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■世界初可変容量(VG)ターボを追加したY30型セドリック
1985(平成60)年6月18日、日産自動車は2年前にモデルチェンジした6代目「セドリック(Y30型)」に、ジェットターボと称した可変容量ターボを追加した。可変容量ターボとは、タービンホイールの上流のノズル面積を可変化することで、回転数に応じて最適な過給圧になるように設定できるターボである。

高級車クラウンに対抗して誕生した日産セドリック

初代(30型)セドリックは、1955年に誕生した純国産高級車のトヨタ「トヨペットクラウン」に対抗して、1960年にデビューした。日産が初めて独自開発した6人乗りの高級セダンで、縦目4灯のフロントマスクとAピラーを前傾させたパノラミックウインドウなどアメ車風のスタイリングが特徴だった。

モノコックボディによって車重を1195kgに抑えながら剛性を高め、さらに足回りはフロントがダブルウイッシュボーン/コイル、リアは3枚リーフ/リジッドサスペンションを装備して高級車らしい乗り心地を実現。パワートレインは、最高出力71psを発揮する1.5L直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ。

その後、セドリックはモデルチェンジしながら日本を代表する高級車としてクラウンと人気を2分する一方で、国産車初となる先進技術を数多く採用した。1979年10月には、5代目(430型)「セドリック」に、国内乗用車として初のターボチャージャーエンジンを搭載。さらに同じく国産車初の電子制御燃料噴射(日産の呼称EGI)エンジンを搭載したモデルが登場した。
国産車初のV型エンジンを搭載した6代目セドリック

1983年6月に、セドリックは6代目(Y30型)に移行した。クリーンな直線基調の基本的なスタイリングと3種のボディバリエーション(4ドアセダン、4ドアハードトップ、4ドアワゴン)は先代(430型)を踏襲したが、エンジンやサスペンションなど大幅に変更し、メカニズムの共通性はほとんどない。

注目は、それまでの直列4気筒&6気筒エンジンから、国産乗用車初のV型6気筒エンジンが搭載されたこと。最高出力180ps/最大トルク25.5kgmを発揮する3.0L V6 SOHC(VG30E)を筆頭に、170ps/22.0kgmを発揮する2.0L V6 SOHCターボ(VG20ET)、130psの同NAエンジンに加えて、3.0L直6 SOHCディーゼルの4種。トランスミッションは、4速ATと4速/5速MTで、駆動方式はエンジン縦置きのFRである。
その後、同年6月に、最高出力230ps/最大トルク34kgmを発揮する3.0L V6 SOHCターボ(VG30ET型)エンジンを搭載した「V30ターボブロアム」と「V30ターボブロアムVIP」が追加され、V6エンジンのラインナップの充実が図られた。
マイナーチェンジで可変容量ターボエンジンが登場

1985年6月のこの日、マイナーチェンジが実施され、ここでもエンジンのパワーアップが図られた。従来の2.0L V6ターボエンジン(VG20GT)に、新たに世界初となる可変容量ターボが採用されたのだ。日産で「ジェットターボ」と呼ばれた可変容量ターボは、最高出力180ps/最大トルク22.5kgmを発揮、従来のターボエンジンよりも10ps/0.5kgm向上した。車両価格は、標準ターボの308万円に対して324.3万円と16.3万円高額に設定。当時の大卒初任給は14万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でジェットターボモデルは約533万円に相当する。

可変容量ターボは、一般にはVGT(Variable Geometry Turbo:可変ジオメタリーターボ)あるいはVNT(Variable Nozzle Turbo:可変ノズルターボ)と呼ばれる。これは、ターボチャージャーの課題であるターボラグを解消して全域で高出力を実現するために開発されたターボで、最も一般的なのは排気タービン内の排出ガス通路面積を可変化することによって実現する。


この場合、低速式では排気タービンの吹き出し面積を絞って過給圧が上がりやすくし、エンジン回転が上がれば吹き出し面積を大きくして大量の排ガスエネルギーによって過給圧を上げる、という具合に何らかの機構によって過給圧を全域で最適化するのだ。

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現在可変容量ターボは、ディーゼルエンジンでは必須のターボで、ガソリンエンジンでも多くが採用している。セドリックの可変容量ターボの採用は今から40年前の先進的な技術だが、現在はコストも下がり、様々な手法でより一般的なターボ技術のひとつとなっている。
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