4人乗車での走りも秀逸! 『クラウンエステート』のストレスフリーな乗り心地こそ、グランドツーリングカーの真髄だ!!

【トヨタ・クラウン徹底解剖&比較試乗 #004/クラウンエステート 編】
4モデルそれぞれでキャラクターが異なるクラウン。見た目の違いはもちろん、走りや乗り心地も当然異なる。そんなクラウン4モデルを、2人のモータージャーナリストが比較試乗。まずは「大人のアクティブキャビン」をキャッチコピーに、クラウンシリーズのトリを飾ったエステートから。

パワートレインとサスペンションをチェック

長距離運転の疲れを軽減する優れた直進安定性と操舵感覚

「型があるから型破りがある」とは、クラウンシリーズのチーフエンジニアを務める清水竜太郎氏の言葉だ。クラウンの型は長らくセダンだったが、「自分たちが欲しいクラウン」を考えた結果、型破りなクロスオーバーが生まれた。クロスオーバーで固定観念からの脱却を果たした開発陣は、新たな発想でセダンを開発。「もっといろんなクラウンがあっていい」と、市場のニーズに応える格好でスポーツとエステートを生み出した。

エステートの開発では、「荷室のユーティリティをいかに高めるか」に最もこだわったという。こだわりの一例が、段差のない全長2mの完全フルフラットデッキだ。車中泊するもよし、出先でくつろぐもよし、使い方を想像するだけで楽しくなる。開発陣のこだわりを感じるのは、ラゲッジルームのカーペットである。毛並みの細い材質を採用し、使い勝手だけでなく手触りの良さも追求。16代目クラウンシリーズは「全席特等席」をコンセプトに掲げて開発が行われたが、エステートはその考えを荷室にまで広げている。その考えを象徴するのが、手触りにまでこだわったカーペット。エステートは荷室でさえも特等席である。

エステートが走りにこだわっているのは、クラウンシリーズの他のボディタイプと同様。エステートはとくにストレスフリーであることにこだわり、直進安定性を重視した。真っ直ぐ走れないと修正操舵が必要になり、長距離・長時間の走行ではドライバーの疲労蓄積につながるからだ。移動中の運転それ自体が楽しめるのはもちろんだが、目的地に到着した後で旅行や趣味を楽しめる余力が残るようにしたい、という意図。運転で疲れてしまっては、目的地に到着した後で楽しめなくなってしまうからだ。後輪操舵機構のDRSはクロスオーバーやスポーツと同様に搭載するが、70㎞/h以上が目安となる高速域では、同相制御をクロスオーバーやスポーツよりも強めにし、ロール速度を抑制。フラット感がより感じられる仕立てとしている。パワートレインは2.5Lハイブリッド車(HEV)と2.5Lプラグインハイブリッド車(PHEV)の2種類。スポーツと同じラインアップ構成だが、キャラクター設定はスポーツとは異なる(ように感じられる)。スポーツのPHEVはレッドのブレーキキャリパーにレッドの内装など、視覚的にもスポーティな味つけになっており、走りも旋回性を重視したセッティングだ。

一方、エステートのPHEVはロングドライブ向き。ワインディングロードを意のままに操るクルマというより、高速道路をゆったりクルーズするのに向いたおおらかな乗り味である。大容量バッテリーのおかげで、満充電時はカタログ上89㎞のEV走行が可能。ロングドライブ時は途中でハイブリッド走行に切り替わることになるが、エンジンが始動しても高い静粛性は保たれるので、終始ストレスフリーである。

HEVはフロントモーターの最高出力をスポーツやクロスオーバーに対して大幅に高めている(88 kW→134kW)。多人数・多積載でも余裕のある走りを実現するためで、ストレスフリーなドライブが味わえるのはPHEVと同様となっている。

大人4人乗車でも余裕の走りPHEVの加速感は特に秀逸

エステートの最大の特徴は、ステーションワゴンボディだということ。

……と言うとこう思う人も少なくないだろう。「何言っているんだ? クラウンエステートがステーションワゴンだったのは過去の話で、現行モデルはステーションワゴンではなくSUVじゃないか?」と。

たしかにそれは、車体設計だけを見て言えば間違いない。しかし現行モデルであっても、込められた神髄はワゴンに他ならない。ただ、かつてと違い昨今は純粋なステーションワゴンの人気は下火。そこでSUVと掛け合わせることで「荷物がたくさん積めるクラウンのワゴン」という立ち位置を与えられたのだ。

さて、そんなエステートには動的性能においても注目すべき、他のシリーズと異なる神髄がある。それは「グランドツーリングカー」だということ。クロスオーバーをはじめ、セダン、スポーツ。そんな他モデルと比べてエステートの乗り味は、ロングツーリングに照準を合わせている。具体的にいえば直進安定性の良さなど高速域でのスタビリティを重視し、長距離長時間の運転をしても疲労が少ないのだ。

峠道をキビキビ走るようなシャープで刺激を強調したハンドリングではスポーツにかなわないし、純粋な乗り心地でいえばセダンこそ極上だ。しかし、遠くまで移動した際でも「まだまだ走りたい」と思わせるような感覚は、エステートがもっとも色濃い。だからグランドツーリングカーなのだ。

そしてもうひとつ、エステートの走行性能面で見逃してはならない点がある。それはハイブリッドモデルのモーター出力である。

エステートのハイブリッドシステムは、クロスオーバー(の2.5Lエンジンモデル)やスポーツと基本的に共通である。しかし、フロントモーターの最高出力をみると後者が88 kWなのに対し、エステートでは134kWと約1.5倍まで引き上げられているのだ。開発者によると「4人の大人が乗って荷物満載で走るような状況も考えて」という。

ただ、運転した印象としてはそんなモーター出力によって大きく動力性能が変化しているというわけでもない。あくまで“ここぞ”という時への備えなのだろう。

いっぽうで、ハイブリッドモデルとPHEVモデルの差は予想以上に感じた。ハンドリングと加速感の両面においてだ。

まずハンドリングは、絶対重量こそ重くなっているものの、低い位置にバッテリーを置いたことによる低重心化と、車体中央にバッテリーを置いたことによる前後重量配分の最適化が効いているようで、挙動がひときわ素直な印象。動きに迷いがないのだ。

加速感は、大容量バッテリーを背景にエンジンが始動しにくくなり、そのぶん(エンジンを動かさず)モーター走行領域が拡大。まるで電気自動車のような滑らかさと伸びやかさをもたらしてくれるのがいい。

トヨタの「シリーズパラレル式ハイブリッド(旧THS)」はエンジンが掛かると雑味に感じられるが、PHEVはエンジンが始動しにくい分だけスッキリとさわやかで、それが実に心地いいのである。

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日本車の歴史を語るのに外すことのできない高級車「クラウン」。 その16代目となるこの最新クラウンは、2022年に4車種展開というサプライズでワールドプレミア。 そして先陣を切り、2023年に「クロスオーバー」、その後に「スポーツ」「セダン」と投入され、この2025年に大トリを飾るカタチで「エステート」がデビュー。 先代のエステートでは、ステーションワゴンとして人気を博していただけに、この新型に期待していた人も多数。 いよいよ全貌が正式公開となった「エステート」の魅力をじっくり見ていこう。

TOYOTA・クラウン購入ガイドより

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