日産 2026年にe-POWER、2030年にはBEVもICE並みのコストに! BEVとe-POWERで主要部品を共有化

日産が発表したX-in-1モジュール
日産自動車は、3月9日、BEV(電気自動車)とe-POWERの主要部品を共有化し、モジュール化した新開発電動パワートレイン「X-in-1」の試作ユニットを公開した。このX-in-1、e-POWERは、「5-in-1」、BEVは「3-in-1」となる。

X-in-1モジュールと全固体電池が鍵を握る

日産は、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」で、2030年度までに19車種のBEVを含む27車種の電動車を導入するとことを宣言している。そのためには、電動車両のコストを現在のエンジン車同等まで下げる必要がある。その鍵を握るのが「X-in-1」である。

日産は、2026年にe-POWER搭載車を、2030年にはBEVをエンジン車並みのコストにしていく。
左がEV用の「3-in-1」、右がe-POWER用の「5-in-1」

公開された新開発電動パワートレインは、e-POWER用が「5-in-1」(モーター/ジェネレーター/インバーター/増速機/減速機)、BEV用は「3-in-1」(モーター/インバーター/減速機)をひとつのモジュール化したものになる。

主要な駆動部品の共用化とユニットのモジュール化による生産効率の向上によりパワートレーンコストを2019年比で約30%削減し、e-POWERについては、2026年までにエンジン車と同等の車両コストを目指すという。

主要な駆動部品の共用化はすでに進んでいて、現在の第二世代e-POWERとBEVのリーフのモーター/インバーターなどはすでに両者で同じものが使われている。

また、BEVのコストについては、全固体電池によるバッテリーの革新とクルマ全体での取り組みでエンジン車同等を目指すとしてる。こちらのコスト実現は、すでにNissan Ambition 2030で発表している2028年度の実用化を目指す全固体電池の導入後となるのだろう。全固体電池は、2028年度に1kWhあたり75ドル、その後BEVがガソリン車と同等のコストレベルとなる65ドルまでコスト低減可能なポテンシャルがあるという。

モジュール化によってサイズが小さくなればもちろんコストも低減できる。

日産でパワートレイン開発を統括する平井 俊弘専務執行役員は、コスト削減の要因を次のように説明した。

「2026年にe-POWERで内燃機関と同じにするというこのコストロードマップは、今日ご紹介させていただいたX-in-1で30%のコストダウン、モーター、インバーターのコストを下げる、あと駆動系のコストも下げるのセットになっています。エンジンもさらにe-POWER専用エンジンということで技術を磨き上げてきまして、ここでも定点運転、基本的に可変のデバイスを持たないエンジン、シンプルなエンジンでコストを下げる」

対するエンジン車は、ICE(内燃機関)に対する排気規制が今後さらに厳しくなっていく。つまり電動車のコストは今後下がるが、エンジン車のコストは上昇するということだ。

平井さんは
「排気規制が厳しくなることで触媒も貴金属を増やさないといけない、触媒を始動したらすぐに活性化させないといけないので、(エンジン車にも)ある程度の電動デバイスが必要になってきます。それに対してe-POWERは、元々作動点が少ない効率のいいエンジンですので、触媒の貴金属も20%以上減らすことができます。これによってコストを上げないという3つの作用で、コストを下げていきます」と説明した。

次世代パワー半導体として期待されるSiC(シリコンカーバイド)の採用もロードマップに含まれている。

また、BEVについては
「BEVは少し様相が異なります。BEVのコストを下げるひとつの要因が、この3-in-Oneです。これによってEパワートレーンのコストを下げるのがひとつのドライバー(推進役)ですが、コスト削減の大きくはバッテリーです。バッテリーのコストを着実に下げていく。すでにご紹介していますが、全固体電池を2028年に投入することによって大きくコストを下げるのが大きな要素になります」
と語った。

左が平井俊弘専務執行役員、右が日産自動車株式会社 e-POWER開発 全体統括の渋谷彰弘氏。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…