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■ダイハツからのOEM供給でトヨタ「キャミ」デビュー
1999(平成11)年5月17日、トヨタのコンパクトカー「キャミ」がデビューした。キャミは、その2年前に誕生したダイハツ「テリオス」のOEM車であり、フルタイム4WDを搭載した走破性に優れたコンパクトSUVだが、キャミは華やかなボディカラーを用意してアクティブな若者、特に女性をターゲットに都会派SUVとして売り出した。

キャミのOEM供給元であるダイハツのテリオス
テリオスの源流は、1974年に誕生した「タフト」である。タフトは、ラダーフレームに4輪リーフリジッドアクスル式サスペンション、パートタイム4WDを採用したコンパクトな本格オフローダーだった。1980年、エンジンを2.5L直4ディーゼルエンジンとトヨタ製の1.6L直4 SOHCガソリンエンジンに換装して、トヨタは「ブリザード」の名前でOEM車として販売を開始した。この頃から、ダイハツのコンパクトサイズのオフロード4WDやSUVを、トヨタにモデル名を変えてOEM供給するという関係が始まった。

1984年にタフトはフルモデルチェンジによって、車名を「ラガー」に変更。トヨタには引き続き、ブリザードの名前でOEM供給された。さらに1990年にはラガーは「ロッキー」へと名前もデザインも一新したが、このモデルはトヨタへはOEM供給されなかった。

その後、ダイハツがSUV市場に参入したのは、1997年のこと。ボディ構造をモノコックに変え、名前も新たに「テリオス」と変更。2年後の1999年5月のこの日、トヨタへ再びOEM供給され、ここにキャミが誕生した。

テリオスよりソフトにして都会派SUVとして売り出したキャミ

テリオス/キャミは、コンパクトSUVのなかでも小振りなSUVだ。キャミとテリオスの違いはエンブレム程度。キャミは全車ABSを標準装備していたが、基本的には同一モデルである。ただし、キャミは都会的で主なターゲットを女性にしていたこともあり、ピュアレッドやマリンブルーといった華やかなカラーリングが採用された。

ボディサイズは、全長3785mm×全幅1555mm×全高1760mmと、車高は高いが初代ホンダ「フィット」よりも一回り小さく扱いやすいコンパクトSUVで、車高が高い分、着座位置が高く、視界の良さがSUVらしさを演出した。
パワートレインは、最高出力92ps/最大トルク11.0kgmを発揮する1.3L直4 SOHCエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、前後車両重量配分に優れたエンジン縦置きFRレイアウトでセンターデフ付フルタイム4WDと本格的だった。

キャミの車両価格は、標準グレードが132.8万円。エアロバージョンも用意され、こちらは153.6万に設定された。当時の大卒初任給は、19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で標準グレードが約155万円に相当する。

一見すると、コンパクトで可愛い雰囲気のキャミだが、実際は本格的なフルタイム4WDを装備した高い走破性を持つジャストサイズのキャミは、ターゲットであるアクティブな女性だけでなく、オフロード好きの男性からも支持され一定の人気は得られた。
キャミは後にラッシュ、現行ライズへと進化

2006年には、テリオスの後継車は「ビーゴ」と名乗り、トヨタはOEM車「ラッシュ」の車名で販売。スタイリングは初代「RAV4」を小さくしたようなフォルムで、ボディはキャミ同様に強靭なビルトインフレーム式モノコック構造を採用し、コンパクトながら本格オフローダーを継承した。

デビュー当時は好調な売れ行きを見せたラッシュだが、ソフトな都会派SUV人気が高まったため、徐々に人気に陰りが見え始め、2016年に約10年のモデルライフに終止符を打った。ヒットモデルではなかったが、アウトドアを楽しむ若者からは支持された。

そして2019年11月、約3年の空白を経て、ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」の兄弟車という形で復活を果たした。ロッキー/ライズは、燃費を重視してシリーズハイブリッド“e-SMARTハイブリッド”を搭載し、4WDも走破性よりも走行安定性に振った電子制御4WDとした。

販売力の差からトヨタのライズの方が台数面で大きく優っているが、ダイハツのロッキーも堅調な販売を続けている。
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「タフト(ダイハツ)/ブリザード(トヨタ))から始まったトヨタとダイハツのOEMで作り上げられたSUVは、「テリオス/キャミ」を経由して現行の「ロッキー/ライズ」まで大きく進化を見せているが、都市部でも扱いやすいジャストサイズなボディと確かな走行を実現する4WDという伝統は、継承されている。
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