大型ミニバンに匹敵する居住性能。181cmの乗員も3列目シートでくつろげる

2035年までに新車販売のすべてをBEVへとシフトする——。

レクサスが21年に掲げた目標は、パワートレインの電動化にまつわる世界のメーカーの方針転換や軌道修正が相次ぐ中でも生き続けている。もちろん先々のことは誰にもわからない。が、たとえこの目標を後退させる時がきたとしても、コーポレートであらゆるソリューションが手駒にあることが、ブランドの振る舞いを後ろ支えしていることは間違いないだろう。

その上でレクサスは、将来的にBEVが世のプレミアムの趨勢となる未来を肯定しているフシもある…というのは勝手な見立てだ。でも効率云々以前の商品力として、圧倒的に静かで滑らかなBEVを一度体験したユーザーは、生活の中で著しい不便がない限り、内燃機のクルマには戻らない。それは僕自身も日々の仕事を通じて実感する。

内燃機がなくなる未来はまったく望まないが、それを積む理由のあるクルマは徐々にふるいに掛けられていく、先々はそんな覚悟がクルマ好きにも求められる。それはレクサスのみならず、トヨタの側も当然認識しているはずだ。それでも傍らでしっかり直4やV8など新たなスポーツユニットを開発しているのだからマルチパスウェイにも程がある。

というわけで、TZはRZに次ぐレクサスのBEV専用モデルとして開発された。UXやESなどの併売モデルも含めていえば、4番目のBEVということになる。

スピンドルボディをシンプルなひと塊で構成し、建築デザインを想起させる幾何学グラフィックを採用したレクサスTZのフロントフェイス。
リヤビューは、ルーフ後端を大胆に落とし込みながらもキャビンをしっかり確保。張り出したフェンダーとバンパー平面の狭間に配置された「リヤLシグネチャーランプ」が水平基調のワイド感を演出する。Cd値0.27と空力性能も秀逸だ。
内向きと外向きのL字ランプを組み合わせた「ツインLシグネチャーランプ」が先進性と力強さを両立する。

TZのアーキテクチャーはe-TNGAと呼ばれる、GA-Kプラットフォームを土台としてBEV向けに各部をモディファイしたものだ。つまり同門のbZ4Xシリーズやハイランダー、スバルのソルテラ&トレイルシーカーなどと同じ系列となるが、RZがそうであったように、微に入り細にわたりレクサスの動的質感に向けて最適化されている。

全長5100mm、全幅1990mm、全高1705mmのホイールベースは3050mm。TZの寸法構成は内燃機モデルになぞらえれば、北米を主要市場とする3列シートミニバンのシエナにもほど近い。もちろんスライドドアの乗降性には見劣りするが、そこに床面を平らにできるBEV的なメリットが重なることで、乗り込んでしまえば最後列でもそういった大型ミニバンにまったく劣らない居住性を実現している。

特に最後列の膝周りの余裕は181cmの自分が座っても実感できるほどで、1〜2列目シート本体の新設計に伴う薄型化など空間を捻り出す合わせ技が効いていることが実感できた。当然ながら2〜3列シートはフラットに折り畳むことも出来るため、荷室としての容量も膨大で使いこなすのも大変そうだ。

全長5100mm、ホイールベース3050mmのロングボディが生む伸びやかなシルエット。低重心な新開発プラットフォームと相まって3列シートSUVとしての堂々たるスタンスを演出する。フラッシュサーフェス化されたドアハンドルなど細部まで空力に配慮している。
写真は22インチアルミホイール(写真)、22インチエアロホイール、20インチエアロホイールの3種類が用意される。
薄型化と分割構造を採用したフロントシートは、立体感と仕上がりの美しさを両立。シート表皮には植物由来原料を含む高触感バイオウルトラスエードを採用し、サステナビリティと上質な触感を高い次元でまとめ上げている。
2列目シートはオットマン付きで、レクサスのSUVとして初の装備となる。BEVならではのフラットなフロア構造を活かした低床設計により、足元の解放感も十分。ウォークインスイッチを押すだけでシートバックが前傾し、3列目へのアクセスもスムーズだ。
ホイールベース3050mmと床面フラット化の恩恵を最大限に享受する3列目シート。身長181cmの乗員が座っても膝周りに余裕を感じられるほどの居住性を確保。サードシートからでもパノラマルーフ越しの空を楽しめる開放感も見どころだ。
3列目シートを格納すると、ゴルフバッグ4セットが収まるスペースが現れる。

内装は昨年お披露目された新しいESが示した「Clean Tech × Elegance」というコンセプトに則り、水平と垂直をしっかり効かせたすっきりしたものとなっている。居住性もさておきBEVの利を活かせる静粛性に関しても、骨格レベルからのアコースティック改善とホイール周りやサービスホールなどの効果的な対処を組み合わせ、高速道路でもマイク&スピーカー等を用いることなく、ドライバーと最後列とが普通に会話できるほどの静かな空間を生み出せているという。

水平基調のインストルメントパネルは、メーターフードを廃してドライバーの広い前方視界を確保。大型センターディスプレイ、レスポンシブヒドゥンスイッチなど最新の操作系を備えながら、四国の竹材を用いたForged bambooのオーナメント加飾が温かみのあるラウンジ空間を演出する。

駆動方式は前後軸に各々モーターを搭載する4WDを採用、最高出力167kW/最大トルク268Nmのアウトプットは先出のRZの4WDと同じだ。搭載するリチウムイオンバッテリーの容量もRZと同じ76.96kWhだが、TZではそれがスタンダードレンジの「450e」となる。加えて、床面長の長さを活かして95.82kWhと大容量化されたロングレンジの「550e」は、米EPA計測値で300マイルオーバー、日本のWLTC計測値でも620kmの航続距離を実現しているという。

前後に各167kWの高出力モーターを搭載するTZの新開発プラットフォーム。フロアに大容量バッテリーをフラットに配置して、低重心と広大な室内空間を両立。前後独立の駆動力制御システム「DIRECT4」が、3列シートSUVらしからぬ動的質感を生み出す。

後席からでも、すっきりとした清涼感と熟れた滋味深さを体感

と、このTZの発表当日、レクサスの開発拠点となるトヨタテクニカルセンター下山の高速周回路を用いた同乗試乗の機会があった。前日までは完全機密ということもあって、試乗車は幾何学模様のラッピングで包まれた無愛想な開発車両だったが、乗り心地や居住性、静粛性といった特徴は体感できるという。

トヨタテクニカルセンター下山。とても1枚の写真には収まらない、広大な敷地(約160万平方m)にデザイン・開発・試作・評価などの機能が集約されている。レクサスはここに開発拠点を移してから、単なる数値追求ではなく乗員が心地よいと感じる動的質感づくりを骨格レベルから実践している。

下山を開発拠点に移してからのレクサスは、単に数値的な優劣を追うだけのエンジニアリングではなく、乗員にとって心地よい動的質感づくりを骨格レベルから実践すべく、日々研鑽を重ねている。これは短時間で強烈な負荷を加えることのできるテストコースをホームグラウンドと出来たからこそ得られた気づきといえるかもしれない。

このTZや新しいESは、そんな彼ら曰くの「味磨き」活動の成果が、最初の設計時点から反映され始めた年次のモデルということになるが、後席で体験するその乗り味はすっきりとした清涼感と熟れた滋味深さの両面が汲み取れる。特に後席優先のドライブモード(リヤコンフォートモード)では路面アタリはもっちりとふくよかなのに、上屋の動きはフラット感がしっかり表れているところは、駆動配分の制御の質が内燃機とは大きく異なるモーターならではの特性を活かしたところが大きい。加速や制動時に伴うピッチやダイブ、バウンドといったモーションが、各輪の駆動力や回生減速力を緻密にコントロールすることで適切に抑えられている。ミニバンのように身を預けて寛げるほど立派な座席を有するわけではないが、そのぶんを補える動的質感で、乗せられるクルマとしての快適性は相当なレベルにあるといっていい。

この数時間前にワールドプレミアが行なわれたTZ(左)。同乗試乗は、幾何学模様のカモフラージュラッピングに包まれた車両で行なわれた。同じタイミングで、ES(右)の同乗試乗も実施された。
TNGAプラットフォームを基盤に育まれてきたレクサスの「味磨き活動」。その集大成がTZだ。フロントエンド・リヤエンド・フロア後・フロア前の4か所すべてに知見を織り込み体幹を鍛えることで、静粛性・快適性と融合した「しっとりした、一体感ある」新しいレクサスの乗り味を実現している。

こうなるとTZはドライバー目線でどんな味わいを伝えてくれるのかが気になるが、レクサスはRZの開発でステアバイワイヤーを手の内化するなど、BEVのドライバビリティとユーザーインターフェースの繋がりについて様々な知見を蓄積している。その点においても好結果をみせてくれるだろう。TZは26年の後半に日本市場へも導入される予定だ。

車種レクサス TZ 550e(AWD)
全長5100mm
全幅1990mm
全高1705mm
ホイールベース3050mm
乗員人数7名
最小回転半径5.4m(DRS付)/5.8m(DRS無)
車両重量2630kg[プロトタイプ値]
駆動方式AWD
Fモーター最高出力167.0kW(227PS)[開発暫定値]
Fモーター最大トルク268.6Nm(27.3kgm)[開発暫定値]
Rモーター最高出力167.0kW(227PS)[開発暫定値]
Rモーター最大トルク268.6Nm(27.3kgm)[開発暫定値]
システム最高出力300kW(407.8PS)[開発暫定値]
0-100km/h加速5.4秒(プロトタイプ値)
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電力量95.82kWh(ロングレンジ)/76.96kWh(スタンダードレンジ)
一充電走行距離(WLTCモード)620km(22インチタイヤ装着[開発暫定値])
AC充電最大出力NACS:11kW/19kW TYPE2:22kW
DC急速充電(10→80%)約35分(150kW・電池温度約25度時)
サスペンション前:マクファーソンストラット式 後:マルチリンク式
タイヤサイズ255/45R22(22インチ)/255/55R20(20インチ)
荷室容量290L(3列使用時)/2017L(2・3列折りたたみ時)
Cd値0.27[開発目標値]
価格未発表