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日常的に廃棄される希少資源
多くの人が、懐中電灯、USBメモリースティック、充電プラグやケーブル、さらには携帯電話などの小型電子機器を専用の回収場所に廃棄せず、家庭ゴミとして捨てている。ドイツでは通常、家庭から出た廃棄物は焼却処分される。このプロセスでは、廃棄物に含まれる貴重な原材料を産業用に効果的に回収することはできず、重要な元素がリサイクルプロセスから離れ、完全に喪失されてしまうことを意味する。
そこで、アウディ環境財団が資金提供する、インジウム、ガリウム、スズの選択的抽出に関する研究プロジェクトが発足。このプロジェクトは、家庭廃棄物焼却後の飛灰またはスラグに含まれている金属を抽出して、新しい製品に使用することを目的としている。このアプローチの採用により、リサイクルと再利用を通じて、原材料を新たに採掘する必要がなくなり、鉱業による環境への影響だけでなく、鉱石および精錬材料(つまり、原材料に相当する物)の国際貿易から生じる排出量を削減することができる。
アウディ環境財団の目指すリサイクルプロセス
現在、選択的抽出法に基づいたリサイクルプロセスは、フライベルク工科大学の化学博士課程の学生、ベティ・ライビガー氏の研究室で開発されている。簡単に説明すると、フライアッシュ溶液から目的の金属イオンを取り出して分離させる、特別な形状の「ツイーザー」(ピンセット)の開発に重きが置かれている。専門用語でリガンド(生体分子と複合体を形成して生物学的な目的を果たす物質)として知られる専用の「ツイーザーヘッド」は、インジウムなどの特定の金属イオンを1つだけ結合させる。このアプローチにより、個々の金属イオンを混合物から徐々に分離し、技術的用途に使用できる純度にすることが可能となる。
また、アウディ環境財団は、原材料の無駄な排気を削減する提案も積極的に行なっている。ドイツ/インドの新興企業Nunamを例に挙げると、アウディ環境財団から資金提供を受けて、使用済みバッテリーを移動式エネルギー貯蔵ユニットとして再利用されている。Nunamはまた、使用済みe-tronの開発テスト車両から取り外された2基の使用済みバッテリーを使用して、ソーラーナノグリッドを構築。これにより、資源が節約され、リサイクルおよび新品バッテリーの製造に使用されるエネルギーが節約される。