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悪条件下で250km走ってみた
日頃の行ないが悪いせいか、CX-60の試乗は雨。公道試乗会の豪雨だった。マツダR&Dセンター横浜で借りだしたのは
CX-60 XD-HYBRID Premium Modernである。車両本体価格は552万7500円。
パワートレーンはSKYACTIV-D3.3に48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「e-SKYACTIV D」。もちろん話題の直列6気筒エンジンである。
ボディサイズは、
全長×全幅×全高:4840mm×1890mm×1685mm
ホイールベース:2870mm
車両重量は1940kg
だから、もちろん堂々としている。正直言ってちょっとデカイ。
マツダのラージ商品群の第一弾がCX-60なのだが、今後の予定は次のようになっている。
【ラージ商品群】
・CX-60(2列シート)→日本、欧州、他に導入
・CX-70(ワイドボディ 2列シート)→北米、他に導入
・CX-80(3列シート)→日本、欧州、他に導入
・CX-90(ワイドボディ 3列シート)→北米、他に導入
つまり、CX-60が一番小さい……ということだ。CX-60が良い悪い、好き嫌いの前に、SUVでないラージ・モデルの登場を期待したい。
さて、そのCX-60、受注状況も好調だ。直6の滑らかな走りとマツダ・デザインのちょっと古典的だが美しいデザインは確かに魅力的だ。しかも、走りと燃費を両立させているのが特徴になる。
ということで、前置きが長くなったが、例によってCX-60を穏やかに走らせてみた。
フェアレディZやWRX S4のようにスポーティなモデルをアクセルを踏み込まないで走らせるのは、(筆者は慣れているが)少々禁欲的だ。しかし、CX-60ならさほどでもない。なぜなら、550Nmという大トルク(3.3ℓのディーゼルとしては控え目だが)と153Nmのモーターが生み出す余裕は、特段アクセルを踏み込まなくてもCX-60を余裕で走らせてくれるからだ。
横浜の市街地を抜けて雨で混み合った保土ケ谷バイパスに乗る。東名高速から圏央道と高速道路を走る。全高が高いSUVは視点が高いというメリットがある。CX-60も例外ではない。ボディサイズは大きいが見切りがいいから自信をもって走ることができる。
と、その前に、CX-60 e-SKYACTIV D搭載モデル(4WD)の燃費を確認しておこう。
燃費:WLTCモード 21.0km/ℓ
市街地モード18.1km/ℓ
郊外モード:21.4km/ℓ
高速道路:22.5km/ℓ
これがどれほどスゴイ燃費なのか。
モデル名 | パワートレーン | WLTCモード燃費 | |
マツダCX-60 | XD-HYBRID(4WD) | 3.3ℓ直6ディーゼルターボ+48VM-HEV | 21.0km/ℓ |
マツダCX-5 | XD(4WD) | 2.2ℓ直4ディーゼルターボ | 16.6km/ℓ |
トヨタ・ハリアー | ハイブリッド(4WD) | 2.5ℓ直4+ハイブリッド | 21.6km/ℓ |
メルセデス・ベンツGLC | 220d4マチック | 2.0ℓ直4ディーゼルターボ | 15.1km/ℓ |
BMW X3 | xDrive 20d | 2.0ℓ直4ディーゼルターボ | 14,5km/ℓ |
アウディQ5 | 40DTDI クワトロ | 2.0ℓ直4ディーゼルターボ | 14.5km/ℓ |
燃費で匹敵するのは、燃費に定評のあるTHS搭載のハリアー・ハイブリッド(4WD)の21.6km/ℓくらいだ。しかも、こちらはガソリン。日本ではガソリンより20円/ℓほど安い軽油で走るe-SKYACTIV Dには大きなメリットがある。
ギヤ比と回転数の関係 ダウンスピーディング
最初は、オーディオもオフ、できるだけ穏やかに走らせてみた。前方の信号が赤になるのが見えたところでアクセルをオフにすると、前方からかすかな音だが、ヒューンという回生音とトランスミッションのシフトダウンの変速の音が聞こえる。不快ではないが、いったん気になると、たしかに気になる。
また、アイドルストップからの再始動は、もう少し上手にやってほしい。エンジンの再始動の前に、グギッというようなメカニカルなノイズが入って、これはかなり気になる。要修正な部分だ。
高速道路を巡行するとエンジン回転数はメーター読みで
90km/h:1400rpm
100km/h:1500rpm
110km/h:1600rpm
だった。エンジン回転数が低いからディーゼルエンジンのノイズは走行中は気にならない。巡行中でも、バッテリーの残量やアクセルペダルの踏み具合、勾配などさまざまな状況をセンシングして、隙あらばエンジンを停めるかかる。
エンジン 形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ 型式:T3-VPTS型(e-SKYACTIV D3.3) 排気量:3283cc ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm 圧縮比:15.2 最高出力:254ps(187kW)/3750pm 最大トルク:550Nm/1500-2400rpm 燃料供給:DI 燃料:軽油 燃料タンク:58ℓ モーター MR46型永久磁石式同期モーター 最高出力:12kW/900rpm 最大トルク:153Nm/200rpm
助手席に座っていたら、エンジンのON/OFFはわからないが、運転していると、ちょっと違和感を覚える。走行にエンジンがOFFになり、再始動するときにアクセルペダルに振動が伝わるし、たとえば、クルマ側が「エンジン停めようかな」と思った瞬間にドライバーがアクセルを踏みますというようなシチュエーションでは、ややギクシャクする。
それもこれも燃費のため、なのだろう。
CX-60はマツダが新開発した8速ATが積まれている。
ギヤ比を見てみよう。
CX-60(8AT)の8速 | CX-5(6AT)の6速 | |
100km/h巡航時 | 1483rpm | 1922rpm |
110km/h巡航時 | 1631rpm | 2144rpm |
120km/h巡航時 | 1779rpm | 2306rpm |
130km/h巡航 | 1928rpm | 2498rpm |
100km/h巡航時のエンジン回転数は、2.2ℓ直4ディーゼル(SKYACTIV-D2.2)搭載のCX-5(6速AT)と比べると
CX-60 1483rpm
CX-5 1922rpm
となる。これは、空気抵抗やタイヤのスリップ率などを無視した数字だが、おおよその傾向はわかる。
マツダが主張する大排気量化による「ダウンスピーディング」の効果だ。
e-SKYACTIV D3.3は
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
CX-5のSKYACTIV-D2.2は
最大トルク:450Nm/2000rpm
だ。最大トルクの発生回転数が500rpmもe-SKYACTIV D3.3のほうが低い。しかも48Vのマイルドハイブリッドシステムが組み合わされているから、エンジン側は多少のトルクの積み増しはモーターに頼れるし、場合によっては停めてしまうこともできる。
ちなみに、CX-5 SKYACTIV-D2.2搭載の4WDモデルのモード燃費は
WLTCモード燃費:16.6km/ℓ
市街地モード13.4km/ℓ
郊外モード16.3km/ℓ
高速道路モード18.7km/ℓ
だ。
さて、今回CX-60を悪条件の下、254.1km走らせた。トータルの燃費は22.1km/ℓだった。モード燃費の105.2%という非常に優れた燃費性能だった。
CX-60のボディサイズを考え合わせたら、とんでもない燃費性能を叩き出したと言える。
急速に進む電動化だが、ディーゼルエンジンの存在意義、存在価値はまだまだある。CX-60のe-SKYACTIV Dが提示しているのは、2020年代のパワートレーンのダイバーシティにディーゼルは欠かせないということ。48Vマイルドハイブリッドシステムと組み合わせたら、THSに対抗できるだけのポテンシャルがあるということだ。しかも、単に低燃費の味気ないパワーユニットではない。直6なのだから。
素質は充分。磨きをかければ、さらに光るはず。冒頭、大きなSUVでないセダンやクーペにも積んでほしいと書いたが、まず活きるのは、CX-60のような大型SUVであることも事実。
気になる人は、まずは一度試乗してみてほしい。
CX-60 XD-HYBRID Premium Modern 全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm ホイールベース:2870mm 車重:1940kg サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式 駆動方式:4WD エンジン 形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ 型式:T3-VPTS型(e-SKYACTIV D3.3) 排気量:3283cc ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm 圧縮比:15.2 最高出力:254ps(187kW)/3750pm 最大トルク:550Nm/1500-2400rpm 燃料供給:DI 燃料:軽油 燃料タンク:58ℓ モーター MR46型永久磁石式同期モーター 最高出力:12kW/900rpm 最大トルク:153Nm/200rpm トランスミッション:トルクコンバーターレス8速AT 車両本体価格:552万7500円