三菱重工は、米国統括拠点である米国三菱重工業(MHIA:Mitsubishi Heavy Industries America, Inc.)を通じ、2021年1月にインフィニウム社への出資を行って以降、共同でソリューションの商用化や市場展開に関する検討を行っており、今回のMOU締結もその一環である。インフィニウム社によるとエレクトロフューエルは、同社が特許を保有する触媒技術と再生可能エネルギーを使用し、回収したCO2とグリーン水素を合成ガスに転換することでつくられる。これにより、従来の化石燃料と比較してCO2排出量を最大97%削減可能となり、クリーン液体燃料として既存設備に利用することで輸送時におけるCO2排出量を直接削減できるため、輸送のEV化、CO2回収・カーボンオフセット(排出権取引)などといった既存の脱炭素戦略に追加される新たな手段となることが期待されている。
日本政府は、温室効果ガスを2030年度までに2013年度比で46%削減し、2050年にはカーボンニュートラルを達成することを目指している。これに伴い、カーボンリサイクル燃料およびCO2分離・回収はグリーン成長戦略の一つのカテゴリーとして注目されている。日本市場においても、気候変動への取り組みやESG(環境・社会・ガバナンス)への投資などといった新たなビジネスの潮流により低炭素な輸送手段が望まれており、特にEV化が難しいとされる長距離輸送、航空輸送、海上輸送分野においては、カーボンリサイクル燃料の活用が脱炭素戦略として期待されている。
三菱重工グループは、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを行っており、CO2エコシステムの構築はその中の柱のひとつである。今回のMOU締結を通じて、三菱重工グループが構築を目指すCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)バリューチェーンならびにCO2流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO2NNEX」 と、インフィニウム社のCO2利用技術を組み合わせ、日本国内におけるカーボンニュートラル社会の実現を検討していく。