どんな過酷な道でもサバイブできる シンメトリカルAWDの絶対的安心感【スバル・フォレスター雪上試乗その2】

スバル・フォレスター
スバル・フォレスターの武器であるボクサーエンジン+シンメトリカルAWD。低重心であるとともに、左右対称にレイアウトされたパワートレーンがタイヤの接地性能を最大限まで引き出す。そんなスバル独自の4輪駆動システムは、走行条件が厳しくなればなるほどドライバーに絶対の安心感に与えてくれることを、福島・裏磐梯へのロングドライブで実感した。

TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)
PHOTO●山岡和正(YAMAOKA Kazumasa)

50年以上続く、スバルAWDの歴史は伊達ではなかった!

フォレスターは「Xモード」の採用によって、イージーコントロールと優れた走破性を実現しているSUVだ。スバル車と悪路走破性という関連性を遡ると、初代「レオーネ」に辿り着く。レオーネはかつてスバルが生産していた基幹モデルで、当時はいわゆる“ライトバン”カテゴリーのクルマだった。

もはやライトバンという言葉が死語だが、キャブオーバーのワンボックスバンに対して、ボンネットを持つワゴンタイプの商用車をライトバンと呼んだ時代があった。脱線したが、スバルはレオーネの販路拡大のために企業などに売り、その得意先のひとつが東北電力だった。

その東北電力が、積雪地を安全に走りたいという意向から、販社の宮城スバルに4WDモデルが作れないか打診したという。この話には諸説あるが、当時を知る四輪駆動車業界の重鎮に聞いた話では、東北電力は送電線の保線に使うために4WDが必要だったという。

当時、保線作業と言えば三菱ジープのような四輪駆動車を使うしかなく、日常の快適性や道具の積載といった点で難があったようだ。レオーネはFFだったため、宮城スバルはFR車用のパワートレーンを後輪軸に移植した試作車を製作。それを本社に送り、本格的な4WD開発に繋がった。そして生まれたのが、乗用車タイプ初のパートタイム4WDレオーネだったのである。

レガシィ以前にスバルの主力車種として君臨してたレオーネ。初代は1971年に登場し、スバル初の4WDモデル(エステートバン)がラインナップしていた。

その後、4WDというシステムの有用性がオンロード向きになったため、今度はフルタイム式4WDのレオーネを開発。子孫のレガシイやインプレッサ、そしてすべてのスバル車に受け継がれた。しかし、その原点はあくまでも悪路走破性の向上であり、フォレスターの4WDシステムは、スバルの辿った足跡の末に生まれた、集大成的システムと言える。

悪路走破性の基幹となるのは4WDシステムだが、まずそのスタイリングから「こいつはやりそうだ」と思わせてくれる。レガシイアウトバックやXVを上回る220mmという最低地上高は、ライバルであるトヨタRAV4よりも20〜40mmも高い。さらに現代的なボディフォルムを持たせつつも、実は前後左右がストンと削ぎ落とされたデザインを採用している点も見逃せない。

スバル・フォレスター
フォレスターのサイズは全長×全幅×全高:4640×1815×1715mm 、ホイールベース:2670mm。
スバル・フォレスター
大型化されたヘキサゴングリルと逆L字型ヘッドライトがマイナーチェンジ後のフェイスの特徴。
スバル・フォレスター
リヤビューに大きな変更はない。

運転席に座ると、インパネはラウンドしていると見せかけて、ウインドウ際はきちんと水平基調で設計されており、オフロードで車体が傾いた時に車両の状態が把握しやすい。同時に、ストンと前後左右が削ぎ落とされていることで、ドライバーは障害物との距離が予測しやすいはずだ。

スバル・フォレスター
ダッシュボード最上部に各種情報を表示するディスプレイを配置する。オーソドックスだが視界が良いのがフォレスターの美点だ。

4WDはアクティブトルクスプリットタイプで、四輪への駆動トルク配分を走行状況に応じて自動コントロール。スリップを極力抑えて、車両の挙動を安定方向に導いている。さて、雪道やオフロードでおもしろさを提供してくれるのが「Xモード」だ。フロアトンネル上にあるダイヤルを回すことで、「ノーマル」「スノー/ダート」「ディープスノー/マッド」を選ぶことができる。これを回すと何が起こるのかというと、エンジン出力やブレーキを制御して、走破性をアップしてくれるのである。

スバル・フォレスター
Xモードはダイヤルを左右に回すことで「スノー/ダート」と「ディープスノー/マッド」の2種類を選択可能。ONにする際は20km/h以下で走行している必要があり、40km/hを超えると解除される。

こうしたテレインコントロール系の電子デバイスは昨今では珍しくないが、中でもスバルのシステムは優秀だ。例えば深雪を走った場合に、積雪量が多すぎる場合は1輪が空転しても、ブレーキLSDをかけてトラクションを回復。完全なスタックを避けてくれるようになっている。

過去に、同様のシステムを持った「Xブレイク」でマッドを走ったことがあるが、ぬかるみに前輪がハマってスタックしかけても瞬時にブレーキLSDが働いてすぐに脱出した。そのレスポンスが非常に良く、ドライバーは不安を感じる時間が少なくて済むだろう。さらにXモードにはヒルディセントシステムも内包されており、ノーマル以外のモードに入れておけば、急な下り坂でのスピードコントロールを自動でしてくれる。

スバル・フォレスター
最近はスタッドレスタイヤの性能が向上しているので、多少の雪道ならば二輪駆動でも問題なく走行可能。しかし、路面条件が厳しくなればなるほど、シンメトリカルAWDのありがたさを実感できるはずだ。

Xモードはユーザーのライフスタイルをよりアクティブにしてくれるシステムで、ダートを走る機会が頻繁にあるアメリカなどでは実に重宝するはずだ。日本ではフォレスターに乗ってダートを走る人はわずかだと思うが、今年のような豪雪に遭った場合には、あれだけの悪路走破性は心強いはず。今回も亀の子スタックになりそうな深雪に敢えて入ってみたが、難なく走ってしまった。

スバル・フォレスター

1点気になったのは、Xモードには速度域によって制御の有無を自動的に切り替える機能を持っているのだが、S-Iドライブの制御も変えるようで、走行中にそれが切り替わった音が頻繁になる。メーター中央のインフォメーションにも、S-Iドライブの表示が出たり消えたりして、これがかなり気になった。

さて、気持ち良く圧雪路を走っていたら、調子に乗りすぎてオーバースピードに。結果、テールスライドして、ちょっとしたお祭りになった。しかし、こういうヒヤッとするシーンでこそ、スバルのシンメトリカルAWDの真価を垣間見る。重心が低く、前後の荷重バランスがいいこともあり、横滑りからのリカバリーが非常に容易だ。もちろん電子デバイスの支援もあってのことだが、そのままアウト側に向かっていくようなことはなかった。

スバル・フォレスター

さて、今回試乗したアドバンスは、ナッパレザーシートが選べる上級グレード。往年のスバル車のインテリアとは比べものにならないほど、高級感溢れるインテリアになっている。個人的には、内外装にオレンジの差し色がされているXブレイクが好みだ。ホイールデザインもシャープで、全体的にグッとアクティブな雰囲気に溢れている。

スバル・フォレスター
本革シート(ナッパレザー)と合皮のコンビネーションシートはアドバンスのメーカーオプション品。ブラウンとシルバーステッチによるシックな雰囲気が好ましい。
スバル・フォレスター
レポーターの山崎友貴さんの身長は180cm。
後席は6対4分割可倒式。背もたれは3段階のリクライニングが可能となっている。
スバル・フォレスター
後席は頭上、膝周りともに空間に余裕があるのがわかる。

さて、気になる今回の燃費は12.8km/L(メーターによる)。ほぼメーカー発表のWLTCモードの数値通りだ。ハイブリッド車として捉えると、決していい数値ではないが、燃費も考えたスポーツモデルとして考えれば、まずまずだろう317万9000円(税込)という価格は、意外と安いなと感じる。スポーティなe-BOXERやアイサイトが搭載されていることを考えれば、購買意欲が増す。

スバル・フォレスター
フォレスターは最廉価グレード以外は後席用のシートヒーターも標準で装備されるのがうれしい。

このクラスはライバルも何台かいるのだが、フォレスターを積極的に選ぶ理由は、やはりこの運動性能の良さではないだろうか。4人が快適に乗れるサイズながら、大きさを感じさせないバランスの良さ。背伸びせずに乗れるユーザーフレンドリーなフィーリングこそ、フォレスターの魅力である気がする。

スバル・フォレスター
福島・裏磐梯高原を目的地とした今回のドライブ。総走行距離は500kmを超えたが、長い距離を走ることでフォレスターの魅力が再確認することができた。

スバル・フォレスター アドバンス 主要諸元

■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4640×1815×1715mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1640kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
燃料タンク容量:48L(無鉛レギュラー)
■エンジン
型式:FB20
形式:水冷水平対向4気筒
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×00.0mm
最高出力:107kW(145ps)/6000rpm
最大トルク:188Nm/4000rpm
燃料供給方式:筒内直接燃料噴射装置
■駆動系
トランスミッション:CVT
駆動方式:4WD
■シャシー系
サスペンション形式:Fストラット式Rダブルウイッシュボーン
タイヤサイズ:225/55R18
■燃費
WLTCモード 14.0km/ℓ
 市街地モード 11.2km/ℓ
 郊外モード 14.2km/ℓ
 高速道路モード 16.0km/ℓ
■車両本体価格
317万9000円

著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…