昭和56年(1981年)、ホンダ・CITYと一緒に生まれた“小さな相棒”

ホンダ・モトコンポ(Honda Motocompo)は、昭和56年にあたる1981年、ホンダ・シティと同時に登場したトランクバイク。全長118.5cm、乾燥重量42kgという小さな車体に49ccの空冷2ストロークエンジンを搭載し、ハンドルとステップを折りたためばシティの荷室へ積載できるよう設計されていた。
燃料やオイル、バッテリー液の漏れを防ぐ機構まで用意され、クルマに積んで出かけた先で行動範囲を広げるという、当時としてはかなり新しい遊び方を提案。最高出力は2.5ps、当時価格は8万円だった。モトコンポ単体ではなく、クルマと組み合わせることで楽しさを広げるという発想は、今回のカスタムにもそのままつながっている。
オーナーの大久保さんも、もともとはクルマが中心。カーイベントの会場をぐるっと回れる小さなアシが欲しくなり、知人が所有していたモトコンポに目を付けた。相談してみると、十数年間バイク店に預けたままの車両を「好きな金額でいいよ」と譲ってもらえることになり、3万円で引き取ったという。
まずはバイク店で走る・曲がる・止まる状態まで復活。ところが、ノーマルのまま大人しく乗っていたのも束の間だった。「どうせならコイツもイジりたい」クルマ好きによくある病気が、やっぱり始まってしまったのである。

愛車のタウンエース、極端に低く仕上げたモトコンポ、イベント会場用のカートまで同じテイストで統一。単体ではなく、並べた時の世界観まで計算されている。
「とりあえず車高を下げたい」から始まった大改造

大久保さんの頭の中には、低く構えたズーマー系USカスタムの雰囲気をモトコンポで表現したらどうなるのか?というイメージがあった。ただし、本人いわくバイクの知識はほぼゼロ。そこで頼ったのが旧知の仲でもある、KN横浜の佐々木さんだ。
最初の要望は実にシンプル。「とりあえず車高を下げたい」しかし、モトコンポを低くして極太ホイールを履かせるとなれば、ただショックを短くすれば済む話ではない。佐々木さんからは「フロントを先に作ると失敗するから、まずリヤから」と助言され、車体全体の姿勢を決めるリヤ周りから製作が始まった。
そこで選ばれたのが、KN横浜に在庫していたダグラス製の8Jホイール。リヤには205/30-10サイズのタイヤを引っ張り気味に装着し、モトコンポとは思えない極太な後ろ姿を作り出した。当然、そのままではエンジンやカウルに収まらない。ホイール位置に合わせてエンジンをオフセットし、エンジンハンガーをワンオフで製作。カウルとタイヤのクリアランスもギリギリまで詰められている。
リヤの位置が決まってから、フロント周りの寸法を設定。モンキー用ホイールにスペーサーを挟んでワイド化し、前後のハブとステンレス製フロントフォークもワンオフで作られた。元のホイールはそれほど光っていなかったため、バフ屋へ出して磨き上げている。完成した姿だけを見ればスッキリまとまっているが、その裏側はほぼ現物合わせのワンオフ祭りなのだ。

ダグラス製10インチ・8Jホイールに205/30-10を引っ張り気味に装着。モトコンポとは思えない幅だが、カウルとの間隔はギリギリで美しく収まっている。
ボアアップ(56.5cc化)しても、モトコンポらしい小ささはキープ
見た目だけではなく、エンジン周りにも手が入る。外形のコンパクトさは崩さず、SP武川製ボアアップキットによって排気量を56.5ccへ拡大。キャブレターにはQR用を採用し、マフラーはKN企画製Dio用を加工して組み合わせた。
低い車体では純正位置に燃料タンクを置けないため、キタコ製オイルキャッチタンクを燃料タンクとして流用。燃料ポンプを使ってキャブレターへ送るなど、車高を下げたことで生まれた問題にもひとつずつ対処している。ディテールカットでも、ワンオフのエンジンハンガーやコンパクトに収めた補機類を確認できる。
そして、もうひとつ見逃せないのが車体の立ち姿。通常のバイクはサイドスタンドを出すと左側へ傾くが、大久保さんはその姿が好みではなかった。そこでスタンドを逆向きに取り付け、さらに“下駄”を加えることで、停車時もなるべく車体を直立させている。単に低くしただけではなく、置いた時の角度まで自分のイメージに合わせる。こうした細かなこだわりの積み重ねが、愛車のタウンエースと並べても違和感のない世界観につながっている。
外装はオーナーによる自家塗装。さらに着せ替え用として、カーボン製ボディにラメ入りキャンディブルーのグラデーションを施した別セットまで所有しているというから、カスタム病は当分治りそうにない。
イベント会場のアシとして欲しかっただけのモトコンポが、気が付けば地面スレスレ&リヤ8Jの極太仕様へ。積んで運べる小ささという原点を残しながら、クルマ好きのセンスとKN横浜の技術で、どこにもない一台へ仕上げられている。
ノーマルの姿を大切に楽しむのもよし、今回のようにトコトン自分色へ染めるのもよし。どっちが正解ということはなく、 オーナー本人がニヤニヤできれば、それで大正解。バイク趣味の懐の深さって、きっとこういうところにあるのだ。

エンジンはSP武川製キットで56.5cc化。磨き込まれたケースやブルーのボルト類も、白い外装によく映える。

ローダウンによって純正位置が使えなくなったため、キタコ製オイルキャッチタンクを燃料タンクとして流用。限られた空間へすっきり収めている。

キャブレターはQR用を採用。むき出しのファンネルが、小さなモトコンポにメカっぽい迫力を加えている。
気分に合わせて?色違いの外装を1SET用意

根っからのカーガイでもある、大久保さんは国内のカーイベントでは有名人。持っていくイベントに合わせて?モトコンポの外装を着せ替えて楽しんでいるそう。
積み込む際は仲間と「ヨッコイショ!」



イベント会場での移動でも活躍するモトコンポ。小ささと軽さを活かして、積み込む際は仲間と持ち上げて積載する。「左側持ってくれ」「クルマに当たる!あと10cm上げて」「そのまま平行キープ!」なんだか楽しそうだ。
※この記事は月刊モトチャンプ2022年5月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】