パワー良し、トルクも良し。
直6らしい吹け上がりにも寄与する現代ターボチューン!
ナンバー付きストリート仕様を基本に考え、トータルバランス重視のチューニングを手掛ける関西サービス。だとすれば、お客さんが乗る第二世代GT-Rのタービン交換仕様は当然、シングルよりも圧倒的にツインの方が多いはずだ…と思って向井さんに尋ねてみる。

「割合でいうと、ツインが8割、シングルが2割。感覚的にな。ツインを選ぶ人は乗りやすさもあるんやろうけど、実はエンジンルームをノーマルっぽく見せたいっていう理由も大きいんよ。タービン上置きのシングルは見た目が派手で、いかにもチューニングしてますみたいな雰囲気になってまうからな」。予想通り、大多数を占めているのはツインターボだった。が、「ただ…」と前置きした上で向井さんが言葉を続ける。
「その頃は排気量が2.6Lのままやったし、まだVカムもなかった。BNR32の時代、最高速やゼロヨンはツインでは限界だったんでTO4EやTO4S、その後T51とかシングルでさんざんやったけど、当時はやっぱり低中速トルクがなくてパワー志向のタービンっていう感覚やったよ。でも、今は状況が違う。まずタービン自体の性能が上がっとるし、排気量アップキットやVカムもあるんやからな」。

ちょっと意外だったのは、向井さん自身が“個人的には”、ツインターボよりシングルターボを好んでいるということ。ツインターボだとどうしてもサージングを消せず、しかもブーストの立ち上がりが良くなるほど顕著に表れる。それが、直6ならではのスムーズな回転上昇に水を差すことになる。けど、シングルターボならその心配がなく、トップエンドまで気持ち良くパワーが追従していく。向井さんがシングルターボを好む理由は、そのあたりにあるわけだ。また、チューナー目線では、パイピング取り回しの自由度が高いこともシングルターボのメリットとして挙げられた。
さらに、「今なら積極的にシングルターボを選んでもええと思う」と向井さんが自信をもって言うのには、エンジン本体側のチューニングが進んだという背景がある。そのカギを握るのが、排気量アップキットとVカムだ。


取材したデモカーのBNR34は、HKSショートブロックRB26 3.0Lステップ3にVカムシステムステッププロが組み合わされ、タービンはHKS GTⅢ-4Rをセレクト。乗りやすさと耐久性を考えて最大ブースト圧は1.3キロと抑えめに設定されるが、それでも652ps&80.9kgmというスペックを誇る。
しかし、数値だけでは判断できないのがエンジン特性やフィーリング。本当に今時のシングルターボ仕様は乗りやすいのか? それを確かめるため、いつものワインディングで試乗させてもらうことにした。
すると、ゼロ発進からしてトルク感が別モノ。ツインプレートながらミートポイントが分かりやすいHKS LAクラッチの優れた操作性もあって、あっけないほどスルリと走り出した。1500~2000rpmの完全なNA領域で、ノーマルに対して20%ほど拡大された排気量の恩恵を早くも実感する。
2000~3000rpmを維持していれば、すでにゆとりの走り。そこからアクセルペダルを踏み込むと、マナー良くジワリとトルクが立ち上がる。これなら高めのギヤを選んでいても、右足の動きだけでストレスなく前に出て行ってくれる。6速100km/h巡航からの追い越し加速だってシフトダウンは不要だ。
3000rpmを超えるとタービンの過給効果が感じられ始め、トルク感も明らかに太くなる。大きな力で押し出されるような加速感を伴いながら、4000rpmを通過するとタービンが本格的に稼働。さらに、4500rpmを境に一段とパワーを伸ばしていく。そこから、弾けるように駆け上がっていくタコメーターの針。その動きに合わせて二次曲線的にパワーを盛り上げ、7000rpmでも衰えは感じられなかった。まさに圧巻の速さだ。
が、決してドッカンターボな特性ではなく、3000~5000rpm付近の過渡領域における移行は極めてシームレス。「スムーズな吹け上がりを身上とする直6=RB26とシングルターボはマッチングがいい」という向井さんの言葉にも納得した。また、デモカーは排気量3.0Lだったが、よりチューニングコストを抑えられる2.8Lでも、同じようなエンジン特性やフィーリングを得られるとのことだ。

これまで様々なシングルターボ仕様を組み上げてきたカンサイサービス。その中から抽出してもらった代表的な仕様のパワーとトルクを比較してみる。排気量、Vカムの有無、タービン銘柄、ブースト圧の違いによるエンジン特性に注目してほしい。
①②がVカムなし、③④がVカムありのパワーグラフ。排気量を問わず、Vカムありの方が1000rpmほど手前からパワーが立ち上がるようになる。①は5000rpm前後から急激にパワーを伸ばしていく典型的な高回転志向の特性。②は排気量が2.6Lながら、吸排気共に264度カムを組むことでブースト圧の立ち上がりを改善している。③は取材車両BNR34デモカーの数値。4000rpm付近から大きくパワーを伸ばしていく。「中間トルク重視でブースト圧を抑えとるから、パワーはこんなもんやろな。ただ、タービン容量にはまだ余裕がある。ブースト1.8キロ掛ければ800psを超えてくると思うよ」と向井さん。④はVカム効果と1.8キロという高ブーストで3500rpmあたりからパワーを盛り上げる理想的なグラフを描く。

一方、こちらが同一車両で比較したトルクグラフ。向井さんいわく、「最高速とかゼロヨンとかに限定してれば話は別やったけど、当時はシングルターボなんてとてもお客さんに勧められる仕様じゃなかった。そんな状況を大きく変えてくれたんが2.8LキットとVカムやな」。その相乗効果は大きく、Vカムなしに対して、まずトルクの立ち上がりが1000~1500rpmほど低回転側に移行。しかも、3000~3500rpmで早くも40kgmのトルクを稼いでいる。6速100km/h巡航からでもアクセルひと踏みでストレスなく加速してくれるのは、このトルク特性だからこそだ。また、同じVカムありの③と④を比べて④の方が立ち上がりが早く、グラフの山も大きいのはブースト圧の違いが要因。③で最大1.8キロに設定すれば排気量が大きい分、立ち上がりも最大値も④を超えるはず。

シングルターボだから扱いにくいなんてのは、もはや遠い過去の話。十分な低中速トルクを稼ぎつつ、淀みない吹け上がりとトップエンドまでパワーを繰り出し続けるその様に感服した。もしRB26でタービン交換を考えているなら、確かにシングルターボの方が魅力的かも。試乗を終えて、そう思った。
●取材協力:カンサイサービス 奈良県奈良市小倉町1080 TEL:0743-84-0126
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