初のプラットフォーム刷新は新型ノア/ヴォクシーの走りをどう変えた!?

2022年1月、先代の発売からちょうど8年目に生まれ変わった新型ノア/ヴォクシーは、トヨタのヒエラルキーさえ覆すようなとんでもない進化を遂げた。まさにライバルを激震させる存在である。

レポート=青山尚暉
フォト=平野 陽

ついにTNGAプラットフォームを手に入れた新型ノア/ヴォクシー

新型ノア/ヴォクシー、その超進化の内容として、まずはフラットフォームの刷新が挙げられる。何しろ、ついにトヨタ最新のTNGA、GA-Cプラットフォームを用いることになったのだ(なんと初代以来21年ぶりの変更)。また、ヴォクシー、ノアともに一段と迫力、精悍さ、高級感を増した顔つきを持つボックス型ボディは全車3ナンバーとなる全幅1730mmに統一。モデルラインナップもノアは従来通り、標準車とエアロモデルを用意するものの、ヴォクシーは真打ちエアロモデルのみの設定だ。

新型ノア S-G。エアロモデルで、先代のイメージを踏襲しながらもより大胆な押し出し感が与えられた。
新型ヴォクシー ハイブリッドS-Z。思わず二度見してしまうような強烈なフロントマスク。ヴォクシーはこちらのエアロモデルのみの設定だ。ノア/ヴォクシーでは、S-Zの2WDモデルのみ写真の17インチホイールを装着する。

第5世代となる最新のハイブリッドシステムを投入

パワーパッケージも新しい。1.8Lエンジン+2モーターのシリーズパラレル式ハイブリッドはトヨタ最新の第五世代を投入。最大23%もの燃費向上が計られ、WLTCモード燃費はクラストップレベルの最高23・4km/Lを誇る。ガソリン車はRAV4やハリアーにも搭載される2.0Lダイナミックフォースエンジンを用いるものの、10速ダイナミックシフトCVTとの組み合わせで、これまたクラストップレベルのWLTCモード燃費15・1km/Lを達成する。ちなみにハイブリッドに新設定されたE-Four=4WDも、モーター出力が向上し、4WDの作動領域、リヤへのトルク配分を拡大(前後トルク配分は60:40から20:80まで可変)した最新版である。フロントストラット、リアトリーリングアームというサスペンション形式に変更はないものの、新設計、最適化されているのは、もちろんだ。

ハイブリッド車は1.8L+モーターという構成は変わらないが中身は刷新。現行プリウス/カローラを第4世代とするならば、新型ノア/ヴォクシーは第5世代と言うべき進化を遂げている。
新型のハイブリッドトランスアクスル。モーター出力は16%アップしながら、15%の軽量化&ダウンサイジングが図られた。
ハイブリッドバッテリーは新開発のリチウムイオンセルを採用し、バッテリー出力は15%向上。電池セルと併せて刷新したアッセンブリー構造で30%もの小型化が図られている。
新開発のパワー半導体により、従来比29%も損失を低減したパワーコントロールユニット。静粛性も高められた。
こちらは4WD用リヤトランスアクスル。現行プリウスのE-Fourより出力は5.6倍! 小型2軸構造による優れた搭載性と、新制御による安定した旋回性能も注目ポイント。

スッキリした視界とつくり込みの質感の高さが目に飛び込むインパネ

室内空間も新鮮だ。1列目席に着座すれば巨大なフロントウインドウ、極細Aピラーおよび大型三角窓、すっきりとした水平基調のインパネデザインによって、前方、斜め前方ともに視界は極めてルーミー。パノラミックな視界が広がり、運転席に座った瞬間から誰もが運転のしやすさを実感できる。インパネセンターの8インチまたは、リアルタイム情報機能や「ヘイ・トヨタ」の発生でエージェントを起動させられる10・5インチの大型ディスプレイオーディオの用意、先進性もまた、新型ならではだ。

水平に伸びる横軸が左右の拡がり感を強調し、開放感を感じさせるインパネ。ピラー配置の見直しなどで、斜め方向の視界もスッキリとした。ヒーコンは先代のシフト横から吹き出し口下の中央に移動し、自然な操作感になっている。

これは便利! 横移動せずにロングスライド可能な2列目シート

居住性、実用性も大きく進化。特に2列目キャプテンシートは中寄せスライドすることなく、765mmものストレート超ロングスライドを実現。おかげで超ロングスライド時でも、4つのカップホルダーやふたつのUSBソケットが用意される(S-Z)折り畳み式テーブルが使えるようになっている。なお、2列目席の頭上空間、最大600mm前後に達する広大な膝まわり空間は先代同等だ。3列目席は先代のSバネ+ウレタン構造から、格納、フラットアレンジ、掛け心地にこだわったネット式に改められている。そしてバックドアは世界初の”からくり”によるフリーストップバックドアを採用。任意の位置で開閉を止められ、車体後方にスペースがない場所でも荷物の出し入れが容易になっている。

2列目席は一度横移動させることなくそのままロングスライドが出来るようになった。七人乗りキャプテンシートにはシートヒーターやオットマンも装備(S-Zにパッケージオプション。オットマンの設定は2WDのみ)され、抜群の快適性を誇る。

先代のウイークポイントだった先進安全装備も一気にトヨタトップレベルに進化!

そして電子パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能を持つとともに、トヨタ最新・先鋭の先進運転支援機能=トヨタセーフティセンスを惜しみなく採用。全車速域対応のレーダークルーズコントロール(ACC)のほか、トヨタ車初のプロアクティブドライビングアシストや、トヨタ最先端のMIRAIに初搭載された高度運転支援のトヨタチームメイトまで用意しているのだから驚きだ。そのアドバンストドライブ(渋滞支援)では、なんと自動車専用道路の同一車線において、約40km/hまでのハンズオフドライブが可能。”使える”自動駐車機能、スマホによる遠隔出庫などまで実現しているのだ。それらをファミリーユースが主のMクラスボックス型ミニバンに用意するあたりは、大いなる英断と言っていい。

新プラットフォームで乗り心地、操縦安定性とも各段にレベルアップ!

さて、まず走らせたのは、ハイブリッドのS-Zグレード(2WD)だ。スペックは、1.8Lエンジン98ps、14.5kgm、フロントモーター95ps、18.9kgm、リヤモーター41ps、8.6kgm。タイヤはノア/ヴォクシー初の17インチ、205/55R17サイズだ。バッテリーに電気が十分あれば、出足はもちろんモーター駆動。静かに、スムーズに発進し、速度を上げていく。その際のモーター駆動の力強さが先代以上に感じられ、モーター(EV)走行を粘り強く行なうあたりは、モーター16%、バッテリー15%の出力アップの効果と言っていい。

しかも、乗り心地は先代最大の16インチに対し、大径17インチタイヤを履きながら実に快適だ。具体的には、良路での滑らかな乗り味とともに、段差越えでのショックさえ一発で収束させる、いなし方のうまさによるフラットライドが際立つ(1列目席)。特に長いゼブラゾーン路面での不快な振動の抑え込みは秀逸。また、車内の静粛性も向上。このあたりは、新プラットフォーム、入念な遮音吸音対策の面目躍如といったところだろう。もっとも、巡行時の静かさゆえ、上り坂や追い越しなどでエンジンを高回転まで回す場面ではそれなりのエンジンノイズが車内に侵入。その音圧、音質をもう少し耳に優しくしてほしいと感じさせたのも事実である。

操縦安定性もレベルアップされている。全速度域で軽くスムーズな操舵感を示すパワーステアリングの直進感の良さもさることながら、例えば首都高速のカーブを曲がる際も、先代にあった重心感の高さをほとんど感じさせないまま、狙い通りのラインに乗せることがたやすく、車体の傾き最小限で安心してカーブを曲がることができるのだ。レーダークルーズコントロールの作動もさすが最新の制御だから、追従走行、再加速性能、レーンキープ性能ともに文句なしだった。

ハイブリッド車はモーターの力強さがハッキリとアップ。可能な限りEV走行で粘るのも嬉しいところ。新プラットフォームによるショックのいなし方も見事だ。

しかし、新型ノア/ヴォクシーを市街地で走らせ、もっとも感動したのは、トヨタ初のプロアクティブドライビングアシスト機能だ。歩行者や自転車運転者とのリスクを先読みして運転操作をサポートしてくれるとともに、ここがポイントなのだが、レーダークルーズコントロール(ACC)の作動なしで、先行車やカーブを認識。減速操作を自動かつ、下手にブレーキを踏むよりスムーズに行ってくれるのだから、安心・安全、そして走りやすく、同乗者も快適だ。

1/2列目席ともにシートの掛け心地も良くなった。背もたれの高さが増し、上半身を包み込むような快適感が得られ、とくに2列目席はヒップポイント地上高が25mm高まり、より爽快な居住感覚が得られるようになっている。

身体を包み込むような感覚が高まった新型のフロントシート。写真のS-Gグレードのシート生地は上級ファブリック。S-Zでは合成皮革+ファブリックの組み合わせとなり、さらにシートヒーターが備わる。

柔軟性に優れるガソリンエンジン。

一方、170ps、20.6kg-mを発揮する2.0Lガソリンのダイナミックフォースエンジンは、CVTのワイドレンジ化で一段ときめ細かい制御を実現し、より柔軟なドライバビリティを提供。日常域の走りやすさはもちろん、高速走行での加速力はハイブリッドモデルを凌駕する実力を備えている。乗り心地に関してはややハイブリッドモデルのほうがしっとりしている気もするが、こちらも新プラットフォームの採用でフラットかつトヨタのミドルクラスセダン並みの快適感を持ち合わせる。ただ、ハイブリッドモデル同様に、エンジンを高回転まで回すシーンでの煩さを、もう少し抑えてほしいとは思える。

ガソリンエンジンは排気量は2.0Lと変わらないが、レクサスUXやRAV4と同じM20A-FKSに変更。発進用ギヤを備えるダイレクトシフトCVTを採用し、自然な加速感とCVTの効率化が図られている。

こうして新型ノア/ヴォクシーに触れ、試乗してみると、Mクラスボックス型ミニバンとして全方位における、先代ユーザーなら2世代先とさえ思えるほどの進化の度合いの大きさ、先進性に驚かざるを得ない。まさに、想像を超えた圧巻の商品性、仕上がりを見せる新型と結論できる。

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