東京都町田市を拠点とするサブアームは、高い技術力と斬新なアイデアを生かしたカスタムマシンを次々に送り出している。旧車から大排気量車までさまざまなジャンルをこなすが、得意としているのは小排気量車だ。特にモトコンポのレストアとカスタムでは、マニアの間でも広く知られている。そんなサブアームで進行中のカスタムプロジェクトを紹介することにしよう。
目指したのはDr.スランプに登場したバイク!? 仔猿ベースの極小モトコンポ
サブアームではこれまで様々なモトコンポのカスタムマシンを製作してきた。
「モトコンポは、唯一無二の存在であることが魅力です。ホンダしか作らなかったし、他のメーカーは追従してこなかった。そんなオリジナリティが好きなんです」(サブアーム代表・小林さん)
そんなサブアームが現在手掛けているのが、仔猿をベースにモトコンポの外装をまとわせたカスタムマシンだ。仔猿は、CKデザインが開発・販売している、公道走行可能な量産バイクとして世界最小のモデルである。代表の佐々木さんは、元本田技術研究所でワークスマシンや量産車の車体設計を手掛けてきた人物。その技術と経験を生かした仔猿は、単に小さいだけでなく、高い完成度を誇る。実はサブアーム代表の小林さんは、以前からモトコンポの外装をまとった仔猿を作ってみたいと考えていた。
「小さいもの(仔猿)と小さいもの(モトコンポ)を組み合わせたバイクを、以前から作ってみたいと思っていました」
ある日、仔猿の中古車を手に入れたことをきっかけに、「仔猿モトコンポ」の製作が始まった。車体の周囲にサブフレームを取り付け、そこにモトコンポの外装を装着するのだが、小さいことで知られるモトコンポよりも、仔猿はさらに小さい。モトコンポのデザインを崩さずに仔猿サイズへ縮小するため、外装を何度も調整しながら切り貼りしなければならなかった。
折りたたみ式のハンドルとシートは、モトコンポから移植。ステムやハンドル周りは共通する寸法が多く、小加工は必要だったものの、ほぼボルトオンで装着できた。ただし、それは単に装着できるというだけのこと。ライディングポジションを整え、きちんと折りたためるようにするためには、さらに加工が必要だった。パンタグラフ式にせり上がるシートの折りたたみ機構は一度分解し、仔猿の車幅に合わせて作り直すことになった。
こうして「仔猿モトコンポ」の製作を進めているときに目にしたのが、鳥山明の漫画『Dr.スランプ』に描かれたモトコンポだった。漫画でデフォルメされたモトコンポは、製作中の「仔猿モトコンポ」にそっくりだったのである。鳥山明作品のファンだった小林さんは、このイラストにもっと近づけていこうと考えた。
「漫画のイラストを見て、ウインカーの位置やハンドルの位置をずらしたりしました。そうしたら、結局イラストと同じようにしないとハンドルの折りたたみができいことがわかりました。切ったり貼ったりするところも、結局漫画と一緒になりました。イラストの完成度が高すぎますよね(笑)。鳥山先生は単にイラストを描いただけじゃなくて、脳内でモトコンポのカスタムバイクを作っていたのかもしれません。そんなことを考えながら作業するのは楽しかったですね」
こうして形になった試作車は、CKデザインの佐々木さんに試乗してもらう機会もあった。
「共通の知り合いが、このバイクを佐々木さんのところに持っていってくれました。喜んでくれていたようです」
現在、「仔猿モトコンポ」はツギハギの外装をまとっているが、すでにモデリングしたデータをもとに、3Dプリントを手掛ける会社で外装パーツの製作を開始している。新しい外装パーツが完成し、現在のマシンに装着できることが確認できたら、仔猿用の外装キットとして販売する予定だ。
「3Dプリンターで製作する場合は、材料もいろいろと選べるので、蓄光して光る外装もおもしろいかなと思っています」
予想外に乗りやすい
仔猿モトコンポは、基本的に仔猿の車体とエンジンに手を入れていない。変わっているのは、外装とライディングポジションだけである。そのため、走った感じも仔猿と変わらないだろうと思っていたのだが、またがった瞬間、ずいぶん印象が違うことに気づいた。ポジションがゆったりとしているのだ。シート位置は後ろ、ステップ位置は前になり、ハンドルの形状も変わっている。モトコンポの外装を装着し、折りたたみ機構に合わせて各部を変更したことで生まれた副産物だろう。前後の荷重配分が変わるため、ハンドリングにも影響するはずだが、仔猿の速度域であれば特に問題は感じない。むしろ操作性が良くなっているくらいである。タイトなUターンも楽にでき、ハンドルを切ったときも足に干渉しにくくなったからだ。結果として、GX31エンジンの気持ちよい高回転域の伸びを楽しむことができた。
キットが完成したら、海外のバイク好きたちにも見てもらいたいと、小林さんは言う。仔猿の小ささとモトコンポの携帯性を組み合わせたバイクから、新しい可能性が生まれるのではないかと考えているからだ。
「海外の人たちは、いろいろな楽しみ方をしますからね。最近は有人ドローンで飛行する人たちも出てきていますが、ああいう乗り物に仔猿モトコンポを積んで移動するようなことをしてくれるかもしれません」
近日、仔猿用のモトコンポ外装が完成すれば、サブアームのホームページで詳細が公開される予定だ。それを見た人たちは、超コンパクトミニバイクの世界をどのように広げていくのか、とても楽しみなのである。
ディテール解説













