排ガス規制強化とオイルショックで停滞した高性能化
1960年代後半から1970年代初頭にかけて、多くのクルマ好きを熱狂させたツインカム(DOHC)エンジン搭載モデル。しかし、その後は段階的に強化された排ガス規制と1973年のオイルショックによって、自動車メーカーはその対応に追われて、高性能化は減速してDOHCエンジンも鳴りを潜めてしまった。
しかし、その長い高いハードルを乗り越えた1970年終盤、再び高性能・高機能化の時代が到来、高性能DOHCエンジンが再び活況を呈することになったのだ。その先陣を切ったのが、日産自動車の6代目(R30型)「スカイラインRS」とトヨタ自動車の2代目(A60型)「セリカXX 2000GT」だった

日本で最初にDOHCエンジンを実用化したのはホンダであり、最初に市場に投入されたのは、1963年8月に発売された軽トラック「T360」である。その後、同年10月には「S500」、1964年1月に「S600」、1966年1月には「S800」と、小型オープンスポーツに続々とDOHCエンジンが搭載された。


日産が初めてDOHCを採用したのは、レーシングエンジンのノウハウを生かしたS20型 直6 DOHCエンジンを搭載した1969年2月デビューの3代目(C10)スカイライン「スカイラインGT-R」である。一方のトヨタが初めてDOHCエンジンを採用したのは、ヤマハ発動機が開発した3M型 直6 DOHCを搭載した1967年5月デビューの「トヨタ2000GT」である。その後、日産とトヨタはDOHCエンジンをスポーティなモデルに展開し、1970年を迎える頃には、それまでのスポーツモデルや高級車のための特別な機構だったDOHCは、一般大衆車にも展開されるようになった。


ところが、1970年から排ガス規制が段階的に強化され、1973年には世界中を震撼させたオイルショックが発生し、自動車メーカーにとって排ガス低減と燃費低減が最優先テーマとなった。排ガス低減や燃費向上を実現する技術は、一般的には出力性能が抑えられ、またコストがかかることから1970年代はクルマの高性能化や高機能化が停滞することになったのだ。
この難局にメーカーは独自の技術で取り組み、最も厳しい“1978年(昭和53年)排ガス規制”の適合に成功して、1970代終盤には再び高性能・高機能時代が到来することになった。その代表的なモデルが、日産「スカイラインRS」、トヨタでは「セリカXX 2000GT」なのだ。
再び速いスカイラインをアピールしたスカイラインRS

「3代目(C10)ハコスカ」、「4代目(C110)ケンメリ」、「5代目(C210)ジャパン」と圧倒的な人気を獲得していたスカイラインは、1981年8月にモデルチェンジして「6代目(R30)ニューマン」となった。
6代目(R30)スカイラインは、それまでのスカイラインを特徴づけていたサーフィンラインの代りに、ウェッジシェイプのシックなスタイリングに一新。2ドアハードトップと4ドアセダンに、新たにスカイラインとしては最初で最後の5ドアファストバックが加わったことでも話題となった。
パワートレーンは、最高出力95ps/最大トルク13.5kgmの1.6L 直4 SOHC、105ps/15.0kgmの1.8L 直4 SOHC、115ps/17.0kgm(キャブ)&130ps/17.5kgm(燃料噴射EFI)の2.0L 直6 SOHCの4種エンジンと、4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式はFRである。


注目のDOHC搭載モデルは、「スカイラインGT」のDNAを受け継ぐ、同年10月に追加された「スカイラインRS」だ。RSは、モータースポーツへの参戦を前提にしたモデルで、搭載されたのは日産の伝統的な直6 DOHCではなく直4 DOHC(FJ20E型)エンジンで、RSのためにすべて最新設計された。

シリンダーヘッドはアルミ合金製で、4バルブを2本のカムで直接駆動、気筒別EFI(燃料噴射)を採用、圧縮比を9.1とするなどチューニングされた2.0L最強の直4 DOHCエンジンは、最高出力150ps/最大トルク18.5kgmを叩き出した。

車両価格は、212.1万円(セダン)/217.6万円(ハードトップ)。当時の大卒初任給は12万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約407万円/417万円に相当する。

上級スペシャリティカーのスポーツ志向セリカXX 2000GT

日本車初のスペシャリティカー「セリカ」のワンランク上の上級スペシャリティカーとして、「セリカXX(A40型)」は1978年4月にデビューした。車名の“X”は、最大のライバルである日産「フェアレディZ」の“Z”を意識したものとされている。


セリカXXは、1981年7月にモデルチェンジして2代目(A60型)へと進化した。セリカリフトバックをベースに、スタイリングはリトラクタブル式ヘッドライトを持つウェッジシェイプに変更。同じ6気筒エンジンを搭載する「ソアラ」(1981年2月発売)とは姉妹車の関係にあり、ソアラはラグジュアリーな、セリカXXはスポーティなモデルとして棲み分けされた。

パワートレーンは、最高出力170ps/最大トルク24.0kgmの2.8L 直6 DOHC、125ps/17.5kgmの2.0L 直6 SOHCの2種エンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFR。翌1982年2月には、高性能化を図って最高出力145ps/21.0kgmの2.0L 直6 SOHCターボエンジンを搭載した「2000Gターボ」が追加された。


そして、同年8月に1G-GEU型DOHCエンジンを搭載した2.0L 直6 DOHC搭載の「セリカXX 2000GT」が投入されたのだ。2000GTに搭載された1G-GEUエンジンは、ヤマハ発動機の協力を得て開発され、燃焼効率に優れたペントルーフ燃焼室に4バルブを配置し、中央には小型白金プラグ、さらに可変吸気機構(T-VIS)や最新の電子制御燃料噴射システムが採用された。

トランスミッションは、5速MTのみの組み合わせで、“5ナンバーサイズの最上で最強のダブルエックス”としてファンから熱狂的に支持された。車両価格は、234.8万円で、今なら約432万円に相当する。
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1981年から再燃したツインカムエンジン、さらにターボエンジンも加わってスポーツモデルの開発競争は、1980年代後半にはさらに熱を帯びてくることになる。1980年代、日本経済は絶好調を迎え、さらに後半には未曽有のバブル景気が訪れ、メーカーは潤沢な資金をバックに、高性能・高機能かつ豪華贅沢なモデルを開発したのだ。







