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輸送艦「にほんばれ」引き渡し式
中谷防衛大臣より、初代群司令となる馬場公世1等陸佐に隊旗が授与される。それを見つめるのは海上輸送群に所属する陸・海の隊員たちだ。輸送艦部隊でありながら、現在の人員124名の大半は陸の隊員で占められ、群司令である馬場1佐も陸上自衛官だ。陸・海・空の枠を超えた部隊編成や連携を、専門的に「統合(Joint)」と言い、現代戦には不可欠の要素となっているが、まさに海上輸送群は陸・海の「統合部隊」であり、中谷大臣からも「(陸・海の隊員が)力をあわせて海上輸送」にあたる海上輸送群は「新しい時代の統合運用の“さきがけ”」であるとの激励の言葉があった。


この日、編成式典(編成完結式)とあわせて「にほんばれ」の引き渡し式(造船会社から防衛省・自衛隊への引き渡し)も行なわれた。艦首にランプウェイ(渡し板)を持ち、海岸に直接乗り上げて車両や物資を陸揚げする「ビーチング」能力を持った艦であり、大きな港湾施設のない離島にも、物資を輸送することができることが最大の特徴だ。

艦内は、まるでフェリーみたい?
編成完結式に続いて、「にほんばれ」の艦内が公開された。艦の大部分を占めているのが車両・物資を積み込むためのスペースであり、車両なら十数両、20フィート・コンテナは十数個を積載できるという。この部分は“大きな箱”のような構造であり、艦首側にビーチングのためのドアとランプウェイを持つ。また、海が荒れている場合は大波により海水が入ってきてしまうため、両側に排水用の開口部が設けられている。


また、艦尾側には大きな錨が設置されている。この錨はビーチングする際、事前に海中に投下・固定しておき、離岸するとき錨鎖(チェーン)を巻き上げることで船体を海側に引き戻す役割を持つ。これがなければ、艦は海岸に乗り上げたままニッチもサッチもいかなくなってしまうのだ。続いて、艦内を案内してもらったが、一般的な商船と同様のつくりになっており、護衛艦的な内装との違いに驚かされた。本艦はあくまで非武装の輸送用船舶なのである。

現時点で海上輸送群の所属輸送艦は「にほんばれ」(基準排水量2400トン)と「ようこう」(同3500トン)の2隻のみだが、2028年までに合計10隻体制を目指している。これまで海上自衛隊が輸送艦「おおすみ」型(同8900トン)を3隻持つだけだったことを考えると、自衛隊の海上輸送力は飛躍的に増強されると言えるだろう。