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改良で渋滞対応ACCに進化 内装質感や走行性能は規格外
2021年も販売台数ナンバー1に輝いたN―BOX。半導体不足やマイナーチェンジを控えて生産を絞るなどといった事態もあったが、その人気は不動であり、フィットの販売伸び悩みの一因にもなっているほどだ。現行の二代目は 17年8月にデビュー。初代モデルが爆発的に売れたおかげもあって、一世代でプラットフォームもパワートレーンも一新するという異例の進化を遂げることになった。
エクステリア
自然吸気エンジンはi―VTEC、ターボエンジンは電動ウェイストゲートを追加。ボディはフレーム構造を取り入れるとともに、素材置換や新たな接合技術の導入で軽量・高剛性化を果たしている。もっとも、N―BOXのクオリティの高さに慌てたライバル達がこぞって後追いしてきたので、それらに対抗する意味もあったのだろう。
乗降性
21年12月にはマイナーチェンジが施され、これまで30km/h以上でしか作動しなかったACC(アダプティブクルーズコントロール)が全車速対応および停車時ブレーキホールディング機能付きとなった。これはパーキングブレーキが足踏み式から電子制御になったから。もっと早いタイミングでの導入が望まれていたが、過去にN―WGNで不具合が出たという生産上の都合で伸びてしまっていたのだ。
インストルメントパネル
N―BOXの最大の魅力は、ホンダ独自のM・M思想(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)だろう。スペース効率の高さの価値が高い軽自動車では、ことのほかもてはやされるわけだ。フィット譲りのセンタータンクレイアウトによって床も低く、自転車を簡単に積めるほど広大で使いやすい空間を有している。さらにNシリーズ全般が、軽自動車としては異例にハイクオリティなことが優位性を高めている。街乗りだけではなく、ロングドライブでもコンパクトカーに負けないように気合いを入れて開発されているのだ。
居住性
デザインは二代目となってもキープコンセプト。標準車はシンプルで機能美があり、カスタムよりもむしろ都会的とも言える。見た目はあまり変わりなくても走らせてみれば進化は明らかだ。先代比で約80kgも軽くなっているので、自然吸気エンジンでも走り出しが力強くスムーズ。街なかではあまりエンジン回転数を上げなくても、十分に走ってくれる。車体の静音・遮音性能も上がっているので、ずいぶんと静かになった。ただし高速道での移動が多い、4名乗車でアップダウンのある地域を走る機会が多いなどの事情がある場合は、やはりターボがお薦めだ。最大トルクが約30Nmも違えば、大負荷時の加速性能にはもろに効く。
うれしい装備
月間登録台数 6092台(21年6月〜11月平均値)※N-BOX CUSTOMを除く 現行型発表 17年8月(一部改良 21年12月) WLTCモード燃費 21.2km/l ※自然吸気のFF車
ラゲッジルーム
後席は座面が沈み込むダイブダウン機構付きで、格納時にはフラットで高さ方向にも余裕のスペースが生まれる。後席は19cmのスライド機構を持つが、計測値は最後端の状態のもの。
街なかでの乗り心地の良さは、ライバルを圧倒する。細かな凹凸などはソフトタッチなタイヤが綺麗に吸収するし、サスペンションの動きもスムーズだからだ。高速域での操縦安定性も高いレベルにあり、ファーストカーとしても立派に役割をこなしてくれる。ACCの進化によってもはや死角はなし。今後もしばらくは、日本一売れているクルマとして君臨することになるだろう。
※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.140「2022年 軽自動車のすべて」の再録です。