1981年に登場した輸出仕様車・スズキGSX1100Sカタナ(KATANA)


現在は中古車市場において超お宝モデルとして君臨するスズキの名車・GSX1100Sカタナ。プロトタイプのカタナがドイツのケルンモーターショーで発表された時の衝撃は凄まじく、世界各国から「市販化はいつだ?」と注目された。
輸出仕様車のGSX1100Sカタナは1981年に世界デビュー。日本刀をイメージした流れるようなシャープで完成されたデザインは、世界的デザイナーのハンス・ムート率いるターゲットデザインが担当。
最高出力111psを発揮する高性能でパワフルな空冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ1,074ccエンジンを搭載した1100Sカタナは、世界中で高い人気を獲得。ロングセラーモデルとして伝説を残した。
当時の日本は国内メーカーの自主規制により、排気量750ccを超えるバイクの発売を自粛。円安の時代、GSX1100Sカタナに乗るには、高額かつメーカー保証のない“逆輸入車”を入手するしかなかった。
日本人ユーザーに向け、スズキがGSX1100Sカタナの国内版として発売したのが、空冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ749ccエンジン(エンジンのベースはGSX750E)を搭載したGSX750S。当時の国内規制に対応するため、ハンドルはアップタイプに変更され、フロントスクリーンは装着されなかった。
規制でスクリーンなし。“耕運機ハンドル”を採用した国内仕様のGSX750S

この写真を初めて見た人は、完成された1100との違いに違和感を覚えたはず。日本刀をイメージした滑らかでシャープだったカタナのフォルムが、ややゴツくなってどうもバランスが悪い。
仮にもしも当時、アナタが1100Sカタナに惚れ込み、「国内仕様の750cc版がリリースされたら絶対に買う!」と決意していたら、「なぜ?」「これはないだろう」「マジかよ」と失意のどん底に陥るはずだ。
当時小学生だった筆者(1969年生まれ)は、GSX1100Sカタナがあまりにも斬新で美しくて完璧で衝撃的だったためか、笑ってしまうほど不自然でチグハグなGSX750Sのフォルムを見て、マジで腰が抜けそうになった。吉本新喜劇における、うどんを食べ終えた客が店主のオッサンに「ごちそうさん。お代はなんぼ?(何円?)」「きつねうどんね。420万円」と請求され、椅子から転げ落ちるかように。
筆者は子供ながらに「欧州で認められて、なぜ国内ではダメなの?」「悪法が日本のカタナであるGSX750Sを台無しにした」とも感じた。時はバイクブームを迎える直前のこと。
ハンドルは車体と一体感のある1100のローポジション型から、運輸省が定めた規制に従ったアップ型に変更。またカタナのフロントマスクを引き締めるフロントスクリーンも、これまた運輸省の規制により取っ払われた。加えてフロントカウル下の黒いアンダーフィンもなし。
カタナの元祖・GSX1100Sカタナにマッチしたローポジションのハンドルとは異なり、あまりにもミスマッチで不格好なアップハンドルは、予想通り物凄い不評で、「耕耘機ハンドル」と揶揄(やゆ)された。
すべてが完成され、世界が認めた美に対し、国内の規則を盾にお上(運輸省)がイチャモンを付けた成れの果て。「責任者でてこーい!」と人生幸朗師匠(昭和の漫才師)ならば、相方のお母ちゃんに絶叫するであろう無残とも言えるこのフォルム。当時のスズキGSX750S開発陣は、さぞかし悔しかったことだろうと筆者は想像する。
時代はカウル装着&ローポジションハンドルOKの時代に突入

あの頃の日本(運輸省)は、レーサーをイメージさせるフロントカウル(スクリーンを含む防風装備)や、前傾ポジションのローハンドルの装備は、「レーシングマシンのようで危険」「スピード違反を助長する」という大義を掲げて不認可。
しかしスズキGSX750S発売から間もなく、国内ではようやく風防装着(カウル)の装着が認可。国内初のカウル装着車(市販車)は、1982年に登場したホンダCBX400Fインテグラ。
1983年には水冷2スト2気筒247cc 45psのスズキRG250Γがリリース。フロントカウルに加え、ローハンドルも認可された同車は、1年間で約3万台を売り上げ、その後に大ブレイクするレーサーレプリカブームの火付け役となった。

豊臣秀吉時代の刀狩り。昭和時代のカタナ(KATANA)狩り

初期型のGSX750Sが登場した時、GSX1100Sカタナに憧れ、GSX750Sのダサすぎるスタイルに納得しなかったユーザーの多くが、750Sに1100Sカタナ用のスクリーンとハンドルを装着。
当時の警察当局は、これらのカスタムを不正改造とみなし、取り締りを実施。捕まったユーザーやバイク好きの間では「昭和の刀(カタナ)狩り ※注1」と揶揄された。
※注1:そもそも「刀狩り」とは1588年、豊臣秀吉が一揆の抑え込みと身分秩序の確立のため、諸国の百姓などが刀や脇差などの武器を持つことを禁じ、大名家臣に回収を命令した政策。

Q:バイクのハンドルを交換したり、スクリーンを付けたら違反になるの?
A:「構造変更(構造等変更検査)」を申請・通過すれば道路運送車両法違反には問われません。車検も通ります

保安基準に適合しない不正改造やカスタムを行うと、道路運送車両法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。違反内容により違反点数2点などの行政処分となる。
ここで本題。令和になった今、GSX750SにGSX1100Sカタナ用のローハンドル、または社外のセパレートハンドルに交換したら、不正改造とみなされるのか?
カタナを含めたビッグバイクの場合、一般的に「構造変更(構造等変更検査)を申請し、通過しているか否か」「カスタムした状態で車検を取得しているか」で変わってくる。
たとえばハンドルを交換する場合。バイクの車検をクリアするには、ハンドルの幅・高さ・取り付け位置などが定められた保安基準に適合している必要あり。バイク用ハンドルの保安基準は、純正値を目安に、
・車幅(クラッチレバー先端からブレーキレバー先端までの長さ)→プラスマイナス2cmまで
・高さ(地面からメーター上部までの長さ)→プラスマイナス4cmまで
上記の基準値内にある純正品や社外品であれば、基本的に問題なし。道路運送車両法違反には問われず、車検も通るはず。ただしハンドルの構造・取り回し・取り付け位置・素材等によっては保安基準に適合せず、不合格となる場合もあるので要注意。
「構造変更」の申請は車検時が定番。ビギナーはショップに要相談!
上記の基準値に該当しないハンドルの場合、「構造変更(構造等変更検査)」を行う必要あり。
「構造変更」はハンドル交換や外装パーツの変更による車体寸法の変更、シングルシート装着による乗車定員の変更(2名から1名)、ボアアップによる排気量の変更、車両重量の変更などなど。つまり車検証記載事項に影響するカスタムにより、車検証に記載されたバイクの車体構造から大幅な変更が生じた場合に必要な申請のこと。
具体的には変更した車両を運輸支局に持ち込み、車検と同様の構造等変更検査を受けて保安基準に適合しているかを確認してもらい、車検証の書き換えをお願いする(新しい車検証を発行してもらう)。構造変更の申請は、車検のタイミングで行なうのが定番でありベスト。
構造変更の申請には、車検証のコピー、改造自動車届出書、改造等概要説明書、改造箇所の添付書類などが必要。予算を抑えたい人や時間のある人、バイクの構造に詳しくカスタムに慣れている人等は、運輸支局に出向いて自分で行うことも可能(具体的な方法は、バイク 構造変更 方法などで要検索)。
手続きの手間や時間を省きたい人、バイクの知識に乏しい人、パーツの取り付けなどに自信のないバイクビギナー等は、パーツの購入や取り付け、各種手続までのすべてをバイクショップやパーツショップに依頼することをおすすめする。

カスタムされた中古ビッグバイク購入時の注意点
80年代のバイクブーム以降、バイクカスタムカルチャーの拡大や発展で、一般公道でも安全・適切に使えるマフラー、ハンドル、サスペンション、ドレスアップパーツ等々が各社から豊富にリリースされた。
またバイク=暴走族という悪いイメージや、バイクカスタムへの偏見も薄れ、“カタナ狩り”が行われていた頃に比べて「構造変更」のハードルも随分と下がった。
中古車検索サイト「グーバイク」でスズキGSX750Sの初期型をリサーチしてみると、ほとんどが1100Sカタナ風のローポジションハンドルとフロントスクリーンでカスタマイズ。
一方、純正の耕運機ハンドルを装備したノーマル車のタマ数は極めて少ないのが特徴。ノーマル車はカスタム車よりも希少価値が増してプレミアが付き、もしも同程度の場合、カスタム車を上回る価格で取り引きされている。
昨今では「耕運機ハンドルはポジションがラク」「運転しやすい」という理由から純正ハンドルに戻す。またGSX1100SカタナにあえてGSX750S用純正、もしくは社外の耕運機ハンドルを装着するユーザーも存在する。
グーバイクに掲載されたほとんどのGSX750S改は不正改造車ではなく、「構造変更」を受けたもの。この場合、純正に戻さなくても車検は通るし、整備不良で検挙されることもない。
GSX750Sに限らずカスタム車を購入する時は、必ず事前にショップへ「純正に戻さなくても車検は通るか?」「構造変更はクリアしているか?」を確認しておくべし。
グーバイク https://www.goobike.com/
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