ミニバンの今後の需要は分かりにくい。メーカーの商品企画担当者には「少子高齢化だからミニバン需要は先細り」という見方をする人がいる。その一方で販売店からは「子育てを終えたお客様が、広い室内を気に入り、ミニバンに乗り続けることも多い」という話も聞かれる。
そして少なくとも現状では、ミニバンの需要は根強い。ヴォクシー&ノアは22年1月13日にフルモデルチェンジしたが(エスクァイアは廃止)、設計が古くなっていた21年の時点でも、ヴォクシーは1か月平均で約5800台、ノアは約3000台を販売していた。販売店のコメント通り、人気は根強い。
そこで22年には、ミドルサイズミニバンが一斉に新型へ切り替わる。まずは前述のヴォクシー&ノアで、現行プリウスから採用が開始されたGA-CGプラットフォームを使う。
ノーマルエンジンはハリアーなどと同じタイプに刷新され、ハイブリッドは大半の部分を造り替えたから、THSⅡとしては第5世代になる。運転支援機能も、渋滞時のハンズフリー(手離し運転)を可能にするなど、新機能を数多く盛り込む。
大量に販売する見込みがあるから、多額の開発費用を使ってパワーユニットやプラットフォームを刷新した。開発者は「以前のプラットフォームを使い続けたら、新しいエンジンやハイブリッドを搭載できなかった」という。ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差を35万円に抑えたことも特徴で、売れ筋は後者になる。
ステップワゴンは、ヴォクシー&ノアの刷新を意識して、21年12月10日に新型のティザーキャンペーンを開始した。22年1月7日にはデザインなどが明らかにされ、2月には予約受注が始まる。4〜月には納車を伴う発売となる。新型ステップワゴンのプラットフォームやe:HEV(ハイブリッドシステム)は、基本的に先代型の改良版で、外観は水平基調を強める。フロントマスクなどは、抑制を利かせたデザインだ。
新型ヴォクシー&ノアとステップワゴンを比べると、安全装備などを含めた機能の先進性ではヴォクシー&ノアが勝る。それでもシンプルなデザインなど、ステップワゴンの魅力も際立つ。
また両車の共通点もある。インパネの上面をスッキリと平らに仕上げるなど、前方視界は両車とも先代型に比べて向上させた。2列目シートには、膝から先を支えるオットマンが備わり、長いスライド機能も採用している。これは両車が真剣な開発を行っている証だ。ミニバンは基本的に国内向けに開発されるので、力を入れるほど機能にも共通性が生じる。
そして全グレードが3ナンバー車になり、5ナンバー車が消滅したことも、新型ヴォクシー&ノアとステップワゴンの共通点だ。従来型も3ナンバー車のエアロ仕様が売れ筋だったから、新型では5ナンバー車を廃止した。5ナンバー車を用意しなければ、設計の自由度が増して、ワイドな全幅を室内幅の拡大や足まわりに有効活用できる。
秋になるとライバル車のセレナも新型に切り替わる。進化したeパワーによって動力性能と燃費を向上させ、運転支援機能のプロパイロットは、今の少し曖昧な制御を改善させる。グレード構成はハイウェイスターが中心だ。
以上のように新しいミドルサイズミニバンに共通する特徴は「進化したハイブリッドと3ナンバーボディ」だ。競争の激しい市場だから、商品力を高めながら、値上げは抑えられ、suvに奪われつつある需要を取り戻す。
そしてミドルサイズミニバンが3ナンバー車になると、コンパクトなシエンタとフリードの役割も増してくる。「5ナンバー車でないと困る」というミニバンのユーザーも多いからだ。22年内には、シエンタとフリードも次期型に刷新される可能性が高い。
このほかアルファードもフルモデルチェンジする可能性がある。海外の売れ行きも好調で、高価格車だから粗利も大きい。コストを費やす価値の高い車種だから、ハリアーやRAV4と同様のGA-Kプラットフォームを採用して、走行安定性、乗り心地、操舵感、衝突安全性などを幅広く進化させる。
そして22年に登場する新型ミニバンは、いずれも従来型の保有台数が多い。新型への乗り替えが積極的に行われると、下取りされた従来型が中古車市場へ大量に放出される。つまり今後はミドルサイズを中心に、中古のミニバンも買い時を迎えるわけだ。
【スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部】