所有者も責任を負う?「運行供用者」としての義務とは

夏は、子どもの夏休みやお盆の帰省などで、友人たちとドライブや旅行に出かける機会が増える季節のため、長距離運転の交代や移動の都合で、他人に自分の車を貸す機会もあるかもしれない。
しかし、万が一車を貸した相手が交通事故を起こしてしまった際、車の所有者である自分にも責任が及ぶのかどうかは気になる点といえるだろう。
実際、自分が運転していなかった場合でも、所有者として法律上の責任を負うことになってしまうのだろうか。

自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条では、自分の車を他人に運転させて運行を支配し、その利益を得ている立場にある者を運行供用者として定義している。
ここでいう「利益」とは金銭的な対価に限らず、友人関係の維持や日常的な便宜の供与といった抽象的な恩恵も含まれるため、親しい友人関係であっても無償で貸し出した場合であっても、所有者が運転を許可している以上はこの責任から逃れることは原則としてできない。
そのため、実際にハンドルを握って運転していた本人に過失があるのはもちろんのこと、車を貸した所有者も原則として人身事故における損害賠償責任を負うことになるのだ。

つまり、「自分は助手席にも乗っていなかった」「現場にいなかったから関係ない」という主張は法的に通用せず、運転者と連帯して被害者への賠償責任を免れない場合が多いという。
さらに、物損事故の場合であっても、状況や日常的な車の管理態勢、貸与にいたった経緯によっては民法上の不法行為責任が問われるケースもあり、決して他人事では済まされないことを念頭に置く必要があるだろう。
保険が使えない事態も……高額な賠償金を背負うリスクとは

さらに注意しなければならないのが、自動車保険の適用範囲についてである。
車の所有者が加入している任意保険において、「本人限定」や「配偶者限定」「家族限定」といった運転者限定特約を付けている場合、指定外の友人が起こした事故に対しては保険金が一切支払われないことも少なくない。
また、運転者の年齢制限(21歳以上、26歳以上など)を設定している場合に、借りた友人の年齢がその条件を満たしていない場合も同様に補償の対象外となってしまうおそれがある。
万が一相手を死傷させてしまったり、他人の建物や高額な車両を破損させたりする重大な交通事故が起きてしまった場合、数千万円から数億円に上る損害賠償金が発生することになる。
もし自分の加入する任意保険が適用されなければ、自賠責保険の支払限度額を超える損害賠償金を、運転者本人だけでなく運行供用者である所有者自身も連帯して自費で負担しなければならない事態にもなりかねない。

このように、他人に車を貸すという行為には、所有者として想像以上に重いリスクがともなうのだ。
そのため、どうしても車を貸す必要がある際は所有者責任をしっかりと念頭に置き、事前に相手が自身の自動車保険で「他車運転特約」を付帯しているか、あるいはスマートフォン等で手軽に加入できる「一日自動車保険」などに加入しているかを確認しておくことが大切だ。
くわえて、車を渡す前に万が一の事故が生じた際の連絡体制や、自己負担額を含む費用負担の割合について当事者同士で事前に話し合っておくこともトラブル回避につながる。
「少しの間だけだから」「親しい友人だから」という安易な気持ちでの貸し借りが、取り返しのつかない重大な金銭トラブルや人間関係の破綻を招く要因となる。万が一の事態に備え、自分自身の生活と周囲を守るための適切な確認と事前の準備を心がけておくと安心だ。