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実施背景
少子高齢化を背景に労働力不足が深刻な社会問題となる中で、製造業においても製造現場におけるプロセスの効率化や人材不足といった課題を解決していくことは持続可能な事業運営に不可欠となっている。特に、大型荷物の搬送作業が自動運転技術により自動化され、さらに工場インフラに統合することで生産効率が飛躍的に向上する。そのような背景の中、今回、物流を含むプロセス制御自動化・効率化によるものづくり力向上を推進する神戸製鋼と、自動運転技術を通して持続可能な物流を実現したいUDトラックスが早期の社会実装を目指し、製鉄所での実際のオペレーションに基づいた実証実験を行った。
実証実験の概要と成果
実証実験は2022年8月末から10月末の2ヶ月間、神戸製鋼加古川製鉄所内の水砕スラグ※1運搬コースの一部のルートを使用して実施された。レベル4限定領域自動運転技術※2を搭載したUDトラックスの大型「クオン」のダンプトラック1台※3が重さ約17トンのスラグを積み、複数の異なる地点を自動搬送した。また、所定内での停止・搬送物の積み下ろしといった複雑な運行作業も自動で行われた。
実証実験の目標は、実際のオペレーション環境下で、自動運転技術の正確な運用、センサー類のロバスト性※4、自動運転および車両システムの信頼性を確認することに置かれていた。今回、水たまりや段差、ぬかるみなどのある過酷な不整地、また、雨や霧など様々な天候下において、車両に組み込まれたSensible4社の自動運転システムが正しく作動することが確認された。また、タイヤからステアリングに外乱が入る不整地での走行においても、クオンに採用されている電子制御ステアリング「UDアクティブステアリング」により、高精度かつ安定した走行が実現された。さらに衛星からの信号が構内の様々な施設により遮断されやすい環境においても、GNSS-RTKと3D-LiDAR両方を用いた測位とナビゲーションに従い、記録した走行経路を車両が正確に走行することが実証された。
また、今回の実証実験では、搬送だけでなく一連のオペレーションの自動化が実現された。ホイールローダーで積み込まれたスラグが、オペレーターの指示を受け、あらかじめ登録されたスラグ投入口(ホッパー)へ自動搬送。そして荷下ろし場では新明和工業提供の自動ダンプ機能により、スラグがホッパーに流し込まれた。
【注釈】
※1 水砕スラグ:
高炉から生成する溶融スラグに圧力水を噴射することで急冷した砂状のスラグ。主にセメント用原料として国内および海外に販売。
※2 レベル4限定領域自動運転対応車両:
特定の走行環境・条件(ODD)の中で認知、判断、操作の運転操作をシステムが完全に実施する車両で、SAE J3016「運転自動化レベル」の国際標準に準拠している。安全対策を万全とするため、実証実験中は実験ルート内の人流を遮断・封鎖する。また実験は車両に安全監視ドライバーが搭乗し、不測の事態に対する有人緊急操縦態勢を確保した上で実施し、万が一のリスクに備えている。
※3 実験車両:
3軸車 後2輪駆動、車両総重量31トン。
※4 ロバスト性:
構造物など外乱の影響によって変化することを阻止する性質。