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どんな道でも力強く安定感のある走り
■「MUD」モードが効く!
まずはツインモーター4WDを搭載しているアウトランダーPHEVで試乗コースに入る。
富士ヶ嶺オフロードの試乗コースは、前半はモーグルやギャップ、バンクのあるコーナー、すり鉢などさまざまな地形が設定されており、4WDの実力を試すにはもってこい。後半の林間コースは急傾斜や岩が露出した路面、轍など実際に未舗装林道などにありそうなシチュエーションになっている。
天気は生憎の雨ということもあり、ドライブモードはスタートから「MUD」に設定。トラクションを重視した設定でぬかるみや深雪などの路面を安心して走れる走破性が得られる設定だと言う。
■タイヤが浮いても大丈夫?
幾つものコブがランダムに並ぶモーグルでは、タイヤの1つが完全に浮き上がる状態で一旦停止。ここから発進しようとすると、普通ならデファレンシャルの働きで浮いているタイヤに多く駆動配分されてしまい、浮いているタイヤが空転するだけで上手く発進できない状況に陥ることになる。
しかし、アウトランダーPHEVはそのような空転は感じさせずに発進できた。アクセルの踏み方によるトルクの出方もあると思うが、接地しているタイヤの空転もなく至ってスムーズだったように思う。
■急アクセルだとどうなる?
バンクやギャップなども懐の深い足まわりで不安なく乗り越えられ、駆動力制御が適切に行なわれているのか濡れた路面でもタイヤが空転するようなこともなかった。
しかし、ここまで試乗ということもありかなり慎重に走ってみたということもあるので、開けたコーナーであえて徐行から急アクセルを踏んでみた。すると、一瞬タイヤが空転するもののそれはすぐに収まって何事もなく進んでいく。トルクフルで立ち上がりの早いモーター駆動にも関わらずこの制御速度はさすがと言えるだろう。
■見えないところが見えるマルチアラウンドモニター
底でハマったら脱出できそうもない深いすり鉢もアウトランダーPHEVは難なく走破する。しかし、運転しているとすり鉢進入直前はフロント直下がどうなっているのかよく見えないし、脱出直前もすり鉢のすぐ外がどうなっているかがわからない。
そんな時に役に立つのがマルチアラウンドモニターで、4つのカメラを利用した車庫入れやバックの際に表示される上から視点の画像と、フロントのカメラが捉えた映像で運転席から目視できない範囲を確認することができる。運転席からでは見えないコースの先やアプローチアングルを降りて確認しなくて良いので、とてもありがたい機能だ。
■急傾斜を下る時はヒルディセントコントロールがありがたい
林間コースでの最大の難所は急傾斜の下り。土が柔らかそうなうえに雨で濡れていかにも滑りやすそう。タイヤがロックしたら2tを超える車重で重力のままに滑り落ちてしまうのではないかという恐怖を感じる。ブレーキにはかなり気を使わなければならないだろう。
しかし、アウトランダーPHEVに用意されているヒルディセントコントロール(HDC)を使えば、スイッチひとつでこのブレーキ操作をクルマに任せてしまうことができる。
ドライブモードダイヤルの中央にあるスイッチを押して、アクセルを踏んで速度設定(20km/h以下)を行えばペダル操作を全く行なわず自動的に下ってくれる。その制御も緻密にしてスムーズ、傾斜の角度を見て感じた不安などどこ吹く風だ。
最新のツインモーター4WDを搭載したアウトランダーPHEV
試乗したアウトランダーPHEVはフロントに85kW、リヤに100kWの出力をもつモーターを搭載したツインモーター4WD。これまでより駆動力を高めただけでなく、制御範囲が広がりさらに自在な前後の駆動力配分が可能とした。これによりさまざまな路面への対応力も向上している。レスポンスの良さ、制御の緻密さ、プロペラシャフトが存在せず機械的なフリクションロスが極めて少ない、といったモーター駆動の恩恵は見逃せない。
さらに、三菱が誇る車両運動統合制御システム「S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)」が「ASC(アクティブスタビリティコントロール)」「ABS(アンチロックブレーキシステム)」「AYC(アクティブヨーコントロール)」を統合制御して高い操縦性を実現している。
さすが三菱の4WD制御技術は凝っているし、とても優れているのは今回の試乗でよくわかった。何より、モーターとエンジンの違いや駆動制御の方式などをほとんど意識することなく、コンディションの悪いオフロードコースを安心して走れたことがその優秀さを証明している。
SUVでもオフロード走行をあまり意識していないモデルもあるし、電動車(EV)だとなおさらそんなイメージもあるが、アウトランダーPHEVは三菱らしい本格オフロードにも対応できるクルマと言えるだろう。
■アウトランダーPHEV グレード:P カラー:レッドダイヤモンド(※) インテリア:セミアリニンレザー(ブラック×サドルタン) 駆動方式:ツインモーター4WD[S-AWC] 定員:7名 全長×全幅×全高(mm):4710×1860×1745 ホイールベース(mm):2707 車両重量(kg):2110 エンジン:4B12 MIVEC(2.4L DOHC16バルブ直列4気筒) モーター:ツインモーター(S91/YA1) 駆動用バッテリー総電力(kWh):20 使用燃料(タンク容量):レギュラー(56L) メーカーオプション:ルーフレール(33,000円) ディーラーオプション:フロアマット、ETC2.0車載器 価格:5,485,700円(オプションは含まず) ※レッドダイヤモンドは77,000円高
本格オフロードが走れる唯一のミニバン「デリカ:D5」
アウトランダーPHEVに続いて、こちらは三菱伝統のデリカ。その現行モデルD:5を同じコースで試乗。デリカと言えばパジェロのシャシーにワンボックスボディを載せ、本格的なオフロード走行も可能とした唯一無二の存在としてファンが多いモデルだ。そんな脈々と受け継がれるデリカの伝統を確かめることができた。
実際に走らせてみても、アウトランダーPHEVと同様にどのような状況でも不安なく走破することができたが、特に違いを感じたのは急アクセル操作の際。アウトランダーPHEVと同じシチュエーションで試してみたのだが、アウトランダーPHEVではトルクの立ち上がりの早さからか一瞬ホイールスピンがあったものの、デリカD:5ではエンジンと機械駆動のおかげか逆にマイルドでホイールスピンが起きなかった。
また、ヒルディセントコントロールはなかったが、ブレーキ操作だけで林間コースの急傾斜をロックしたり滑ったりすることなく下ることができたのも良かった点だ。
デリカD:5の車両制御は電子制御4WDなのでシステムとしては最新鋭ではないものの、今回の試乗で不足を感じるどころか十分な性能を備えていると感じた。
ただ、環境性能要求が高まっていく時代のなかで、オフロード走行が可能なミニバンという独自のポジションにあるデリカD:5だけに、将来的にはアウトランダーPHEVと同じシステムを搭載したモデルが登場したりしないだろうか?
■デリカD:5 グレード:P カラー:ホワイトダイヤモンド(※) インテリア:ブラック 駆動方式:電子制御4WD 定員:8名 全長×全幅×全高(mm):4800×1795×1875 ホイールベース(mm):2850 車両重量(kg): 1980 エンジン:4N14(2.3L DOHC16バルブ直列4気筒 コモンレール式DI-D インタークーラーターボ) 使用燃料(タンク容量):軽油(64L) ディーラーオプション:フロアマット、ETC2.0車載器、DELICA D:5オリジナル10.1型ナビゲーション、シートカバー、ドアバイザー、ドライブレコーダー 価格:4,475,900円(オプションは含まず) ※ホワイトダイヤモンドは77,000円高