
BSA バンタム350……698,500円
1948年、戦後の英国でモビリティの在り方を変えた一台のモーターサイクルがあった。その名は「Bantam(バンタム)」。シンプルで誰もが親しめる設計により、当時の人々に二輪の喜びを教えた伝説の名車が、2026年の現代、全く新しい姿となって私たちの前に姿を現したのだ。
新型「Bantam 350」の最大の特徴は、その成り立ちにある。先行して発表された上位モデル「Gold Star 650」が伝統の継承を色濃く反映していたのに対し、このBantam 350は「現代における最も身近なBSA」としての役割を担っている。資料にある「偏見なく、シンプルに二輪の喜びを体験できる」という言葉通り、実車からは余計な虚飾を削ぎ落とした、道具としての潔い美しさが伝わってくる。
注目のパワーユニットは、334ccの水冷DOHC単気筒エンジンを搭載。最高出力29BHP、最大トルク29.62Nmというスペックは、街中での軽快なダッシュと高速道路での巡航性能を高い次元でバランスさせている。特筆すべきは、このクラスでは贅沢とも言える「6速ギアボックス」の採用。単気筒らしい力強いトルクを活かしつつ、6速を駆使することで、長距離走行時でもエンジンに余裕を持たせた走りを可能とした。

シャーシ設計に目を向けると、シート高800mm、湿重量185kgという数値以上に、またがった際の収まりの良さが光る。29度に設定されたキャスター角と、フロント18インチ・リア17インチの組み合わせは、直進安定性を重視しながらも、交差点を曲がる際のスムーズな倒し込みを予感させる。足回りに関しても、フロントに320mmの大径ディスク、リアには5段階の調整機構を持つツインショックを装備。ABSを含めた現代の安全基準をクリアしつつ、クラシックな外観を損なわない絶妙なパッケージングだ。
13リットルの燃料タンクは、日々の通勤から週末のツーリングまでを十分にカバーする容量を確保。シンプルであることは決して妥協ではなく、むしろ乗り手の生活に溶け込むための「最適解」であることを、このバイクは静かに主張している。
日本での発売を間近に控え、熾烈な争いが続くミドルクラスのシングル市場において、Bantam 350は単なるレトロモダンの一台に留まらない、確かな個性を放っている。かつてのBantamがそうであったように、再び新たな世代にとっての「自由への入り口」となるのか。その導入が今から待ち遠しい。



📝 主要諸元
| スペック | |
| エンジン | 水冷4ストローク DOHC 単気筒 334cc |
| 最高出力 | 29 BHP @ 7,750 rpm |
| 最大トルク | 29.62 Nm @ 6,000 rpm |
| 変速機 | 6速 |
| 装備重量 | 185 kg |
| 燃料タンク | 13 L |
| シート高 | 800 mm |
| タイヤ (前/後) | 100/90-18 / 150/70-17 |
