メーカー純正「アップグレード」という新しい価値
かつては新車購入時点で完成され、その後は劣化に対して維持・修理を行ない、一定期間が過ぎれば買い替えるというサイクルが一般的だった。しかし現在、メーカー自らが提示し始めているのは、所有後にクルマを進化させていくというアップグレードの思想である。
スバルが発表した一連の純正アップグレードメニューは『東京オートサロン2026』でも発表されたが、レヴォーグなどの基本性能や質感を進化させることを目的としている。
「スバル・ダイナミック・モーション・パッケージ」は、WRX S4と同様のピロボールブッシュを用いたフロント・ロアアーム、形状を見直したタイロッドエンドの採用に加え、各部ボルト締結力の最適化や車両姿勢の補正まで含まれる内容だ。単に剛性を高めるのではなく、乗り心地を維持したまま操縦感覚の密度を引き上げる。

VN系レヴォーグ用は車体各所に制振や吸音材を追加し、車内に入り込む騒音や雨音を抑える。静粛性を高めることで会話を明瞭とし、オーディオサウンドをよりクリアに。2026年春頃の発売予定。
レクサスは「レクサス・アップグレード・ファクトリー」を通じて、BEVである RZに対し、ソフトウェア主体のアップグレードを提供。最高出力を引き上げる「パフォーマンス・アップグレード“ブースト”」や、仮想8速ギヤによって操作感を演出する「インタラクティブ・マニュアルドライブ」は、ハードウェアを変更せずにクルマの性格を一段引き上げる。ここでも語られているのは、「愛車を進化させる楽しさ」だ。

レクサスRZ 500e version L(AWD)のシステム最高出力を250kWから280kWへアップ。さらにBEVながらマニュアルさながらの速度可変を音・挙動で再現できるようにした。また専用のシフトガイドメーターを採用。価格は22万円。
アップデートメニューが定常化されることで、ディーラーの存在は大きな変革を迎える。進化していく製品、それは買い替え期間を延長してしまうというデメリットではなく、信頼性を高めコミュニケーションを深めるという大きなメリットを生む取り組みとなるようだ。
旧車のワークスレストアにも大注目
旧車のレストアにもメーカーやディーラーが力を入れ始めている。マツダは初代ロードスター(NA)のレストアサービスを実施。狙いは当時の設計思想や質感を再現するというもの。ホンダは初代NSXを皮切りとしたヘリテージ支援を限定プログラムとして実施。


またトヨタはスープラ(A70/A80)などを対象に生産終了部品の復刻供給を段階的に進めてきた。旧車の文化的価値も高まり、メーカーとしてもその価値を維持する取り組みを進め始めている。

このように、クルマの業界が売り切るだけではなく、後々までも繋がる手立てを模索していることが見えてくる。それは売り側からすれば、製品というものを媒介とした新たなビジネスチャンスなのである。しかし、ユーザーにとってみればよりクルマを長く愛するための仕組みができてきた、という喜ばしい風だと言えるだろう。
