STマイクロエレクトロニクス:ロードノイズを軽減してEV向けに静かな車内を実現する高性能加速度センサーを発表

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下ST)が車載用3軸MEMS加速度センサ「AIS25BA」を発表した。 同製品は、アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)技術によってロード・ノイズを軽減し、より静かで快適な車内環境を実現する。従来の自動車は、エンジン性能や外観デザイン、 パワー・トレインなどが重要視されてきたが、近年では快適さを重視するユーザが増えている。

電気自動車(EV)は、内燃エンジン(ICE)自動車と比較して本質的にノイズが少ないものの、自動車メーカーは車輪や振動による車内ノイズのさらなる低減に注力している。このような取り組みは、より静かな環境でユーザが走行を楽しめるようにすることを目的としている。  
 ノイズ・キャンセリングのアルゴリズムは、車両の各所に取り付けられた多数の加速度センサと環境音の測定により、アンチ・ノイズとして機能する補正波形を生成しノイズを除去する。  

STのアナログ・MEMS・センサグループ MEMSサブグループ マーケティング・ジェネラル・マネージャーであるSimone Ferri氏は、次のようにコメントしている。「今日のデジタル時代において、走行をより安全で楽しいものにする静かな車内を実現するには、不要な音を制振・吸音で弱めるのではなく、打ち消すことがスマートな方法です。ロード・ノイズの影響を受けやすいハイブリッド車やEVへの移行に伴い、AIS25BAは、システム設計者に優れた価値を提供します」。

AIS25BAは、STが有するMEMS(微小電気機械システム)センサの強みを活かし、ロード・ノイズ・キャンセリング(RNC)システムの精度を高める優れた特性を備えている。市場でも最小クラスのノイズを実現しているため、きわめて静かな車内環境の実現に貢献する。また、RNCシステムが補正波形をリアルタイムで計算するために必要な高速応答 / 低遅延、およびシステムで対象とする音の周波数帯全域でノイズを捕捉するために広帯域に設計されている。さらに、広い動作温度範囲と機械的な堅牢性を備えているため、エンジンやEVモータ、車輪やサスペンションの近くなど、自動車における最も過酷な場所にも配置することができる。

技術情報

AIS25BAは、高精度のRNCシステム向けに設計された3軸MEMS加速度センサである。X軸とY軸が30µg/√Hz、Z軸が50µg/√Hzというきわめて低いノイズ密度を実現しており、類似製品と比較して最大58%の高性能を備えている。

また、この卓越したノイズ性能と、2.4kHz(Typ.)まで拡張された周波数応答により、車内ノイズ・キャンセリングに関連するすべての周波数帯域がカバーされる。センサの総遅延は266µsで、システムがノイズ・キャンセリング信号をリアルタイムで生成するための十分な時間を確保できるように設計されている。

さらに、TDM(時分割多重化)デジタル・インタフェースが搭載されているため、システムは設置された多数の加速度センサからの出力を同期し、車両全体の振動を測定することができる。TDMインタフェースは、車載機器に幅広く採用されている他のデータ・バスとも簡単に接続が可能。測定範囲は最大±7.7gまで選択可能で、車載アプリケーションにおける激しい振動に対して十分なマージンを備えている。電源電圧範囲は1.71V~1.99V。

AIS25BAは、AEC-Q100規格に準拠し、14ピンのLGAパッケージ(2.5 x 2.5 x 0.86mm)で提供される。単価は、1000個購入時に約3.90ドル。

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