売でスタートを切った。ところが、2年後1966年に日産自動車「サニー」とトヨタ「カローラ」が登場してアッという間に小型車市場を席巻したため、ベルリーナの人気は減速してしまった。

ダイハツ「コンパーノ スパイダー」に搭載される65ps/960c 水冷直4エンジン
ダイハツ「コンパーノ スパイダー」に搭載される65ps/960c 水冷直4エンジン

ちなみに、コンパーノ・ベルリーナの標準グレードの価格は、49.8万円、対するサニー41.0万円、カローラ43.2万円なので15%以上高額だったことも販売の足を引っぱった。

コンパーノ スパイダー
1965年にデビューしたダイハツ「コンパーノ スパイダー」

続いて1965年4月には、オープンモデル「コンパーノ・スパイダー」が登場。スパイダーは、ベルリーナのルーフを取り去り、収納可能なソフトトップを持った4人乗りのオープンスポーツカー。スポーツモデルという位置づけから、エンジンは800ccから1.0Lに拡大した直4 OHVに換装して最高出力は65psへ向上。最高速145km/h、0→400m加速18.5秒と、当時のスポーツカーとしては十分な性能を発揮した。

車両価格は69.5万円に設定。スパイダーは、大ヒットにはならなかったが、イタリア映画に出てくるようなお洒落なスタイルが通の間では一目置かれる“粋なクルマ“として、一定の人気を獲得した。

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ダイハツが満を持して投入したコンパーノシリーズは、お洒落なデザインは評価されたものの、ラダーフレームなど基本設計が古すぎたことや価格が高かったことに加えて、何よりもカローラとサニーの存在が大きく影響したように思う。特に日産とトヨタが熾烈な販売競争する中で、新参のダイハツは販売力で厳しい状況に晒されたことは疑いようがない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…