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■斬新なクラウチングフォルムが目を引いたヴェロッサ

2001(平成13)年7月6日、トヨタのスポーツセダン「ヴェロッサ」が発売された。バブルが崩壊して人気が低迷し始めたマークII 3兄弟「クレスタ」の後継車として登場したヴェロッサは、イタリア車を連想させる斬新かつエモーショナルなスタイリングが特徴だった。

ヴェロッサの先代にあたるマークII 3兄弟のクレスタ
1980年代後半、日本では空前のバルブ好景気を迎え、スポーティな高級セダンの“ハイソカーブーム”が巻き起こった。その中心となったのは、マークII 3兄弟(マークII、チェイサー、クレスタ)だった。特に、爆発的な人気を集めたのは、5代目マークII、3代目チェイサー、2代目クレスタの3兄弟だった。マークⅡは落ち着いた雰囲気の高級セダンとハードトップ、チェイサーは高級感あふれるスポーツセダン、クレスタはスタイリッシュな高級パーソナルセダンと棲み分けされた。

ところが、1990年代初頭にバブルが崩壊しセダン人気は急下降、マークII 3兄弟の人気も右肩下がりとなった。マークIIは、その後も9代目まで生産され、2004年に「マークX」にバトンを渡した。一方、チェイサーは6代目まで、クレスタは5代目まで続き、同じ年の2001年に生産を終えた。

イタリア車風の斬新なスタイリングで登場したヴェロッサ
2001年にクレスタ/チェイサーは生産を終えたことから、その後継車として2001年7月のこの日にヴェロッサがデビューした。

ヴェロッサは、マークIIよりも全長は30mm短く、全幅は同じながら全高は10mm低い。“エモーショナルセダン”を開発テーマに、性能を表す数値でなく人の感性に訴えることを重視して開発されたスポーツセダンである。

塊から削り出した彫刻のような低く構えた“クラウチングフォルム”が特徴のスタイリングに、フロント部はフェンダーの流れに沿って始まるヘッドライト、スリット状の開口部、強く張り出したフードグリルで個性を強調。室内は、センタークラスターから始まる曲線と楕円の金属調リングで高級感が演出された。

パワートレインは、最高出力280ps/最大トルク38.5kgmを発揮する2.5L直6 DOHCターボを筆頭に、200ps/20.4kgmの2.5L直6 (直噴)DOHC NA、160ps/20.4kgmの2.0L直6 DOHC NAの3種エンジンと、5速MTおよび4速/5速ATの組み合わせ。駆動方式はFRが基本だが、2.0Lモデルのみ4WDが用意された。

車両価格は、2WDのAT仕様で240万円(2.0L)/279万円(2.5L直噴)/337万円(2.5Lターボ)に設定された。斬新なデザインで注目を集めた割にはヴェロッサの販売は伸びず、3年足らずの2004年1月に販売を終えた。



特別仕様車ヴェロッサ・スペチアーレも追加
2002年1月には、トヨタの架装モデルを手掛けるモデリスタ製のカスタマイズモデルで、エアロパーツを装着しエンジンとサスペンションにチューニングを施した「ヴェロッサ・スペチアーレ」が追加された。

“スペチアーレ”は、イタリア語でスペシャルを意味し、イタリア高級車の雰囲気漂う特別仕様車に仕上げられた。パワートレインは、ベースと同じ3種のエンジンだが、最上位の2.5Lターボはヤマハによるチューニングが施されて300psを発生した。

スペチアーレには、特別仕様車らしくエクステリアを際立たせる専用のエアロパーツや走りを極めるスポーティチューンマフラー、ローダウンスポーツサスペンションが装備され、スペチアーレを象徴する“Speciale”エンブレムがフロントとリアに装着された。車両価格は、ベースのヴェロッサよりも60万円程度高額に設定された。

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マークII 3兄弟の流れを汲んだヴェロッサだが、その斬新なスタイリングからは全く別のモデルとなった。車名ヴェロッサも語源はイタリア語であり、スタイリングもイタリア車風でアルファロメオを連想させる。ヴェロッサは、トヨタがイタリア車を意識して作り上げたのは確かだろう。
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