日本有数の高原リゾート地への旅で実感 アイサイトがないともう長距離ドライブしたくない!?【スバル・フォレスター雪上試乗その1】

数多あるSUVの中でも、ボクサーエンジン+AWDを擁する希少な存在がスバル・フォレスターだ。その類い希なる資質を、往復500kmのロングツーリングと雪上ドライブで改めて確かめてみた。

TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)
PHOTO●山岡和正(YAMAOKA Kazumasa)

駐車場から出るときにも水平対向エンジンの存在を感じられる

5代目のスバル・フォレスターが大幅なマイナーチェンジを果たしてから、早いもので半年が経過した。スバルの新デザインコンセプトである「BOLDER」は、2代目レヴォーグ以上にエクステリアにマッチしていると、個人的には受け取っている。1997年に登場した初代は、コンパクトワゴンのクロスオーバーモデルだったが、今や立派なSUVに進化した。

今回、水平対向エンジン+モーターのe-BOXERを搭載した「アドバンス」をお借りし、その雪上性能を堪能する機会を得た。目的地の裏磐梯高原まで、伝家宝刀である「アイサイト・ツーリングアシスト」や「X-MODE」の実力を存分に試してみたいと思っている。

スバル・フォレスター
5代目のフォレスターは2018年に登場。2021年7月にビッグマイナーチェンジした際に「BOLDER」デザインを採用し、フロントマスクを刷新した。

さて、往復500kmの旅は高速道路で始まる。前述の通り、アドバンスは2L水平対向直噴エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載している。根本的な話になるが、スバルはこれをハイブリッドシステムとしていない。あくまでも、水平対向エンジンの加速を増幅させる過給器の代わりとしてモーターを使用しているというコンセプトだ。

ご存じの方も多いとは思うが、スバルの水平対向エンジンは切磋の繰り返しだった。奇しくも筆者が生まれた1966年に登場した「スバル1000」に搭載されて以来、三世代に渡って進化してきた。特に1989年に生まれた第二世代は、初代レガシィに搭載され、以後2010年に第三世代が登場するまで、多くのファンの共感を得たエンジンだ。特に不等長エキゾーストマニホールドから生み出される不均等な排気音は、世のクルママニアの心を掴んだのである。

スバル・フォレスター
現行型フォレスターのエンジンは2種類。2.0L水平対向4気筒+モーターの「e-BOXER」と、1.8L水平対向4気筒ターボの「DIT」がそろう。今回試乗したアドバンスは前者を搭載する。最高出力145ps&最大トルク188Nm、WLTCモード燃費は14.0km/L。

しかし一方で、独特のドライブフィールは一般的なユーザーには敬遠される部分でもあり、スバルボクサーエンジンは第三世代で大きく変革するに至った。熱狂的なスバリストからは「つまらなくなった」と言われたエンジンフィールは、第二世代とは違って軽く上まで回るもので、直列4気筒エンジンと大差のない静粛性を実現。マニアックさを失った反面、より多くの価値観に見合うものに変革したのである。

進化の過程の中で、スバルが常に腐心してきたのは、燃費である。水平対向エンジンは横方向にピストンを動かすため、どうしてもユニット自体の横幅の制限が出る。ショートストロークにすれば、熱効率が悪い。一般的にエンジンの燃焼エネルギーは30%しか使えていないので、ショートストロークエンジンは非常に効率が悪いことになる。その上、水平対向エンジンはレスポンスが悪いという傾向にあるため、ターボなどを活用してそれを解消してきた。以上のことを冷静に考えれば、ボクサーエンジンが燃費が悪いのは必然となる。

そこでスバルは、モーターを組み合わせたり、リーンバーン(希薄燃焼)のボクサーエンジンを開発したりして、スバル車=燃費が悪いというイメージ(いや、実際に)の払拭に勤めているところだ。話は戻るが、ターボチャージャーで過給すると冷却だなんだと燃料を噴いてしまうので、余計なガソリンを使わないモーターにその代替をさせているのがe-BOXERというわけだ。

スバル・フォレスター
モーターのアシストが出足の軽さを演出する。

ただ、スバルがボクサーを使い続けるのは意地だけではない。その良さが明確だからだ。それはエンジンがコンパクトにできて低重心になり、静粛性が非常に高いというメリットがあるからだ。エンジニアがクルマの設計をする時、重心や前後輪荷重のバランスに苦労する。クルマにはメカニズムだけでなく、人も乗る居住スペースも考えなければならない。設計時の話を聞くと、各担当でスペースや重量のやり取りのせめぎ合いが凄いらしい。

その点、水平対向エンジンは持って生まれた優位性がある。実際、フォレスターを駐車場から出すと、その瞬間に低重心バランスを感じるはずだ。この手のSUVは車高が高いため、どうしても発進時からユラッとした感覚がある。特にクルマを回頭した際に、顕著に感じる。しかし、フォレスターの場合は、フロア辺りに重心があるように感じられ、SUVに乗っている感じがしない。筆者はかつてレガシィとインプレッサを所有したことがあるが、低重心の実感という点でいえばフォレスターが勝る。

発進のフィーリングも、往年のボクサーエンジンのような重さはなく、アクセルと少し踏めばスッと車体が動き、軽々とした足取りで街中を駆け抜けていく。モーターアシストは、トヨタのハイブリッドのように「はい、いまモーターアシストしました!」というあからさまなものではなく、エンジン回転を上げていくうちに自然と介入してくる。おそらく、エンジニアはターボ過給していくような味付けを目指したのかもしれない。

昨今のスバル車に採用されている「S-I DRIVE」も、オーナーにとっては楽しい機能のひとつと言える。フォレスターの場合はステアリングスイッチで、Iモード(通常)とSモード(スポーツ)に切り替えることができ、これによって出力特性を変えられる。e-BOXERの場合、パワーユニットのメインはあくまでもエンジンなので、変化は顕著だ。

スバル・フォレスター
優れたユーティリティ性能もフォレスターの魅力。荷室は開口部(開口幅はクラス最大の1300mm)が広く、大きな荷物が積みやすい。

また、「e-アクティブシフトコントロール」というコーナリング支援機能もおもしろい。Sモードを選択時に、コーナー進入時のアクセル、ブレーキの状況をECUが“スポーツ走行”と判断すると、高いエンジン回転数を維持。クリッピングポイントを超えた辺りから、力強いモーターアシストを行い、素早い立ち上がりを実現するというシステムだ。ドライビングエキスパートには“余計なお世話”だと思うが、何だかワインディングの運転が上手くなったように感じさせてくれる。

しかし、何よりドライバーの気分をアゲてくれるファクターは、やはりボクサーエンジン+4WDレイアウトが生む低重心&シンメトリーの運動性なのだと思う。回頭する時にノーズが軽く進行方向に入るし、ボディがコーナーの度に左右に振られる感じが少ない。アドバンスはe-BOXERの搭載で、エンジン車よりも110kgも重くなっているらしいが、そうした重量増の影響を走りに感じないのは、まさしくこのレイアウトだからだろう。なお4WDシステムについては、後編で詳しく触れたい。

普及期にあるACCだが、スムーズな制御はスバルのアドバンテージ

さて、高速道路に入れば使いたくなるのが、アイサイトの機能のひとつである「ツーリングアシスト」、いわゆるアダプティブ・クルーズ・コントロールである。すでにこの機能の便利さを享受しているユーザーが多いと思うが、改めて説明していきたい。

スバル・フォレスター
アイサイトはステアリング右側のスイッチで操作。ツーリングアシストは0-120km/hの速度域でアクセル・ブレーキ・ステアリング操作をアシストしてくれる。

この手の機能は、いまや軽バンにさえ採用されている時代となった。インターフェイスの分かりやすさは各社によって異なるが、スバルのスイッチは非常に理解しやすい。スイッチはステアリングスポーク右側に集約されており、速度設定、車間設定、加減速だけである。一度でもクルーズコントロールを使ったことがある人なら、車間の設定だけ頭にインプットすれば覚えるまでもない。

スバル・フォレスター
2021年のマイナーチェンジの際、アイサイトはステレオカメラの広角化やソフトウェアの改良が実施された。

この機能は自車周囲のクルマを、ステレオカメラと4つのミリ波レーダーによって感知。クルマが詰まったら減速、道が空いたら加速を自動的に行ってくれる。さらに車線を認識し、ステアリングをアシスト。半自動運転を可能にしている。

特にステアリングのアシストは、初めて使う人なら驚くはずだ。トルクがステアリングホイールを通して分かるのだが、実質はクルマが勝手に操作をしているのも同然。人の手の力がホイールに伝わらないと、「ハンドル操作をしてください」というコーションが表示される。試しに手放しをしてみたところ、数十秒はそのまま“自動運転状態”となり、その後安全のためにアシストが解除された。テスラを試乗した時もそうだが、こういうのを体験すると完全自動運転も間近なんだなと感じる。

スバル・フォレスター
アイサイトの作動状況はダッシュボード上部のマルチファンクションディスプレイやメーター内のマルチインフォメーションディスプレイにわかりやすく表示される。

ツーリングアシストは減速も的確ながら、加速もスムーズだ。走行車線で前が詰まった時など、ウインカーを出してステアリングを追い越し車線側に切った直後から加速を始めてくれる。非常に賢い。加速がスムーズなのは、モーターアシストの恩恵もあると思うが、とにかくストレスフリー。インプレッションなのだから、ACCを切って走らねばと思いつつ、ついそのラクさに身を委ねてしまう。

これならハンドルさえ握っていれば寝ても大丈夫なんじゃないかなどと安直なことを考えたが、少しでも目を伏せたりすると、きちんとクルマがその状態を感知をして「いねむり注意」のコーションが警報音と共に現れる。よこしまな企みは許してくれないようだ。とは言え、長距離ドライブ時のドライバーの疲労軽減は絶大で、今回も500kmというなかなかの行程だったが、自分のクルマに乗った時とは疲れ方がまるで違った。

スバル・フォレスター
高速道路での長時間の走行時の疲労度を格段に軽減してくれるアイサイト。わき見運転や居眠りを警告してくれるドライバーモニタリングシステムは、ジェスチャーによって空調をコントロールできる機能が加わった。

ちなみにサスペンションのセッティングは、日本人の好みをよく捉えていると思う。かつて、フォレスターの兄弟モデルで、北米専売車である「アセント」に試乗したことがあるが、あちらは実にアメリカ向けらしいゆったりユラユラとした乗り心地だった。日本のフォレスターは、乗り心地は快適ながら適度に硬く、ワインディングを走ってもSUVらしからぬ走りが楽しめる。ハイブリッド用電池の積載で重量的にかなり厳しいところもあると思うが、サスストロークにまだまだ余裕を感じるセッティングとなっていた。

高速道路や乾いたワインディングロードを堪能した後は、いよいよステージはスノーへと変わる。後編では、フォレスターの4WDや悪路走破性について触れていこうと思う。(その2へ続く)

スバル・フォレスター アドバンス 主要諸元

■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4640×1815×1715mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1640kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
燃料タンク容量:48L(無鉛レギュラー)
■エンジン
型式:FB20
形式:水冷水平対向4気筒
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×00.0mm
最高出力:107kW(145ps)/6000rpm
最大トルク:188Nm/4000rpm
燃料供給方式:筒内直接燃料噴射装置
■駆動系
トランスミッション:CVT
駆動方式:4WD
■シャシー系
サスペンション形式:Fストラット式Rダブルウイッシュボーン
タイヤサイズ:225/55R18
■燃費
WLTCモード 14.0km/ℓ
 市街地モード 11.2km/ℓ
 郊外モード 14.2km/ℓ
 高速道路モード 16.0km/ℓ
■車両本体価格
317万9000円

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…