ハイソカー誕生の背景
1960年代、日本では世界に類を見ない高度経済成長が始まり、高速道路の整備などでモータリゼーションが加速、1970年代にオイルショックなどの影響で経済成長にブレーキはかかったものの、その後も日本経済は順調に成長を続けた。
そのような背景から、個人の所得も急増して大衆車よりもワンランク上のクルマに対する需要が急速に高まった。そして1980年代中盤には、いわゆるバブル景気が訪れた。このバブル景気を追い風に、ユーザーはスポーティかつ上級なクルマを求めるようになり、それに応える形で誕生したのが“ハイソカー”である。
ハイソカーとは、エレクトロニクス技術とゴージャスな内装を持つスポーティな上級4ドアハードトップ(HT)を指し、その代表とされるが、トヨタの「マークII 3兄弟(5代目「マークII」/3代目「チェイサー」/2代目「クレスタ」)である。一方の日産自動車は、5代目「ローレル」、7代目「スカイライン」、初代「セフィーロ」でマークII 3兄弟に対抗したのだ。
4代目マークIIとソアラが火をつけたハイソカーブーム

ハイソカーブームをけん引したのはトヨタであり、その火付け役となったのは、1980年10月に発売されたトヨタの4代目「マークII(X50/60型)」と1981年2月の初代「ソアラ」である。

4代目マークIIは、先代のダイナミックな曲線基調のスタイリングから、角型ヘッドライトを組み込んだ直線基調のスタイリッシュな4ドアHTに変貌。一方の初代ソアラは、“スーパーグランツーリスモ”を謳い、クリーンノッチバックと呼ばれたシャープなエッジを持った2ドアHTクーペのスペシャリティカーである。マークIIが高級セダンをベースにしたオーナー志向、ソアラの方がやや富裕層をターゲットにしたスペシャリティカーと特徴は異なるが、いずれも大ヒットした。


この4代目マークIIとソアラによってハイソカーブームに火が付き、バブル好景気の追い風もあってさらに人気を加速したのが、1984年8月に登場したマークII 3兄弟(5代目「マークII」/3代目「チェイサー」/2代目「クレスタ」)である。そして、日産が対抗したハイソカーが、それぞれ個性は異なる5代目「ローレル(1984年10月~)」と7代目スカイライン(1985年8月~)、初代「セフィーロ(1988年9月~)」なのだ。
ハイソカーブームをけん引したマークII 3兄弟
1984年8月、3兄弟(X70型)が一斉に5代目「マークII」、3代目「チェイサー」、2代目「クレスタ」へとモデルチェンジした。3兄弟のそれぞれの特徴を一言で表せば、マークIIは落ち着いた雰囲気の高級HT、チェイサーは高級感あふれるスポーツセダン、クレスタはスタイリッシュな高級パーソナルセダンに棲み分けられる。
5代目マークⅡ


ボディタイプは、セダンと4ドアHTだったが、人気が高かった4ドアHTは大型のヘッドランプとフォグランプを組み込んだスポーティなフロントマスクが特徴だ。
パワートレーンは、最高出力130ps/17.5kgmの2.0L 直6 SOHC、160ps/18.5kgmの直6 DOHC、さらに185ps/24.0kgmを発揮する直6 DOHC国産初のツインターボの3種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。国産初のツインターボ搭載のGTは、スポーツカー並みの性能を誇った。
1985年の平均月販台数は、なんと1.2万台を超えた。
3代目チェイサー

ボディは、基本的にはマークIIと同じだが、3代目からはセダンがなくなり、4ドアHT専用車になった。エンジン構成はマークIIと共通だが、組み合わせが異なる。2.0L 直4が主力で、直6を主力とするマークIIとは性格を異にした。
2代目クレスタ


全高の低いスタイリッシュなセダンとして人気を獲得。エンジンは、2.0L 直6 DOHCを搭載してパワーアップし、ツインターボエンジンを搭載した「GTツインターボ」も追加して、日産「スカイライン」に対抗したモデルとして人気を獲得した。
伝統のローレル、スカイライン、新型セフィーロをハイソカー化
ハイソカーが爆発的な人気となった1980年代中盤、日産は1984年10月にデビューした5代目「ローレル」、1985年8月の7代目「スカイライン(通称:セブンス)」と1988年9月の初代「セフィーロ」を、ハイソカーを意識した仕様として、マークII 3兄弟に対抗した。
5代目ローレル(C32型)

欧州風が不評だった先代に対して、米国路線の直線基調の角ばったスタイリングに変貌。明らかにマークIIを意識して、4ドアHTを主力として、インテリアのシートやトリムにワインレッドを採用してゴージャスさを強調。また、世界初の電動格納ドアミラーや自動防眩ルームミラーなど最新技術を投入して先進性をアピールした。
エンジンは、2.0L 直6 SOHCと上級グレード用の2.0L V6 DOHCターボをメインとする珍しい構成。ローレルは、“ハイオーナーカー”を謳って大人の上質な4ドアセダンとして誕生したこともあり、5代目ローレルもマークIIに較べると、やや若さに欠けるという評価だった。
7代目スカイライン(R31型)


7代目スカイライン(セブンス)は、ハイソカーブームの影響から伝統のスポーティ路線からハイソカーを意識したラグジュアリー路線へと舵を切り、4ドアHTとセダンでデビュー。エンジンは、2.0L 直6 DOHCとそのターボエンジンをメインとして多彩なエンジンラインナップが用意された。

4ドアHTは、ハイソカーブームに乗って好調に滑り出したが、一方で2ドアがないため熱狂的なスカイラインファンには不評だった
初代セフィーロ(A31型)


セフィーロは、S13型「シルビア」のセダン版のようなスタイリッシュな4ドアセダンのみだった。マークIIのような直線基調ではなく曲面を多用し、特に2分割のスリットを持つ透明グリルとフォグライトなどの補助灯を含む6灯式が斬新だった。

エンジンは、最高出力205ps/最大トルク27.0kgmを発揮する2.0L 直6 DOHCターボをメインとする。多くのメカニズムをローレルやスカイラインと共用していたので、走りの完成度は高かったが、登場がやや遅すぎた。
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マークII 3兄弟は、4年間で約115万台、月間最高4.46万台(1987年3月)という信じられない販売記録を達成した。日産のハイソカーは、伝統的にローレルは大人のイメージ、スカイラインはスポーティなイメージが強くて、ハイソカーの需要から少しズレていた。またセフィーロは登場が遅かったという点で、マークII 3兄弟には敵わなかった。トヨタのハイソカーがどれほど熱狂的に支持されていたかを示す象徴的な結果と言える。






