モペッドのカスタムは、ヨーロッパでとてもポピュラーだ。日本ではモペットそのものがほとんど存在しないこともあって、マイナーなカテゴリーだが、今回紹介するパルディンのカスタムは、ヨーロッパのモペットカルチャーを取り入れた独自のジャンルを確立した1台だと言えるだろう。
目指したのはヨーロッパ的モペットカスタム
パルディンは1970年代にホンダが生み出した大ヒットモデル、ロードパルから派生したバイクだ。ゼンマイ式のスターターや遠心クラッチによるイージーライディングというロードパルの特徴はそのままに、細身で軽快なトライアングル構成のフレームを採用した。さらに、幅広いライディングポジションを取れるセミロングシートなどによって、新鮮なスタイリングを実現。実用一点張りだったロードパルとは異なり、おしゃれなライフスタイルを提案するバイクだった。
このバルディンをカスタムしたのは、東京都町田市に拠点を置くサブアーム。イメージしたのはヨーロッパのモペットカスタムだ。モペットは若者の乗り物として古くからヨーロッパで人気があり、モペット文化の中心地ともいえるフランスだけでなく、イタリア、ドイツ、ベルギー、オーストリアなど、各国で様々なカスタムムーブメントが起こっていた。
「ヨーロッパのモペットカスタムは、とても楽しそうだったので昔から注目していました。このパルディンではヨーロッパ調でありながらサイケデリックなイメージを取り入れ、現地のショーなどに持ち込めるレベルの仕上がりを目指しました」とサブアーム代表の小林氏は語る。
イメージを大きく変えているのはフレームだろう。タンクやカバー類がないパルディンは、フレームの存在感が非常に大きい。小林氏はアッパーフレームを一度切断し、ヘッドライトからシートまで一直線に伸びるようにして溶接。これに合わせてタンクの形状も変更し、表面をスムージングしている。
ホイールはノーマルの14インチから16インチに変更された。使われたのは、ピアジオ・チャオ用に販売されていたグリメカのキャストホイールである。パルディンに装着するため、リアホイールのセパレーター(スペーサー)をワンオフで製作。さらにエンジンハンガーを作り直して車高を上げている。つまり、この独特のカフェスタイルは、単にシートとハンドルを変えただけでなく、細かな調整を積み重ねた結果として生まれたものだ。しかも、一つひとつの加工には大変な手間がかかっているのである。
エンジンにも大幅に手が入っている。シリンダーはスペインのAIRSAL製を使用し、排気量を70ccに拡大。スタッドボルトの位置が合う他車種用キットを探し出した。チャンバーはアメリカのMLM(Motion Left Mopeds)製で、こちらも他車種用をパルディンに合わせて加工した。
さらに注目したいのが、SmartCarb(スマートキャブ)の装着だ。アメリカ製のこのキャブレターは、レクトロンやブルーマグナムなど、メータリングロッド(一般的なジェットの代わりに、スロットル開度や負圧に応じてテーパー形状のロッドが上下し、燃料の流量を精密にコントロールする)を用いたフラットスライドキャブレターだ。高性能でありながら扱いやすく、空気密度の変化に応じて燃料供給を補正するため、標高や気温が変化してもセッティングを変更する必要がないのが特徴で、標高差の大きいパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムでも実績を残している。SmartCarbは、その性能だけでなく、アルミ削り出しボディのメカニカルな外観も特徴で、エンジン周りのアクセントを生み出している。
小さいながら圧倒的な存在感を放つこのカスタムパルディンは、ヨコハマ ホットロッド・カスタムショーにも出品され、大きな話題を呼んだ。特にパルディンを知らない若い世代からの注目度が高かったという。
パルディンのカスタムに関しては、現状で完結しているのだが、サブアームでは姉妹モデルのロードパルで別のプロジェクトも検討中だ。実はサブアームには、現在部品取りとなっているロードパルが数台ある。モトコンポのカスタムやレストアの仕事が多かったことから、クラッチやクランクをモトコンポに転用できるロードパルが集まってしまったのである。小林氏は、このロードパルの車体や足周りを生かすため、モンキーなどの横型エンジンを搭載して4MINIi化することを考えているのである。
「マニアックなバイクもいいのですが、ロードパル4MINIは、もう少しライトな楽しみ方をする人たちに向けて作りたいんです。スタンダードのロードパルよりもパワーがあって、乗りやすいバイクにできるのではないかと思っています」
話を聞いていると、現在はあまり注目されていないロードパル系のカスタムも面白そうだと思えてくる。実はヨーロッパのカスタムビルダーたちの間でも、ロードパル系の注目度が少しずつ高くなってきているのだとか。
「ヨーロッパでも古いモペットが手に入りにくくなっているからかもしれません」
スクーターや電動モデルの台頭により、モペットは2000年代に入ると少しずつ姿を消していった。しかしその一方で、モペットの個性やデザインを楽しむマニアは根強く残っている。そんな状況を考えると、今後は日本のみならずヨーロッパでもサブアームのパルディンや、ロードパルのようなカスタムが少しずつ増えてくるのかもしれない。
ディテール解説














