6速MT搭載のSTIコンプリートカー「WRX STI Sport♯」発売

WRXファン待望のMT車が限定車として復活。それが『東京オートサロン2026』でプロトタイプが世界初披露された「WRX STI Sport#」だ。

『東京オートサロン2026』で発表された「WRX STI Sport♯」(プロトタイプ)。

スバルのモータースポーツ統括会社である「スバルテクニカインターナショナル(STI)」は、2026年4月9日に、正式発売を発表。数々の専用装備と共に、現行型では国内初となる6速MTを採用しているのが最大の特徴だ。

市販仕様のWRX STI Sport♯。STIコンプリートカーであるSTI Sport“#だが、先代と現行型WRX S4ベース、現行型レヴォーグで投入されているが、MT車は初だ。

販売台数は600台で、5月17日(日)までの期間限定でスバル販売店にて抽選申し込み受け付けを行なう。その価格は610万5000円となっている。現行型WRX S4の価格帯は、447万7000円(GT-H EX)~530万2000円(STI Sport R-Black Limited II)なので、特別仕様の内容を鑑みれば、真面目に検討したいという人も少なくないはず。

ファン垂涎のバランスドエンジン×6速MT!スバル「WRX STI Sport ♯」正式発表!610万円で600台限定の抽選販売 | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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WRX STI Sport♯正式発表

カナダ仕様のWRX6速MTモデル……日本仕様との違いは?

カナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)。2025年モデル。ボディカラーはセラミックホワイト。

しかし、現行WRXシリーズ(VB系)のMT車は海外仕様はあるものの、日本仕様ではスバルパフフォーマンストランスミッションと呼ぶCVT搭載の「S4」のみ。以前よりMT車がどんなシフトフィールなのか、非常に気になっていたところ、なんと海外仕様のWRX(6速MT)に国内で試乗する機会を得ることができた。

カナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)のコクピット。左ハンドル仕様に加え、中央のMTシフトノブとサイドブレーキが大きな特徴。

試乗車はカナダ仕様の「WRX SPORT」のMY2025(2025年モデル)。そのため、左ハンドル仕様となるのが、大きな違いだ。「SPORT」は現地のエントリーグレード仕様であり、現行のMY2026(2026年モデル)では4万1185カナダドル。現在のレートで、472万1000円(※)ほど。
※1カナダドル=114円(4月上旬)

MY2026のWRXラインナップ(スバル・カナダのオフィシャルサイトより)。「GT」のみCVT(スバルパフォーマンストランスミッション)で、他は全て6速MT。

簡単なスペックを紹介しておくと、ボディサイズは日本仕様のもの同等。車両重量は1619㎏。日本仕様は1600㎏~1610㎏なので、ちょい重め。エンジンは日本仕様同様に、FA24型の2.4L水平対向4気筒直噴インタークーラーターボエンジンだが、最高出力271hp(274ps)/5600rpm、最大トルク258lb-ft(35.6kgm)/2000~5200rpmに。トルクはNmに換算すると349.85Nmとなる。若干、性能が異なるのは、現地の燃料と法規対応のため。

カナダ仕様のWRX「SPORT」。オレンジのウィンカーレンズが特徴的。
カナダ仕様のWRX「SPORT」。リヤフェンダーモールに備わるサイドマーカーが海外仕様の証。
FA24型2.4L水平対向4気筒DOHC 16バルブ直噴インタークーラーターボエンジン。現地対応で若干スペックが異なり、ブレーキマスタシリンダーの位置も変更される。

装備面では、MT車のため、通常のアイサイトとなるので、メーターもアナログ2眼式に。さらにエントリーグレードのため、電動格納機能のないドアミラー、ナビレスのワイドインフォディプレイ、SIドライブレス、リヤワイパーレスなどの違いもある。

カナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)のダッシュボード。日本仕様とは左右が異なるが、レイアウトは共通だ。
メーターはオーソドックスな二眼式。速度計は280km/hスケールで、内側に捕捉的にマイル表記も用意。こちらは180MPHスケールだ。

エクステリアの違いも少なくない。最も目立つのは、オレンジのウィンカーとサイドマーカーだ。また、個人的に気に入ったのが、日本仕様にはない赤いWRXエンブレム。黒いフロントグリルとのマッチングが良く、リヤテールでは、小さなエンブレムながら、如何なるボディカラーでも、しっかりと目立つ。日本でも、同仕様のエンブレムを売ったら人気になるのでは?

カナダ仕様のWRX「SPORT」のヘッドランプとフロントグリルのWRXエンブレム。
ホイールアーチのクラッディングに埋め込まれたサイドマーカー。
リヤゲートのWRXエンブレムもレッド。控えめなトランクスポイラーを備える。リヤワイパーは装備しない。

インテリアの印象は日本のS4に近い。もちろん、ステアリング位置が逆なので、ちょっと不思議な感覚もわいてくるが、その光景に慣れれば、お馴染みのWRXだ。
ただうっかりしていると、乗車する際に助手席である右側に回りこんでしまい、慌てて運転席のある左側に向かったことも……。

カナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)のコクピット。右側フロントドアからの光景。

運転席に着座すると、ATシフトレバーがあったところには、待望の6速MTのシフトレバーが。さらにCVT車では、パーキングブレーキが電動式となるのに対して、MT車はハンドタイプを採用。そのあたりには、コストダウンというよりも、スバルらしい拘りを感じさせるところ。

6速MT+ハンドレバー式のパーキングブレーキ(サイドブレーキ)。シフトレバー周辺のスイッチ類もほとんど存在しないが、センターコンソール奥にはDC12V、AUX、USB(タイプC/3.0A、タイプA/2.4A)の端子が備わるのは同様。

やはり、優秀な電動パーキングブレーキがあっても、MT車に乗るなら、ハンドタイプが良い。今やヒルホールドだって装着されているのだから、不便を感じることはない。

エンジンルームから見たカナダ仕様のWRX「SPORT」のTY75型6速MT。

MTシステムはスバル自慢の4WDシステムに対応し、長年の歴史を持つTY75型の6速MTに、メカニカルなセンターデフ+ビスカスLSD方式4WDを組み合わせたもの。6速MTは、シフト方式にワイヤー式を採用する。
そして、4WDシステムは前後のトルク配分は50:50を基本とし、ビスカスLSDの働きにより前後のトルク配分を自動的に変化させる。

トランスミッションはスバル伝統のTY75型の6速仕様。

S4では独自のスポーツCVT「スバルパフォーマンストランスミッション」と不等&可変トルク配分電子制御AWD(VTD-AWD)の組み合わせ。VTD-AWDは、前後のトルク配分を45:55と後輪寄りとしたもので、コーナリング特性を高めたAT用のスポーツ4WDである。

WRX S4のスバルパフォーマンストランスミッション(CVT) は、スバルが独自に磨き上げた最新スポーツCVTだ。

いずれも長年、4WDに拘ってきたスバルの知見で磨き上げられたシステムだ。(TY75+フルタイムAWDが1986年のレオーネクーペRX/II、VTD-AWDが1991年のアルシオーネSVXから)

スバル最初の”フルタイム”AWDとなったレオーネクーペRX/II。
VTD-AWDを初採用したアルシオーネSVX。

エンジンもトランスミッションはグッドフィーリング

軽快な走りを見せるカナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)。

エンジンは若干ではあるがS4を上回る印象で、よりパンチがあるように感じられた。スバルに確認すると、仕様の違いはドライバーの搭乗位置(左ハンドル)と仕向地の規制の差によるものとのことだが、試乗車にはボンネット裏側にインシュレーターが装備されないこともそのひとつだろう。

ボンネットフードの裏側にはインタークーラーへの導風パネルのみで、防音のためのインシュレーターは備わらない。

2.4Lと排気量が大きいので、低回転時のトルクも太く、スムーズな発進ができる。またクラッチペダルも軽いので、誰にでも扱いやすいMT車というのが第一印象だ。

滑り止め付きのアルミ製ABCペダルとフットレスト。

トランスミッションはワイヤー方式なので、やや特徴を強調すると、多少ラフさはあるが、タッチの軽さが魅力的。肩の力を抜き、軽いタッチでシフトレバーを操作すると、吸い込まれるようにシフトが決まる。操作に慣れると、先代WRX STIほどのダイレクト感はないが、変速のスムーズさは特筆すべきものだ。

トランスミッションはスバル伝統のTY75型の6速仕様。ワイヤー式なので、軽快なタッチが持ち味だ。

筆者が近い仕様のスバルMT車に乗ったのは、4代目フォレスター。もちろん、出力特性などが異なるため、セッティングに違いはあるだろうが、基本構造は全く同じ。

4代目フォレスター(SJ型)

自然吸気仕様の2.0L DOHCとなるFB20型と組み合わせた6速MT仕様で、その軽快なタッチとスムーズな変速に感動したものだ。スポーツカーじゃないけど、MT車好きには”刺さる”と直感した記憶がある。

4代目フォレスターの6速MT。今やSUVでもMT車は超希少となったのが、寂しいところ。

正直、フォレスターほどの味わいはないかもと心配したが、それは杞憂に終わった。もちろん、左ハンドル車なので、MTシフトレバーの操作が右手となる違いはあり、感覚の差があったものの、それでも軽快なシフトタッチは、あの感動を思い起こさせるものがあった。

低回転域からのトルクの太さを活かし、MT車でも運転し易いカナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)。

コンフォートかつスポーティな走りをより軽快にダイレクトに

試乗コースは、市街地からワインディング、高速までを含むもの。フラットトルクなFA24型なので、早めのシフトでも好きなシーンで必要な加速が得られるし、巡航時の回転数も抑えることができる。

トルクフルなので高速道路でもMTだからといって右手が忙しくなることはない。

ワインディングでは、低めのギアで高回転まで回してみたが、S4に搭載されるスポーツCVTである「スバルパフォーマンストランスミッション」と比べ、エンジンパワーがダイレクトにタイヤに伝わっている感触が強い。何よりもドライバーの意思で、自由にパワーを引き出せる感覚に嬉しくなる。高度な疑似変速機能を持つCVTでも、アナログなMTの駆動を自在に操る感覚は敵わない。

ダイレクトなフィールはCVTにはないMTの醍醐味。

ステアリング操作も、新世代スバル車で好評の2ピニオン電動パワーステアリングにより、軽やかさだけでなく、ドライバーの操作がよりリニアに反映されるようになった。その点はS4と同様だ。

レッドステッチの本革ステアリングはS4同様。

肝心のAWDシステムだが、路面追従性は良く、より細やかな制御が可能なVTD-AWDと比較しても劣る印象はない。強いて言えば、後輪の押し出し感は弱い印象があるが、メカニカルで可変するAWDでも十分。特に試乗車はスタッドレスタイヤであったが、公道でスポーティな運転を楽しむ範囲では不満なし。滑りやすい路面やサーキットでのコーナリング時など、より厳しいシーンでなければ違いを体感するのは難しいだろう。むしろシンプルなシステムが生む駆動系の軽さが好印象だった。

18インチ×8.5Jのルミホイールに245/40R18サイズのタイヤを装着。試乗車は横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「アイスガードiG80」を装着。

サスペンションのダンパーは電子制御などのないメカニカル式となるが、乗り心地も考慮されており、一般道からワインディングまで不快な印象は皆無。STI Sportの「コンフォート」モードに近いだろう。またワインディングでのコーナリングでも俊敏な動きを見せ、フットワークも申し分ない。先にも記したが、グリップ力では不利なスタッドレスタイヤでも、ドライ路面をしっかりと捉え、気持ちよく駆け抜けてくれた。さすが頼れるスバルAWDである。

シンプルなAWDシステムだからこそ、スバルAWDの魅力がより体感できる。

今こそ”素”のMT仕様WRX登場に期待したい

限定車「WRX STI Sport#」は、初の国内仕様MTモデルであるだけでなく、バランスドエンジンに加え、STI自慢のフレキシブルパーツの3点セット、ブレンボ製ブレーキシステム、1インチアップのタイヤとアルミホイールなど、各部に盛り込まれたSTIチューニングがポイント。

WRX STI Sport♯のバランスドパーツ。加えてSTIパーツや専用チューニングなども魅力となる限定車だが……。

それも大いに魅力的だが、カナダ仕様で期待が膨らんだのは、素のWRXの復活だ。誰でも乗りやすいAWDスポーツとして、エントリーグレードのWRX「SPORT」に心惹かれてしまった。

今のスバルに、AWDエントリースポーツのWRXの復活は……いつ?

トルクフルでMTでも操りやすい2.4Lエンジン、乗り心地も良い標準サスペンション、走る楽しみのあるシンプルだけど伝統的なスバルらしいAWDシステム、そして、軽快なタッチのシフトレバーのフィールなど魅力たっぷりな素のWRX。カナダ仕様の価格は、WRX S4の「GT-H EX」に近いものだが、日本仕様となれば、もう少し価格が抑えられるのではと期待してしまう。

かつては、カナダ仕様のWRX「SPORT」(6速MT/左ハンドル)のようなWRXやターボ車があり、気軽にスバルAWDスポーツを楽しめたのだが……。

もちろん、WRXシリーズは、スバルのフラッグシップスポーツであり、その下にはFRのBRZもある。さらに近年は、より身近となる新たなAWDスポーツの姿も模索されている。しかし、4ドアセダンスポーツは、セダンならではの強みもあるし、ボディカラーを選べば日常でもオールマイティに使える。

『ジャパンモビリティショー2025』で提案された「パフォーマンスB STIコンセプト」。スバルが掲げる「既存アセットを組み合わせたスポーツモデル案」で、FA24ターボ+6速MTのハッチバックスポーツ。比較的安価でのリリースが模索されているとか。(PHOTO:井上 誠)

STI Sport#も良いのだろうけど、価格と限定数から購入できる人はひと握り。今こそ、素のWRX、そのMTの復活を願わずにはいられない。やはり、ひとりでも多くの人に、WRCを象徴とし、磨き愛されてきたスバルAWDの面白さを知って欲しい。スバルさん、何とかなりませんか?

やはり、WRXには峠が似合う。日常生活の足として使いつつ、時々、スポーツできるスバルAWD車をMTで味合わせて欲しいものだ。